ニューヨークの芸術の殿堂とも言うべきリンカーンセンターの広大な敷地の真ん中に位置するのが『メトロポリタン歌劇場』(通称、MET=メト)。『METライブビューイング』とは、METの舞台で上演される世界最高峰のオペラを最寄りの映画館の大型スクリーンで観ることができるという画期的なエンターテインメント。2006年に始まり、年を追うごとに規模が拡大、2018-19シーズンは日本をはじめ世界70カ国2,200か所以上で実施されている。

5.1chサラウンドの音響と、10台以上のカメラを駆使したダイナミックなライブ撮影の効果で、METの特等席にいるような気分で鑑賞できる。幕間に行われる歌手やスタッフへの舞台裏でのライブ・インタビューは、生のオペラ公演でも観られない『METライブビューイング』ならではのお楽しみ。なにより、世界最高峰のオペラを日本にいながらにしてリーズナブルな価格で観られるのが大きな魅力だ。

現在上映中の『METライブビューイング』2018-2019シーズンを締めくくるのは、20世紀フランスの俊才プーランクの『カルメル会修道女の対話』。METの新音楽監督であるヤニック・ネゼ=セガンが自ら指揮し、ベテランのカリタ・マッティラ、旬を迎えたイザベラ・レナードら粒よりの歌手陣が登場するその舞台が、日本では6月7日から13日までの1週間限定で全国公開となる。

これを記念して6月9日に東京・銀座の東劇で開催されるトークイベントに、ベストセラー「怖い絵」シリーズの作家、中野京子さんが登壇する。

衝撃的なラストが待っている、恐ろしくも美しいフランスオペラ

『カルメル会修道女の対話』 (c)Ken Howard/Metropolitan Opera
『カルメル会修道女の対話』 (c)Ken Howard/Metropolitan Opera

プーランクによる傑作オペラ『カルメル会修道女の対話』の舞台は、18世紀末、フランス革命の激動に揺れるパリ。悲劇の嵐に包まれた修道女たちの実話が元になった、1957年初演のフランスのオペラだ。

ド・ラ・フォルス侯爵家の娘ブランシュは、生まれつき神経が過敏で恐怖心が強い少女だった。俗世間では生きていけないと、父の許しを得て、コンピエーニュにあるカルメル会の修道院に入る。しかし、革命派の宗教弾圧が進むなか、修道院の解散と建物の売却が決まり、司祭も追放される。修道女たちは殉教を決意するが、怯えたブランシュは修道院から逃げ出してしまう。潜伏してひそかに信仰を守っていた修道女たちは捕らえられ、死刑の宣告を受ける。そして、聖歌を歌いながら、ひとりひとり断頭台に上る修道女たち。その時、群衆のなかからブランシュが現れる‥‥。

『カルメル会修道女の対話』 (c)Ken Howard/Metropolitan Opera
『カルメル会修道女の対話』 (c)Ken Howard/Metropolitan Opera

魂を奪われるほど衝撃的なラストは、観る者の人生を変えるとまで言われる。とても美しく、そして、とても恐ろしいオペラ。

中野京子さんの登壇は、そんな『カルメル会修道女の対話』の上映の前。『おとなのための「オペラ」入門』を手掛けるなど、オペラにも西洋史にも造詣が深い中野京子さん。今回は、本作をより深く味わえる歴史の舞台裏など、興味深いエピソードをたっぷりと語ってくれる。めったにないこの機会、『METライブビューイング』同様、見逃せない。

『カルメル会修道女の対話』トークイベント

日時:6月9日(日)14:00 イベント開始、14:30 『カルメル会修道女の対話』上映開始
場所:東劇 中央区築地4-1-1 東劇ビル3F
登壇者:中野京子(作家・ドイツ文学者)

チケット発売など詳細は公式ホームページでご確認を!

この記事の執筆者
音楽情報誌や新聞の記事・編集を手がけるプロダクションを経てフリーに。アウトドア雑誌、週刊誌、婦人雑誌、ライフスタイル誌などの記者・インタビュアー・ライター、単行本の編集サポートなどにたずさわる。近年ではレストラン取材やエンターテイメントの情報発信の記事なども担当し、ジャンルを問わないマルチなライターを実践する。
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