2019年3月7日~10日、今年で14回目となる『アートフェア東京』が国際フォーラムで開催されました。趣向を凝らした作品を一堂に楽しめる、国内最大級のアートイベントです。

今回は「Art Life」をテーマに、歴史的な作品から現代美術まで、国内外29都市、160軒が出展。入場者数は過去最多の6万人を超え、大盛況で幕を閉じました。

多くのブースがひしめく会場で、ひときわ楽しそうな雰囲気に包まれていたのが「ギャラリーアンザイ」です。展示されていたのは、インスタグラムのフォロワー数が194万人を超え、近年、韓国のサムスン社とコラボレーションするなど、世界的に注目を集めているイギリス出身のグラフィティアーティスト、Mr. Doodleの作品。

3月7日、10日は、来日中のアーティスト自身も登場し、ライブペインティングで観客を沸かしました。

ライブペインティングをするMr. Doodle
ライブペインティングをするMr. Doodle

日本は初めてというMr. Doodle。「日本のアニメやゲームからインスピレーションを受けることも多く、今回の東京への訪問をとても楽しみにしていた」と目を輝かせます。

タイトなスケジュールでゆっくり観光することはできなかったけれど、「移動中に見る、東京の忙しそうな街中や、人が交差する感じ、たくさんの広告がある光景は、自分の作品とリンクしているところがあり、見ているだけでもとても楽しかった」と笑顔で語ってくれました。

アートフェア東京が終わった後は、休むことなく渋谷でのイベント、その後はメキシコへ…。そんな大忙しのMr. Doodleの、アートへ込めた思いに迫ります。

陶器でも、家具でも、壁一面でも!空間があれば、そこがキャンバス

今回の『アートフェア東京』で出品された作品は一点15万~280万円で、即完売。
今回の『アートフェア東京』で出品された作品は一点15万~280万円で、即完売。

「Doodle」とは、「落書き」のこと。自らをMr.Doodleと名乗る彼の「落書き」スタイルは、独自のペンを使った太い線で、ひとつひとつチャーミングな表情を持つキャラクターやシンボルを、ひたすら描き続けます。キャンバスになるものは、陶器から部屋の壁一面まで!

それらの空白を埋め尽くすパズルのような緻密さはとても記憶に残り、そのポップな世界感は、老若男女問わずさまざまな人の心を惹きつけます。

幼いころから、家のあらゆるところに「落書き」していたというMr.Doodle。初めて両親の寝室を「落書き」をしたときには、ひどく怒られたと笑います。「そのころは、もっと大人っぽいスタイルを好んでいたけど、だれが見ても『わかりやすく』共感できるように」という想いから、今のスタイルになったのは15歳のときでした。

「自分の作品にステートメントはないけれど、ただひとつメッセージがあるとするなら、『楽しんでもらいたい』ということ」

自身の作品について「描き終わった後のエンドピースよりも、描く過程にも価値があると思っている」と語っていたとおり、「落書き」制作中の様子は見ていて本当に興奮します!

この日も、下書きも何もされていないキャンバスに、ノンストップで筆を動かしていました。一瞬の迷いも感じさせない生パフォーマンスに、観客からは驚嘆の声があがります。

描き始める前に、作品の全体のテーマを決めたり、イメージしたりするのか尋ねると、「何も計画は立てない。そのとき、自分が思ったことを、オーディエンスの前でつくり上げることに意味をもつ」とのこと。

まさに「Doodle Art」! では、描いている最中の頭の中は?

「目の前の作品を考えるというよりも、リラックスしながら、頭のどこかに眠っている幼いころの楽しかった思い出に入り込んだり、純粋な気持ちを思い出したりすると、世界に入っていけるんだ」。会場の雰囲気やオーディエンスの反応も作品に影響するといいます。

「ライブ感」を大事にするからこその工夫が、自分の「落書き」がプリントされた衣装を着てパフォーマンスをすること。「僕が生み出す世界の中で、僕自身が、その世界の中の一部分(キャラクター)になることで、オーディエンスによりエキサイトしてもらいたい」と、サービス精神いっぱいに語ります。

家を丸々「Doodle」⁉ 人生を「描くこと」に捧げたMr. Doodleにしかできないプロジェクト!

Mr. Doodleの作品
Mr. Doodleの作品

Mr. Doodleが、今後、一番楽しみにしていることは、「Doodle Houseをつくること」。壁一面や家具まですべて、家をまるごと「落書き」するという、母国イギリスでの大きなプロジェクトです。映像化も予定されているので、日本にいてもその愉快な姿を目にすることができるのではないでしょうか。

過去に、「Doodle Room」は経験しているというMr. Doodle。15畳ほどの部屋を「落書き」で埋め尽くすのには3~4日かかったとか。「描くことが好きなので、楽しくやっていたよ」

作品はスケッチブックや携帯のアプリを使って、バスや飛行機の中で創作します。「僕には、描くか、まったく描かないかの選択しかない。中途半端ではなく、いつも100パーセントの力で。それらを創作するときも同じ気持ち。描くと決めたので、人生のすべてをこれに捧げています」

2019年8月14日~18日には、東京のヒルサイドフォーラムでの個展が開催決定! こちらでも作品を購入できます。その後、9月6日~9日には、京都のSHIMADAI GALLERY KYOTO、12月6~21日には、香港のサザビーズ香港ギャラリーへと巡回。「まだ深くお話をすることはできませんが、絶対楽しいものになるでしょう」と、意気込むMr. Doodle。今後も眼が離せません!

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この記事の執筆者
美しいものこそ贅沢。新しい時代のラグジュアリー・ファッションマガジン『Precious』の編集部アカウントです。雑誌制作の過程で見つけた美しいもの、楽しいことをご紹介します。
EDIT&WRITING :
樋口 澪(HATSU)
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