外出制限措置が発動中のニューヨークで暮らす会社員、山田哲矢さんに聞いた「在宅勤務中に重宝するサービス」とは?

世界中で新型コロナウイルスの感染拡大により、不安な状況が続いています。各都市の状況は異なりますが、別の場所に生きる人々の経験をシェアすることが教訓となり、今後の対策として活かせることも。

そこで本記事では、2020年3月22日(日)より「N.Y. PAUSE(不必要な外出禁止)」が発動された米国・ニューヨーク在住の会社員、山田哲矢さんに、以下の3点について伺いました。

Q1:3月中旬以降、急激に感染者が増えたN.Y.の現状

Q2:脳を刺激する!オススメYouTubeチャンネルと、在宅勤務中に重宝するサービス

Q3:打撃を受ける外食産業をサポートする取り組み

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N.Y.在住、会社員の山田哲矢さん。週末はコロンビア大学のMBAで学び、余暇にはピアノも。

日本では、緊急事態宣言前後にもかかわらず、4割を超える人が週5日外出をしているという調査結果もあり、多くの人が通勤を続けているのが現状のようです。事情はそれぞれですが、デジタル化が米国ほど進んでいないため、出社回数を減らすのは、まだまだ困難な状況と聞きます。そこで、N.Y.で在宅勤務中の山田哲矢さんが、テレワークに重宝しそうなサービスを教えてくれました。

実際に暮らす中で感じる、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の生活への影響をリアルな視点で伝えてくれる現地レポート、ぜひ今後のためにも参考にしてみてください。

■1:「マスクと手洗い」の風習があれば変えられたかも知れない、N.Y.の現状

「まずこれまでの経緯を簡単に整理しますと、

•    3月1日(日):ニューヨーク州で初の感染者が確認

•    3月7日(土):ニューヨーク州非常事態宣言

•    3月12日(木):ニューヨーク市(※)非常事態宣言

※ニューヨーク市=マンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクス、スタテンアイランド

•    3月13日(金):トランプ大統領が国家非常事態を宣言

•    3月16日(月)~:市内の公立学校の閉鎖が決まる

•    3月20日(金):22日夜から外出制限措置発動を発表

•    3月30日(月)~:公共の場での人との距離を保つこと(ソーシャルディスタンシング)を徹底していない場合、250~1,000ドルの罰金を課すことに

•    4月17日(金):外出制限措置を5月15日まで延長を発表。また17日夜から公共の場でマスクなどの着用が義務化

といった感じです。

また、ニューヨーク市における感染者数等の推移は、以下のとおりです」

「見てわかるとおり、3月中旬以降、感染者は急激に増えています

ニューヨークの観光スポットのひとつであるブロードウェーのミュージカルや演劇は、12日夜から一斉に公演を中止し、メトロポリタン美術館も13日から閉館しています。オープンしているのはスーパーやグローサリーストアなど、生活必需品を調達できる場所に限られ、レストランもテイクアウトやデリバリーを除き、閉店しています。

外出制限令の中、外出が認められるのは食材などの生活必需品の買い出し、健康維持のためのウォーキングなどのエクササイズの場合のみとなっています。

これら一連の状況下、私の会社も3月16日から在宅勤務が強制され、今日に至るまで、かれこれ一か月半、缶詰生活が続いていて、閉塞感は半端ないものがあります

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プラスチックの保護シートの内側にいるレジスタッフは、マスクと手袋を着用。

「こうした現状を踏まえ、東京がニューヨークのようにならないようにやっておくべきことですが、なんといっても不要な外出を避けること、外出せざるを得ない場合のソーシャルディスタンシング、及びマスク着用の徹底、帰宅後の手洗いうがいの徹底、ではないでしょうか」

マスクの風習があれば、感染者拡大も違った方向にいった?!

「アメリカではマスクをするという風習がないため、最近でこそ多く見かけるようになりましたが、COVID-19が騒がれ始めた3月初旬~中旬は、マスク着用していたのは専らアジア系の方でした。

私はだいぶ初期から念を入れてこれらの対策をしていたので、これをしなくて後悔した、ということはないのですが、正直、この国にマスクをする風習が根付いていたら、その後の爆発的な感染者拡大も違った方向にいったのでは、と思わざるを得ません。

また、これも個人的な見解ですが、アメリカはサンドイッチやハンバーガーなど、手を使って食べるケースが多いので、ウイルスが手についてそこから感染するケースが多いのでは、と推察しています。そのため、なるべく手を使って食べ物を食べない、食べる場合は手洗い、消毒を念入りにするといったことが肝要かと思います」

■2:まだハンコ使ってるの?電子署名サービス『Adobe Sign』が大変便利です!

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人通りのない、ニュージャージーの夜景。

「在宅勤務がしばらく続いており、外出も食材など、生活必需品の買い出しと、健康維持のためのウォーキングなどのみとなり、家の中で過ごす時間がだいぶ増えています。いわゆる引きこもりの生活ですが、考えようによっては通勤時間がなくなり、自分の好きに使える時間が増えたので、引きこもりの心強い味方である『YouTube』で、自分の興味がある分野のものを、以前にも増してみるようになりました。

最近はまっているのは日本の『Quiz Knock』のクイズチャンネルですね。内容としてはユニークな切り口でクイズを出していって、メンバーが答えるもので、私は仕事が会計財務系なのですが、仕事では使わない脳を使って考えるのは刺激的ですし、クイズを楽しみながら幅広い知識を得られるというのは一石二鳥かと思います。

