日本の伝統芸能のひとつ、落語。

若手の人気落語家も続々と誕生し、昨今盛り上がりをみせているそう。

気にはなるけれど、何を聞けばいいの? どこへ行けばいいの? そんな不安や疑問が湧くのも正直なところ。「気軽さこそが、落語の魅力」と語る、落語専門誌の編集人 佐藤友美さんに「落語の楽しみ方」を教えてもらいました!

気軽に、そしていろんな楽しみ方があるのが落語の魅力です!

――― そもそも、落語が聞ける場所はどんなところあるのでしょう?

佐藤友美さん(以下、佐藤) 落語を含む、演芸を楽しめる場所のことを「寄席」と呼んでいます。演芸には、落語の他に講談や浪曲、寄席色物と呼ばれる紙切りや、マジック、漫才なんかも含まれるんです。東京都内に5件ある寄席は、「末廣亭」(新宿)、「浅草演芸ホール」(浅草)、「鈴本演芸場」(上野)、「池袋演芸場」(池袋)、国立演芸場(半蔵門)を指すのですが、ここではほぼ毎日、演芸を楽しむことができます。ほかに大きなホールや小さなところで開かれる落語会があります。

――― 「落語ブームの再来」という言葉を耳にしますが、実際そうなんでしょうか?

佐藤 落語家の数は江戸時代以降最多ではないかと言われているんです。増える一方、まさに右肩上がりの状態です。ブームを繰り返し、聴く人も増えているのではないでしょうか。噺家の増加と比例して、落語が聞ける場所も増えています。私が携わる落語専門誌『かわら版』では毎月の開催件数をまとめていますが、今は1,000件を優に超えていますね。単純計算で、毎日どこかしらで30件ほど会が開かれていることになります。私が入社したころは月に300〜350件くらいでしたから、ものすごい数になっていますね。常時開催される寄席や、ホールなどで行われる会に加え、落語にハマった人が噺家を呼んで落語会を開くこともあります。極端な話、座布団を一枚用意すれば、噺家さんがやってきて落語を披露してくれる。特別広いスペースも、大がかりな設備投資もいらないわけです。居酒屋やお蕎麦屋のほかにも、バーやおしゃれなカフェ、ベーカリーなどでの落語会もあるんですよ。

もはや「忙しいから落語に行けない」なんて言い訳ができないほど、様々な場所で早朝から深夜まで落語会が開催されているんです。

――― どんどん裾野が広がっているんですね。落語デビューをするなら、まずどこに行ってみるのがオススメですか?

佐藤 やはり、寄席でしょうか。ほぼ毎日やっていて空いた時間にふらりと立ち寄れますから、気合を入れて行くのではなくて「普段使い」で行けるような雰囲気があります。特に都内の寄席は、新宿や池袋などいずれも最寄り駅からも近くて行きやすいと思います。「新幹線の時間まで余裕があるから、ちょっと聴いていこうか」ということもできますしね。繁華街もすぐそばですし、寄席を楽しんだ後に「ちょっと一杯」というのもよいですね。もし贔屓の噺家さんが決まっているなら、前売りのチケットを取って大きなホールでやっている落語会に足を運ぶのもおすすめです。 

――― いつでも、そして空いた時間に立ち寄れるという気軽さは嬉しいですね

佐藤 雑誌やテレビで見て気になった噺家さんを目当てに行ってみるのも、より楽しめる方法のひとつだと思います。メディアに出ている人って、業界ではすでにかなり注目をされている人たちなんですよね。そういう人はやっぱり噺も面白いことが多いんです。あとは、自分と同い年だったり、同郷の噺家さんを見つけて、応援するというのも楽しいかもしれません。顔が好み、というのも立派な理由になると思うんです。

私の場合は、今や『笑点』の司会を務める春風亭昇太さんを好きになったことで落語にハマり、そこから数珠つなぎ式に好きな噺家さんが増えていきました。きっかけはなんでもいいと思うんです。まずはどんなものなのか、その場の雰囲気を味わってもらえたらと思います。

故・立川談志師匠のインタビューも担当。「老舗の料亭で、ぐるりと関係者に囲まれての取材。かつてないほど緊張しました」
故・立川談志師匠のインタビューも担当。「老舗の料亭で、ぐるりと関係者に囲まれての取材。かつてないほど緊張しました」

――― 実際の寄席とは、どのようなところなのでしょう?

佐藤 2,500〜3,000円ほどの「木戸銭」と呼ばれる入場料を払えば、十数名の演者の落語を楽しめます。だいたい昼前後〜夕方までの昼の部と、夕方からスタートする夜の部の二部制に分かれています。前座、二ツ目から始まって、真打(落語家の最高階級)に続きます。落語だけでなく、寄席色物を含む十数名ほどの演者さんが次から次へと登場します。そうして場を温めながら、主任(トリ)の師匠までつなげていくというのが寄席なんです。

お客さんも、最初から最後までいる人もいれば、途中から来る人、トリの噺家さんだけを聴きに来る人と様々です。寄席は入りたい時に入り、出たい時に出ていい。末廣亭と池袋演芸場は、昼夜入替なしなので(例外あり)、時間さえ許せばまる一日過ごすこともできます。飲食も可能ですし、持ち込みもOKです。「末廣亭」なら、中の売店で軽食を買うこともできますし、すぐそばの伊勢丹の地下でお弁当を買ってから行くのおすすめですね。人それぞれ、いろいろな楽しみ方ができると思いますよ。

続いては、大人のための落語の楽しみ方を佐藤さんに詳しく教えてもらいます!

【寄席ことはじめvol.2 達人に教わる!落語は大人だからこそ楽しめる伝統芸能】

PROFILE
佐藤友美(さとう・ともみ)
日本で唯一の演芸専門誌「東京かわら版」編集長。愛読していた『東京かわら版』記事を見てアルバイトとして入社。2004年より編集人を務める。
この記事の執筆者
TEXT :
Precious.jp編集部 
2017.7.4 更新
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
クレジット :
取材・文/八木由希乃
TAGS: