『Precious』本誌をはじめ、テレビや広告など幅広く活躍する人気スタイリストの犬走比佐乃さんに、大人の女性に必要なファッションについて教えていただく連載。

今回のテーマは、犬走さんが長年にわたり集めてきた「カメオ」のブローチ。30代の頃に初めてアンティークの一点ものを購入して以来少しずつ買い足し、気づけばかなりのコレクションに! とはいえ、実はこれまでは「眺めているだけで満足だった」という犬走さんですが、最近になってよくつけるようになったとか。

クラシカルなイメージが強いため難易度が高く感じられる「カメオ」ですが、犬走さんはどんな風に取り入れているのでしょうか? そのコレクションと共に、コーディネートの極意を公開していただきましょう。

犬走比佐乃さん
スタイリスト
(いぬばしり ひさの)『Precious』本誌をはじめとする数々の女性誌、テレビ、広告など多彩な分野で活躍。女優のスタイリングも手がけ、「マダム犬走」の愛称で多くのファンをもつ。30年以上を誇るキャリアと卓越した審美眼でセレクト&スタイリングする自身の着こなしも注目されている。

センス次第で、至高のクラシカルモダンを演出できる「カメオ」に注目!

アクセサリー_1,大人コーデ_1
現在のコレクションの一部。ボックスの外にあるのが、犬走さんのファースト「カメオ」。

Precious世代なら、母から、あるいは祖母から受け継いだカメオを持っているという方も多いのではないでしょうか。

「カメオ」とは、モチーフを立体的に表現する「浮き彫り」の技法で作られた宝石のこと。貝殻やストーンに人物像を刻んだものが一般的で、古代ローマ時代に大流行したといわれている歴史が古いジュエリーです。

犬走さんとカメオの出合いは、まだ30代の頃。

「年上のデザイナーの女性が大きめのカメオをたくさんつけているのを見て、かっこいいなと憧れました。その後たまたまどこかのデパートでアンティークのカメオを見つけて購入。もちろん高価なものなので少しずつですが、本当に気に入ったものだけ大切に集めてきました」(犬走さん)

なかには、ロンドンの蚤の市やオーストラリアなど旅先で出会ったものも。

「最近はダイヤモンドやジェムストーンを用いたジュエリーよりも、カメオをどうコーディネートするかが楽しくなっています。幸せなことに、本当に美しいハイジュエリーに仕事で触れる機会が少なくないため、それで心が満たされるのかも知れませんね(笑)。伝統的なカメオは、自然のものに細工しているため、すべてが一点もの。出合いには運命的なものを感じますし、そんなところにも心惹かれるのかもしれません」(犬走さん)

そのクラシカルな雰囲気が持ち味であり、魅力である一方、コーディネートに取り入れるのが難しそうなカメオ。犬走さんはどんな風にモダニティを加味しているのか? 実際のコーディネートから「つけこなし」のポイントを解説していただきましょう!

■1:一気にモダンなムードが加速する必殺ワザは、「複数使い」!

犬走さんにとってカメオとの原体験である「複数づけ」。これこそが、「脱・コンサバ」、「脱・クラシカル」なカメオスタイリングの最大の極意。

大人コーデ_2,アクセサリー_2
カメオをふんだんに着ける場合、ジャケットはノーカラーのものをセレクト。

「ワッペン感覚、といったら伝わりやすいでしょうか? 高価なものだから、個性的なものだから、それひとつだけで…というカメオの既成概念はもう、完全に捨てて。カメオの大きさ、数、位置など、いろいろと試しながら、洗練のベストバランスを探っていくのも楽しいですよ」(犬走さん)

■2:ホワイトのジャケットには、敢えて1個だけ存分に「映え」させる

「複数づけ」が犬走流カメオスタイリングの王道ですが、コントラストが強くなるホワイトのジャケットには、敢えて1個だけを単独主演させて、その存在感を際立たせることも。

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ミニマムなテーラードジャケットは「ジル・サンダー」。カメオをフレームとさりげなく響きあうチョーカーを胸元にあしらって。

「1個だけのときは特に、つける位置にはこだわります。私はカメオだけではなくブローチ類を基本的に左側につけていますが、こうした大ぶりなカメオは少し高めの位置にくるよう意識しています」(犬走さん)

ジャケットのデザインによっても変わってくるの「ベストポジション」。鏡を見ながら丁寧に位置を決めるというおしゃれのひと手間が、着こなしの洗練度を高めるポイントのようです。


犬走さんにとっては、いわば「偏愛アイテム」であるカメオをブローチですが、Precious世代のなかには、「持っているけれどジュエリーボックスの肥やしにしてしまっている」という人も少なくないでしょう。しかし、犬走さんのように、「複数使い」や、ミニマルなジャケットとのコーディネートなど、これまでの既成概念をいったんリセットすれば、モダンな楽しみ方が広がります!

もしも眠っているカメオがあったら、この春、着こなしのスパイスとしてトライしてみてはいかがしょうか?

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この記事の執筆者
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PHOTO :
田中麻衣(小学館)
WRITING :
岡村佳代
EDIT :
谷 花生(Precious.jp)