BMWが電気自動車ブランド「BMW i」を立ち上げてから10年。この間、コンパクトモデルの「i3」やEVスポーツとも言える「i8」がリリースされ、来るべき電動化時代に向けての地盤固めが行われてきた。そしてその第2章の幕開けを飾るブランニューモデルとして登場したのが「iX」である。

内外装の仕立てから伝わるBMWの意気込み

BMWのアイデンティティであるキドニーグリルは、iXにとってはデザインアイコン。先進運転支援システム(ADAS)用のカメラやレーダーレーザーなどが周囲に配置される。
BMWのアイデンティティであるキドニーグリルは、iXにとってはデザインアイコン。先進運転支援システム(ADAS)用のカメラやレーダーレーザーなどが周囲に配置される。
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物理スイッチが必要最小限に留められたiXの運転席周り。センターコンソールにはドライブモードセレクトやシフトセレクターなどを配置。ダッシュボード上の14.9インチのLEDディスプレイではエアコンやカーナビゲーションなどの各種の切り替え操作が可能なほか、AI音声操作システムやジェスチャーコントロールも奢られる。
物理スイッチが必要最小限に留められたiXの運転席周り。センターコンソールにはドライブモードセレクトやシフトセレクターなどを配置。ダッシュボード上の14.9インチのLEDディスプレイではエアコンやカーナビゲーションなどの各種の切り替え操作が可能なほか、AI音声操作システムやジェスチャーコントロールも奢られる。

昨年末に日本に上陸したBMWの新型電気自動車「iX」は、前後にモーターを配した電動4WDのクロスオーバーSUVとして、i8に代わる電動車のフラッグシップの重責を担うモデルだ。

そのi8やi3がオールカーボンモノコックの革新的なボディ構造を採用していたのに対し、iXは製造工程やコスト面でより現実的なアルミスペースフレームシャシーをベースとしながら、先の2モデルで培ったカーボン技術を応用。EVの普及に向けての、さらに力強い一歩を踏み出したというわけだ。

BMWの新型EVにかける意気込みは、内外装の仕立てにも現れている。全体のフォルムはSUV的ではあるものの、エッジの効いた面構成は、従来のBMW製SUVやi3/i8とも異なる未来感を演出。

通常の内燃機関車であればエンジンやラジエターにフレッシュエアを取り込むフロントグリルは完全に塞がれており、iXではデザインアイコンとしての役割を果たす。室内ではダッシュボード上に横長のLEDディスプレイが据えられており、六角形のステアリングホイールや上質な皮張りの内装トリムなどからも、これまでのBMWとはひと味もふた味も異なるモデルであることがわかるだろう。

X7に近い上質なドライブフィール

電動フロントシートは全グレードに標準装備。シートだけでなくアームレスト等にもヒーティングシステムが備わる。
電動フロントシートは全グレードに標準装備。シートだけでなくアームレスト等にもヒーティングシステムが備わる。
通常状態の荷室容量は500ℓ、40:20:40分割可倒式の後席を畳めば1750ℓまで拡大可能。床下にもサブトランクが設けられる。
通常状態の荷室容量は500ℓ、40:20:40分割可倒式の後席を畳めば1750ℓまで拡大可能。床下にもサブトランクが設けられる。

そんな印象はiXの走りにも明確に現れている。アクセルペダルに置いた足に力を込めていくと、EVならではの応答遅れのないパワーと静けさを伴いながら、がっちりと路面を捉えてスルスルっとスタート。

車重はほぼ同サイズのX5のディーゼルモデルよりも重い2.5トン超のヘビー級ながら、鈍重さを感じさせないばかりか豊富なトルクがそのフットワークに余裕さえもたらしてくれる。BMWというと3シリーズに代表されるような機敏さが売りではあるが、iXは特に街中や高速巡航などのシーンではゆったりとした動きに終始するクルーザー的要素が強く、走りや乗り心地の面では同社のフラッグシップSUVであるX7に近いキャラクターを持っている。

もっとも、そのX7が積むガソリンやディーゼルエンジンとは異なる滑らかなパワーの湧出や安定感のあるしとやかな歩みは、電動ハイパワーモーターと大容量バッテリーを搭載するEVだからこそ獲得できたもの。つまりBMWがiXで表現したかったのは、電気自動車におけるラグジュアリーではないだろうか。

しっとりとしたマイルドな走りのセッティングはもちろん、ダイヤモンドカットが施された各種スイッチ類やキルティング加工のステッチなど、ハイブランドの高級車にも通じるようなこだわりの仕立てがそこかしこに見て取れる。そんな五感に訴えかける新世代のラグジュアリーをいち早く体験したい人におすすめなのがBMW iXである。

iXは最大11kWの普通充電と最大150kWの急速充電に対応。一充電あたりの走行可能距離はWLTCモードで650kmを標榜する。
iXは最大11kWの普通充電と最大150kWの急速充電に対応。一充電あたりの走行可能距離はWLTCモードで650kmを標榜する。
写真のxDrive50のほか、マイルドな出力特性のモーターとバッテリーを備え、アダプティブステアリングやエアサスペンションなどの装備を簡略化して価格を抑えたxDrive40も用意される。
写真のxDrive50のほか、マイルドな出力特性のモーターとバッテリーを備え、アダプティブステアリングやエアサスペンションなどの装備を簡略化して価格を抑えたxDrive40も用意される。
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【BMW iX xDrive50】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,955×1,965×1,695mm
車両重量:2,530kg
駆動方式:4WD
モーター:交流同期電動機(前後)
モーター最高出力:190kW(258PS)/8,000rpm(前)、230kW(313PS)/8,000rpm(後)
モーター最大トルク:365Nm(37.2kgm)/0~5,000rpm(前)、400Nm(40.8kgm)/0~5,000rpm(後)
システム最高出力:385kW(523PS)
システム最大トルク:765Nm
車両本体価格:¥12,800,000

問い合わせ先

BMW

TEL:0120-269-437

この記事の執筆者
自動車専門誌『CAR GRAPHIC』で編集記者として取材・執筆から進行管理のデスク業務を担当したのち、ライター・エディターとして独立。専門知識を軸に読み手の知的好奇心を刺激する記事の執筆を心がける。
PHOTO :
篠原晃一