パリにできたフランス流江戸前寿司店「ラビス(L’ABYSSE)」とは?

「現代のフランス料理を変えた」と言われるモダンフレンチの巨匠、ヤニック・アレノさん。

「アレノ・パリス・パヴィロン・ルドワイヤン」、「ル・1947・オー・シュヴァル・ブラン」という2軒のレストランでミシュラン3ツ星を保持。2軒の三つ星レストランを持つシェフは、フランスにほかにいない、まさに現代を生きるスターシェフです。

そんなヤニック・アレノさんが「フランス流の江戸前寿司店」をつくったと伺い、パリ・シャンゼリゼ通りにある三つ星「アレノ・パリス・パヴィロン・ルドワイヤン」に取材に行ってきました。

【関連記事:ミシュラン三つ星を2つも獲ったシェフ「ヤニック・アレノ」が生み出す、新しいフランス料理】

「アレノ・パリス・パヴィロン・ルドワイヤン(Pavillon Ledoyen Alleno Paris)」は、フランスで最も古いレストランのひとつです。シャンゼリゼの公園の中に位置しており、建物はパリ市の所有物。ヤニック・アレノさんは、ここの営業権を持っていらっしゃいます。

話題の寿司店「ラビス(L’ABYSSE)」このレストラン内に出店したのだそう。三つ星レストランに寿司店とは、なんと大胆なのでしょう! お客様の9割はフランス人だそうです。

お店があるのはなんと、シャンゼリゼ公園の中!しかも三つ星レストランの地下!

th_PAVILLON LEDOYEN 18 (large facade) © Sebastien Veronese
th_PAVILLON LEDOYEN 18 (large facade) © Sebastien Veronese

さっそく、この斬新な寿司店「ラビス」をご紹介していきます。レストランの1階入り口を入り、右手に進んでゆくと、芸術家・川俣 正氏が手がけた、8万本の割り箸のアートが壁に。

彫刻家でアレノ氏の奥様であるローレンス・ボネルさんが手がけた内装は、店名であるラビス(フランス語で深海)をイメージされたのだそう。

フランス語で「深海」を意味する店名と、それをイメージした内装

th_LAbysse (Pavillon Ledoyen) 73 OK© Sebastien Veronese
th_LAbysse (Pavillon Ledoyen) 73 OK© Sebastien Veronese

伺ったのがお天気の良い昼間だったからでしょうか、深海というよりは、明るい海を想起させる内装に仕上がっていました。

取材当日は、アレノさんの奥様ローレンス・ボネルさん(左)が対応してくださいました。長身で、美人。スエードのパンツスーツがお似合いです
取材当日は、アレノさんの奥様ローレンス・ボネルさん(左)が対応してくださいました。長身で、美人。スエードのパンツスーツがお似合いです

奥に進むと、檜のカウンターの奥で、ハンサムな岡崎泰也シェフが笑顔で迎えてくれました。

アレノさんが日本を訪れた際にその腕を買われ、「パリに来ないか」と誘われた翌日には「行きます」と答えていたという岡崎さん。

ヤニックさんと岡崎さん。Abysse_1Etoile_Paysage © Nicolas Lobbestael
ヤニックさんと岡崎さん。Abysse_1Etoile_Paysage © Nicolas Lobbestael

チャンスを掴む、その決断の速さ! そして2018年夏の開店から半年で、ミシュラン一つ星を獲得するという、スピード快挙を成し遂げたのも素晴らしい。ここから、料理をご紹介していきます。

■赤ピーマンとビーツのせのプディング

ABYSSE_CarteAutomneHiver © Nicolas Lobbestael
ABYSSE_CarteAutomneHiver © Nicolas Lobbestael

まず、とうもろこしのプディングのようなものの上に、ミリンに3週間つけた赤ピーマンと赤ビーツののったものをいただきました。

以前、アレノ流フレンチの代表的な食感である、スムージーさとコリコリ感のコントラストが、ここでも感じることができました。

こちらで提供されるお料理は、岡崎シェフやほかのスーシェフたちが提案したものを、アレノさん自身が吟味して、自分の意見を加えたうえで試食し、ゴーサインを出した物だけ。「普通の江戸前寿司では、わざわざここで出す意味がないですよね」と岡崎シェフ。

■ムール貝の白菜ロール

ムール貝の白菜ロール
ムール貝の白菜ロール

こちらはムール貝の白菜ロールに海苔を巻いた一品。ムール貝のプリッとした食感と固めに茹でた白菜のシャキシャキっとした食感と海苔の風味が絶妙でした。

■アーティーチョーク豆腐、カワカマスの卵のせ

Tofu d'artichaut et oeufs de brochets fumés © Nicolas Lobbestael
Tofu d'artichaut et oeufs de brochets fumés © Nicolas Lobbestael

そしてアーティーチョークのお豆腐の上に、カワカマスの卵をのせたもの。生まれて初めて食したと言ってもいい、興味深い組み合わせでした。

■牡蠣の寿司飯クリームに日本酒のジュレ

Belon et creme de syari, gelee au sake © Nicolas Lobbestael
Belon et creme de syari, gelee au sake © Nicolas Lobbestael

お次は牡蠣の寿司飯クリームに日本酒のジュレ。牡蠣もクリーミィでコクがあって、とてもおいしい。牡蠣は日本産のものに比べるとクリーミーで濃厚ですが、ひとつだけだったので、じっくり味わっていただきます。

