貯金を増やすシンプルな方法は、毎月の支出を減らすこと。ただ、支出を減らそうと、さまざまな節約術を試しても、いつも長続きせず、つい無駄遣いしてしまってお金がいっこうに貯まらないという悩みはありませんか?

その原因、あなたの脳に貧乏神が住みついているせいかもしれません!

脳神経外科医の菅原道仁さんによれば、人間の脳は放っておくと浪費するようにできているとのこと。つまり、節約や貯金ができないのは、脳の特性のせいなのです。

とはいえ、世の中には収入はそれほどでもしっかり堅実に資産を築いている人だっていますよね。実は、脳のクセは上書き可能で、浪費グセのあるビンボー脳を自然とお金が増える行動をとるリッチ脳に変えることはできるのです。

一体どうすれば、後者のリッチ脳を手に入れることができるのでしょうか? 菅原さんの著書『頭の中の貧乏神を追い出す方法』を参考に、誰でも実践できる簡単な習慣をご紹介します。

脳科学で判明した「浪費グセがなくなるシンプルな習慣」7選

■1:商品を買う前に、まず値札とともに商品の写真を撮る

気になる商品はまず撮影
気になる商品はまず撮影

リアル店舗やネットショップにて、買い物する予定はなかったのに、たまたま見かけた商品がふと欲しくなって衝動買いしてしまうこととはありませんか?

ひと目惚れによる無駄遣いが多い人に実践して欲しい習慣は、何かを「欲しい!」と思ったら、まずはその商品を値札と一緒に携帯で撮影して、売り場を一旦離れること。お店で撮影できなければ、値段をメモしておきます。ネットショップであれば、スクリーンショットを撮るか、買い物カゴに入れるだけにしてペンディングにしましょう。

数分をやり過ごせたら、あと10分、あと1時間、あと半日……と延ばしていき、できれば3日ほど待って、それでも「欲しい!」という商品に限って購入するのが、リッチ脳になるための第一歩。

冒頭でもお伝えしたように、人間の脳は放っておくと浪費するようにできており、さらに、お店では商品パッケージや陳列の方法など、お客が買いたくなる工夫が至るところに施されています。なんの警戒もせずにお店を歩いたりネットショップを回遊したりしていると、脳内の貧乏神が刺激されてついつい衝動買いしがち。

そこで、「欲しい!」という一時的な感情だけで突っ走るのではなく、少し時間をおいて「今買おうとしているものは本当に自分に必要?」と理性的に自分の意志を確認すれば、ひと目惚れした商品の大半は、実は自分にとって必要じゃないことに気付くはずです。

ちなみに、「欲しい!」と思った商品の値札を撮影したり値段をメモしたりするのは大きな意味があります。この習慣を1か月ほど続けて、実際に購入しなかったものの値段を合計すると、自分がどれほど無駄遣いしそうになっていたのかその金額の大きさに愕然とする人が少なくないとのこと。

まずは、「買わずに撮影」の習慣を1か月実践してみて、その驚くべき節約効果を実感しましょう!

■2:レジに向かう前に商品について3点けなす

敢えて商品にケチをつける
敢えて商品にケチをつける

ひと目惚れによる無駄遣いを防ぐ方法はもうひとつ。レジに向かう前に、その商品について、とりあえず3点ケチをつけるように心がけましょう。

というのも、人間は「買いたい!」という気持ちになっているときには、無意識のうちに買うべき理由を探してしまうのだそうです。例えば、「デザインがすごくよかった」とか「今だけの特価で20%オフになっていた」など。これでは、写真を撮って一旦その場を離れても結局は「よくよく考えたけどやっぱり買いだよね」ということになりかねません。

買うべき理由ばかりにフォーカスしてしまう脳の暴走にストップをかけるべく、敢えて商品の粗探しをするのが衝動買いを防ぐのに効果的なのです。

ちなみに、菅原さんによれば、素敵な商品を見ると、人間の脳は快楽物質ドーパミンを分泌し、「これを手に入れれば、何かいいことがあるかも!?」とワクワクしますが、無理やりにでも商品をけなすとドーパミンが出なくなるという研究もあるとのこと。

ドーパミンが出なければ、冷静な目で商品を見ることができ、本当に自分にとって満足できる買い物ができるはず。ぜひ、単に欲しいかどうかではなく、「これを買うことで得られる満足は、本当に支払う金額と釣り合っている?」「買ったとして、長く使えるかな?」と批判的な目で商品をチェックするようにしましょう。

■3:節約に成功したら大げさに喜ぶ

節約するたびに大げさに喜ぶ
節約するたびに大げさに喜ぶ

節約といえば、我慢や禁欲を強いる辛いもの……というイメージはありませんか? 節約に対してネガティブな印象を抱いていると、なかなかその習慣を継続することはできません。

他方、お金を貯めるのが上手なリッチ脳の持ち主は、節約することに快感を覚えています。「使っていたはずのお金を使わずに済んだ=手元のお金が増えた!」として、浪費を抑えることにワクワクした喜びや楽しさを感じているのです。

この「節約って楽しい!」という感覚を脳に刻み付けるためには、どんなわずかな額であっても、節約に成功したら大げさに喜ぶのがコツとのこと。

数円の節約でも、頭の中で「○円ゲット、チャリン、チャリン、チャリーン」と楽しげな音を響かせたり、できれば、「やったー!」と声に出して拳を突き上げたりすれば、ビンボー脳がしだいにリッチ脳に上書きされていきます。

