大地から湧く名湯で疲労を回復し、心尽くしの料理に舌鼓を打つ…。温泉旅行といえば、その時期にしか味わえない季節ならではごちそうもお楽しみです。そこで、温泉ジャーナリストの植竹深雪さんに、春の味覚を満喫できる温泉宿をピックアップしてもらいました。

今回ご紹介するのは、長野県上田市・鹿教湯(かけゆ)温泉にある「三水館」です。

植竹深雪さん
温泉ジャーナリスト
(うえたけ みゆき)全国各地の3000スポット以上を巡っている温泉愛好家。フリーアナウンサー、温泉ジャーナリストとして、テレビ番組をはじめ、さまざまなメディアで活躍中。著書に『からだがよろこぶ! ぬる湯温泉ナビ』(辰巳出版)がある。
公式サイト

知る人ぞ知る絶品!山菜尽くしの「草鍋」で春の恵みをいただく

三水館の外観
信州の秘湯・鹿教湯温泉にある料理自慢の宿「三水館」。

四方を里山に囲まれた日本の原風景に溶け込むように佇む「三水館」は、総部屋数7室ばかりの閑静な宿。古民家を移築してリフォームした建物の館内は、木工作家の井崎正治氏の家具やアートが設えられたモダンな雰囲気です。そんな「三水館」ではどんな春の味覚を提供してくれるのか、植竹さんこう話します。

三水館のアート作品と客室の一例
館内に飾られたアート作品(左)と客室の一例(右)。

「秋はキノコ鍋、冬はネギ鍋と四季を味わう鍋料理が人気の三水館にて、春の名物は草鍋。セリ、クレソン、浅葱など旬のフレッシュな山菜を特製の出汁スープでいただきます。化学調味料不使用のスープは、山菜の香りや風味を引き立てる優しい味わい。鶏つくねからもよい出汁がでています。

山菜はほろ苦いものもあれば、特有の甘みがあるものもあり、種類によって魅力はさまざま。多彩な山菜が特製スープや鶏つくねとハーモニーを奏でる草鍋は感動の連続で、春の恵みをいただく喜びを噛み締めながら旬の味覚をじっくり堪能することができました」(植竹さん)

春の前菜と草鍋
春の前菜(左)と草鍋(右)。

「メインの草鍋以外の料理も、山菜の春巻きやウドの皮のきんぴら、白いんげんご飯など、どれもこれも丁寧に作られたものばかり。宿の料理のコンセプトは“野菜を中心とした家庭田舎料理”とご謙遜ぎみなのですが、家庭でここまで手間暇かけることはできません。それに、素朴な素材を洗練された料理に昇華させているのは、完全にプロの仕事。ここの料理を食べるために遠方からわざわざ足を運ぶリピーター客が多いのも納得です」(植竹さん)

三水館の料理の一例
一つ一つ丁寧に作られた料理は唯一無二の味わい。
グラタンと信州サーモン
グラタンや信州サーモンなども美味。

自然の中でゆるりと脱力。空間づくりにこだわった温泉で心身を癒す

三水館では内湯・露天風呂を備えた大浴場が2か所。夜20時に男女の入れ替えがあり、両方に入ることができます。

三水館の露天風呂
浴槽の中心から湯が湧き出る露天風呂。

「こちらの温泉は空間づくりが素敵。露天風呂のうち1つは円形で、中心の柱から湯が湧きでて美しい波紋を描きます。ちょっと肌寒いときなどは、この柱の近くで湯浴みするのがおすすめです。もう1つの露天風呂は四角で、竹筒から湯が注がれるスタイル。内湯も1つは石造り、もう1つは木造りとそれぞれ風情が異なります」(植竹さん)

三水館の露天風呂
すすき野原をイメージしたという露天風呂。

「泉質は、優しい浴感の単純温泉。4つの温泉はいずれもほっとする雰囲気で、肌触りの柔らかい湯に身も心も癒されました」(植竹さん)

三水館の内湯
縁は栗、浴槽は桧葉で造られた内湯(左)、十和田石で造られた内湯(右)。

「三水館の魅力を一言で表すとすれば、ハートフルなおもてなしが心に染み入る宿。つかず離れず心地よい距離感で、料理にしても温泉にしても、その環境にあるものを最大限に生かしてお客様に精一杯喜んでもらおうという心意気が感じられます」(植竹さん)

ラウンジと看板猫
ラウンジ(左)と看板猫(右)。

「ちなみに、三水館にはかわいらしい看板猫もいます。むやみやたらと近づいてくることはありませんが、猫好きの常連さんにはよくなついており、お部屋に遊びに行ってしまうほどだそう。ふとした瞬間に姿を現す気ままな猫ちゃんにもほっこりさせられます。穏やかで緩やかな時間が流れる空間にて、滋味深い料理を味わったり温泉で脱力したり…。日常の喧騒を離れてリフレッシュしたい人にもってこいの宿だと思います」(植竹さん)


以上、信州・鹿教湯温泉の「三水館」をご紹介しました。春の恵みがたっぷり詰まった草鍋を味わえるのは1年のうちで今だけ! 本当の意味で贅沢な美食を求めている人は、次の旅先候補のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。

問い合わせ先

  • 三水館
  • 住所/長野県上田市西内1866-2
    客室数/全7室
    料金/2名1室1泊 ¥19,950円(税・入湯税込)~
  • TEL:0268-44-2731

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WRITING :
中田綾美
EDIT :
谷 花生(Precious.jp)