■メキシコ産大トロ、マグロトリュフ、キャビアの軍艦巻き、生肉タルタルの軍艦巻き

そしてそれからお刺身、お寿司へと、ササニシキに赤酢2種類と白酢1種類を混ぜたシャリのおいしいこと、おいしいこと。とても軽くてヘルシーで、オーガニックで、ストイック。お魚はすべてフランス産で、大トロだけはメキシコ産でしたが、日本の魚に劣らない鮮度とお味でした。

左上より時計回りに、メキシコ産大トロ、マグロトリュフ、キャビアの軍艦巻き、生肉タルタルの軍艦巻き
左上より時計回りに、メキシコ産大トロ、マグロトリュフ、キャビアの軍艦巻き、生肉タルタルの軍艦巻き

マグロの上に、てんこ盛りのトリュフの握り(写真右上)には驚きました。マグロの味を消し去る勢いのトリュフの芳香…。

そして初めてトライした、生肉のタルタルの軍艦巻き(写真左下)。肉の臭みがまったくなく、あっさりしていて言われなければ、お魚だと思ったほどです。とても新鮮なお肉を使っているのでしょうね。

そしてキャビアの軍艦巻き(右下)の豪華さときたら…。目を閉じてプチプチと噛み締めつつカスピ海に想いを馳せ、冷酒も合うけれど、シャンパンかウォッカも合うなと感じました。これからは、イクラの代わりにこのキャビアの軍艦巻きをいただきたいと思ってしまいました。贅沢すぎます。

アレノさんが発明し、特許を取得している製法「エクストラクション(大量の食材から長時間かけてエッセンスを抽出したもの)」が少しずつ使われていたり、全品にフレンチのエスプリが効いている江戸前寿司は本当に目から鱗の新しい美味しさです。

■オマール海老ヴァニラ風味に胡麻雪

th_Homard à la vanille, nage prise au sésame © Nicolas Lobbestael
th_Homard à la vanille, nage prise au sésame © Nicolas Lobbestael

オマール海老のバニラ風味に胡麻雪。

冷酒のせいで毛細血管が開いてしまい鼻が効かなくなったのか、バニラの香りを感じられなかったのですが、粗めに剥ぎ取ったようなオマール海老の身が締まっていて、噛むと甘みがあって美味でした。セップ茸の赤味噌汁は、セップ茸の権威(?)の私にはちょっとセップ茸の香りが赤味噌に消されて少し残念でした。

■デザートは「液体窒素の瞬間冷凍」

そしてフレンチ江戸前の究極のデセールの時間到来! パティシエールがシソをメレンゲとポワーウィリアムズで包んだものを、目の前で液体窒素で瞬間冷凍してくれました。ここは実験室⁉️冷凍天ぷらとでも言いましょうか、チップスのようにカリカリ!

それをかじった次に、牡蠣をすするようにシソのジュレとシソの酢、セロリのエクストラクションと黒砂糖のシロップをミックスしたものを頂きました。予想外の組み合わせと未経験の食感…。

冷気が白く立ち上り、寿司カウンターが一瞬実験室のようになりました。パリパリいただくと口の中でひんやりサクサクで、極薄な冷凍シソの葉チップスとでも申しましょうか。

梨のプラリネアーモンド胡麻添え。Poire en dentelle, praliné amandes-sésame © Nicolas Lobbestael
梨のプラリネアーモンド胡麻添え。Poire en dentelle, praliné amandes-sésame © Nicolas Lobbestael

ほかにも、梨のプラリネアーモンド胡麻添え(上写真)や、湯煎で1時間半蒸した信じられないくらいに軽いチーズケーキ、チョコレートタルトのカリカリ海苔等充実し過ぎるデザートはここならでは。

LAbysse Yannick Alleno+Yasunari Okazaki (Pavillon Ledoyen) 91 © Sebastien Veronese
LAbysse Yannick Alleno+Yasunari Okazaki (Pavillon Ledoyen) 91 © Sebastien Veronese

ほかの寿司屋ではあり得ない充実ぶりです。お寿司をいただいた後、生臭い感じがしてお口直しにデザートをいただきたいと思う私のような女性には、きっと喜んでいただけることでしょう。

岡崎シェフとシェフアレノのコラボに感動しながら、そしてお二人の気さくで温かい人柄と楽しい会話を思い出しながらラビスを後にし、小春日和のシャンゼリゼを歩き出した私。

本当に世の中にはまだまだ未知の味があるのですね。貴女もパリにいらっしゃるなら是非、このフレンチと江戸前のコラボを経験することをお勧めします!

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■大好評「ドバイマダム通信」

Precious.jpでは、大人の女性がドバイを訪れた際に参考になる情報を、現地在住の日本人マダム、de Suyrot辛島慶子さんのレポートでお送りしています。こちらのページにこれまでの記事がまとまっています。是非、ご覧ください。

この記事の執筆者
大学卒業後、ルフトハンザドイツ航空、カンタスオーストラリア航空勤務。その後フランス人と結婚し、その赴任先ニューヨーク、パリを経て在ドバイ15年。3人のティーンの母。趣味 生け花、美食、旅行、ピープルウォッチング(魅力的な人々が魅力的な事を魅力的な場所でしているのを見ること)。