この勝利の儀式を行ううえでも、上記でご紹介した「値札とともに商品の写真を撮る」という習慣は非常に有益。欲しいものを我慢する辛さよりも、値札を見返してニヤニヤする快感のほうが上回ることでしょう。

■4:毎朝財布の中身を確認する

財布の中身を小銭までチェック
財布の中身を小銭までチェック

節約できた額だけでなく、自分の財布の中身にも関心を向けましょう。あなたは、今、自分の財布に何円入っているのか正確に答えられますか?「だいたい1万5,000円」じゃなくて「1万4,024円」という具合に1円単位までピタリと当てられたら、あなたはリッチ脳の持ち主です。

逆に、お金を貯められない人というのは、自分の財布の中身に無頓着。いくら入っているのかわからないので、1回の支払いが数百円のコーヒーやお菓子などは、「これくらい使っても大丈夫だろう」という丼勘定でどんどん買ってしまうのです。

1円単位で意識していれば、「今は1万4,024円で、この324円のカフェラテを買ったら1万3,700円になる」というように、お金の減り具合をリアルに実感できます。そうすると、お金を支払うことに対して「ちょっとやめとこうかな」とシビアにもなりますよね。

ぜひ、毎朝財布の中身を確認して、小銭まできっちり数えるように習慣付けましょう。

■5:売り上げランキングを疑ってかかる

売り上げランキングを参考にするのはNG
売り上げランキングを参考にするのはNG

お買い物をする際、売り上げランキングを参考にする人は多いはず。店頭やネットショップなどで売り上げナンバーワンやランキング第1位などの文言を見かけると、つい気になって商品を手に取ったり、商品詳細ページをチェックしたりしていませんか?

「なんだかよさそう」という気分に乗せられて、そのまま購入するのはちょっと待った!

実は、流行物に踊らされやすいのもビンボー脳のクセのひとつ。脳にはミラーニューロンといって、人の真似をしたがる神経細胞があるのだそう。このミラーニューロンの作用で、たくさんの人が買っている商品をつい欲しくなってしまうのです。

もし、売り上げランキングを見て購買意欲がむくむくわいてきたら、「またミラーニューロンのせいで無駄遣いしそうになっている」と自分を客観的に見ること。そのうえで、目の前の商品が本当に自分に必要なものかどうか、似合うものか、自分が好きなものかどうかをチェックしてみましょう。

■6:新商品をチェックしないようにする

新商品を欲しくなるのも脳の特性
新商品を欲しくなるのも脳の特性

脳の快楽物質のドーパミンですが、人間の脳は新しいものを見た瞬間にもこれが分泌されるとのこと。つまり、自分が本当に必要としているかどうかとは関係なく、新商品や新発売と聞くだけで、人はワクワク・ドキドキして、つい買いたくなってしまうそうです。

こうした人間の脳のクセを利用して、コンビニなどでは、元からある商品をちょっと変えただけで新商品や新発売として売り出すこともあります。実際、中身をよく吟味しないで「新商品ならとりあえず試してみよう」と買ってしまう人は多いのでは?

衝動買いを抑えるには、むやみに新商品をチェックしないようにしましょう。また、店頭でたまたま見かけて心を揺さぶられても、その場ではすぐ購入せずに3日ほど間を空けて、それでもやっぱり欲しいときに限り、お店を再度訪れるのが賢明です。

■7:仕事帰りや夜中にショッピングしない

仕事帰りは財布の紐が緩くなる
仕事帰りは財布の紐が緩くなる

あなたがよくショッピングする時間帯はいつでしょうか? 仕事帰りにスーパーに立ち寄ったり、深夜にネットショッピングしたりするという人は要注意! それこそ財布の紐がゆるみやすい魔の時間帯なのです。

心理学用語で自我消耗といって、人間は我慢を重ねた後は、自制が利きにくくなるとのこと。このため、仕事帰りや深夜の疲れた状態でショッピングをすると、普段は我慢できるものでもついつい買ってしまうことが多いのだそう。

とりわけ仕事帰りには空腹が重なることもあるので、その状態でスーパーやデパ地下などに寄ろうものなら、あれもこれもと衝動買いする危険性はさらに上昇! しかも食品は劣化するので、食べきれずに腐らせてしまうともったいないことこのうえありません。

買い物は休日の日中など、なるべく心身がリフレッシュした状態で行うようにしましょう。

ちょっとした心がけで浪費は抑えることができ、また、その成功体験を積み重ねれば重ねるほど節約が楽しくなり、お金が自然とたまっていくという上昇気流に乗ることができます。今回のご紹介した7つの習慣のうち、まずはひとつだけでもいいので、「これなら私にもできそう」というものをぜひ実践し、ビンボー脳をリッチ脳に上書きしていきましょう。

菅原道仁さん
脳神経外科医
(すがわら みちひと)脳疾患を専門とし、国立国際研究センター、北原国際病院副院長、北原ライフサポートクリニック院長を経て、2015年に菅原脳神経外科クリニックを開業。脳のしくみについての親しみやすくわかりやすい解説は好評で、テレビ出演も多数。著書多数。
この記事の執筆者
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WRITING :
中田綾美
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