出てくる方の博識かつ閃きの鋭さぶりは、目を見張るものがありますね(笑)。仕事の合間の気晴らしや就寝前などに観て、リフレッシュしています。

また、個人的な興味で、プログラミングの『Python』を学んでみるつもりで、増えた自由時間を有意義に活用したいと思っています」

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マンハッタンが一望できる、ジャージーシティーの川沿いの遊歩道。

「さらに、健康のためなるべく毎日散歩をするようにしており、私の家はマンハッタンとハドソン川を隔てたジャージーシティーにあるのですが、川沿いの遊歩道からはマンハッタンが一望でき、贅沢な景色を楽しみつつ、好きな音楽を聴きながらウォーキングをするのが日課になっています。

みんな考えることは同じようで、かなり多くの人をウォーキング中に見かけます。ウォーキングコースの定番になっていた近所にある『Liberty State Park』という州立公園は封鎖されてしまっているのが残念です。

仕事に関して意外と使えると思ったのが、Adobeが提供している『Adobe Sign』が大変重宝しています。これがあれば社内の承認などにおいて、紙にサインするかわりに電子署名ができるので、書類をプリントせずに、例えば携帯電話から書類にアクセスして、ワンクリックで承認ができてしまいます。

同時に何人もの承認も取れるので、大変効率的ですね。また、家にプリンターがない場合は、iPhone上で写真にとったものをPDF化できる機能も、かなり重宝すると思います」

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スーパーの入店は15分程度待つことも。

「私生活に関しては、私は自炊を前からしていたので、このように外食が出来ず、家にいる時間が増えた状況では、自炊に抵抗がないというのは大変助かっているように思います。

週一でマンハッタンの『ホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market、スーパーマーケット)』に買い出しに行って、そこで一週間分の食材を調達、調理しています。ホールフーズをはじめスーパーのほとんどでソーシャルディスタンシングのため、客の同時入店数を制限していて、行く時間にもよりますが、だいたい入店までに15分程度待ちます。

品ゾロえは非常事態宣言が出た3月初旬こそ、買い占めの影響でだいぶ品薄になっていたのですが、最近はほぼほぼ元の水準にまで回復してきました。トイレットペーパーは相変わらず品薄気味ですが。

また、私がよく利用するメキシカンファーストフードの『Chipotle』は自社アプリがあり、そこで注文、オンライン決済、あとはお店に行って、テイクアウトかデリバリーを選ぶだけで利用できるため、非常にスムーズで便利ですね。

(外出制限措置中の)自分へのご褒美……これも難しいのですが(笑)、ホットチョコレートが好きなので、ほぼ毎晩、一日のご褒美?として、自分でカカオパウダー、牛乳、メープルシロップを混ぜて作っています。日本ではあまり普及していないGrass Fedの牛(牧草牛)の牛乳が、コクが深くて好きです」

■3:ギフトカード販売や、オンライン化など。サポートし合う外食産業

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毎日午後7時には、「CLAP FOR NYC」がムーブメントに。

「毎日午後7時に、COVID-19と最前線で向き合っている医療従事者、公共交通機関従事者などのいわゆるエッセンシャルワーカーの方へ向け、拍手や歓声を送る『CLAP FOR NYC』がムーブメントになっています。

その時間帯に外をウォーキング中、急にマンションの住民たちがベランダに出て拍手喝采をし始めたので、はじめは何事かわからなかったのですが、調べてみたところ、インターナショナルPRエージェンシーのKARLA OTTOさんによってソーシャルメディア上で、自宅待機している市民らに向けて呼びかけられたもの、であることがわかりました。

また、とりわけ多くのCOVID-19患者が入院されている病院などに対して、寄付の誘いなどがよくインターネットのポップアップで現れたりします。

その他、この一連の外出制限措置でダメージを大きく受けている外食産業に対して、サポートする動きがみられます。例えば、『Help Main Street』というウェブサイトでは、様々なレストランのギフトカードを同じサイト上で販売することで、消費者にとって購入しやすくし、デリバリー等の利用を促進する取り組みをしています。

ニューヨークのレストランだけでおよそ3,000ほど、全米だと14,000ほどこのアプリに加盟しているそうです。

また、『Lunch Box』というウェブサイトでは、レストランに対してオンライン注文、デリバリーなどを容易にするために、ウェブサイトやアプリの作成、ケータリングサービスを手助けするサービスを提供しているようです。

COVID-19による人命、経済へのダメージは計り知れないですが、少しでも早く日常へと戻ることを切に祈っています」


以上、「N.Y. PAUSE(不必要な外出禁止)」の発動から4週間を過ぎたニューヨークに暮らす、会社員の山田哲矢さんのレポートでした。

N.Y.州クオモ知事の会見によると、4月25日現在、総入院者数は13日連続減少、一日の入院者数も、3月25日以降初めて1,200人台を下回り、依然として高い水準ではありますが、死者数は4月で初めて400人を下回ったとのこと。

ニューヨークでは、いよいよ第一波の長いトンネルの出口が見えたかのように見えます。

「(再開された)NYを再び想像するに当たって,我々はより良いNYを再建したい(In reimagining New York, we will build back better.)」と州知事が語っていたように、ポストコロナの世界に想いを馳せるだけでも、不安の多いいま、希望を感じることが出来ますよね。

思ったように動けず、ストレスや不安な想いがつのりますが、世界中の人が苦しい状況下で同じように過ごしていることに思いを馳せ、ぜひ今後の生活の参考にされてみてください。

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この記事の執筆者
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WRITING :
神田朝子