「ふるさと納税」制度の意味が分からない…こういう人はまだ多い

税金が控除されるだけではなく、お礼として地域の特産品までもらえる、ふるさと納税。お得感が高いので、利用している人はたくさんいると思います。総合旅行プラットフォーム「エアトリ」が行った「ふるさと納税に関する調査」によると、20代と30代でふるさと納税を行ったことがある人は4割以上に。

20代と30代はピッタリ同じ44.4%。このあたりの層は世代ギャップがなく、新しいお得な制度への関心も高いのかもしれません。
20代と30代はピッタリ同じ44.4%。このあたりの層は世代ギャップがなく、新しいお得な制度への関心も高いのかもしれません。

しかし、その割合は40代でやや減少。年代が上がるごとに減少を続け、60代になると28.4%しか利用者がいません。なぜ高齢層になるとふるさと納税を行う人が減るのでしょうか? その答えの一因となるのが、ふるさと納税をやっていない全年齢層を対象とした「やっていない理由」。結果は次の通りです。

「制度がよく分からない」に続くのは「面倒くさい」(22.4%)。その気持ちも制度が複雑に感じることで発生する気がします。
「制度がよく分からない」に続くのは「面倒くさい」(22.4%)。その気持ちも制度が複雑に感じることで発生する気がします。

一番多いのは「制度がよくわからない」(25.5%)。まずふるさと納税の制度をざっくり説明すると、以下のステップになります。

ふるさと納税のしくみ

◾️1:応援したいと思う自治体に寄付をする

◾️2:ふるさと納税先から返礼品と、寄付を証明する「受領書(寄付金受領証明書)」が送付

◾️3:確定申告のときに受領書を送付する

◾️4:所得税の還付や個人住民税の控除が受けられ、実質的な自己負担額を2,000円にすることができる(例:5万円の寄付をしたら、4万8000円が控除される)

一度理解してしまえばそれほど難しくはありませんが、確定申告をしたことがない人はお得な点にピンとこない可能性があります。そもそも収入が少ない主婦の場合は、所得税や住民税を収める必要がなく、控除がないのでメリットはゼロです。

つまり、ふるさと納税は世帯主など、納税者の名義で行うのが必須。この点が少々分かりにくい点かもしれません。

利用者にはデメリットが多い新たな規制も、反対の人はごくわずか

そんなふるさと納税ですが、2019年6月1日より制度が変わります。寄付金に対して還元率30%以上の返礼品が規制され、さらに返礼品は「地場産品」という、その自治体の特産品に限定されることになったのです。

例えば、市内に仙台牛の加工工場があるので「仙台牛の切り落とし」を返礼品にしていた埼玉県八潮市や、姉妹都市の特産品を返礼品にしていた東京都国分寺市や埼玉県新座市などは、6月以降その品の取り扱いができなくなります。

利用者にとっては大きな制度改正ですが、同調査によるとこの件について「知っている」と答えた人は81.8%。かなり高い認知率となっています。ではこの新制度について、利用者はどう考えているのでしょうか?

同調査では「賛成」「反対」「どちらでもない」のアンケート調査を実施。結果は次の通りとなりました。

「どちらでもない」人には、そもそもふるさと納税の仕組みが分からない人や制度に興味がない人もかなりいると思います。
「どちらでもない」人には、そもそもふるさと納税の仕組みが分からない人や制度に興味がない人もかなりいると思います。

一番多かったのは「どちらでもない」(65.3%)。「賛成」も29.3%と意外に多く、逆に「反対」はわずか5.4%しかいませんでした。還元率は高ければ高いほど寄付をした人にとってお得なはずで、地場産品の規制についてもこちらにはメリットはないように感じます。にもかかわらず、反対の人はほんのわずかしかいないのです。

「過剰な返礼品合戦」は自治体の努力として認めるべき?

なぜふるさと納税の規制に賛成する人が意外と多いのでしょうか? まずは「賛成」の自由意見をご紹介します。

「地元と関係ない返礼品で納税者を集めようとするのは、短期的にはインパクトがあって成果が上がるかもしれないが、長期的に過剰な競争や返礼品エスカレートで消耗するのは良くないので」(30代・女性)

「特産品がない地域には不公平な気がするが、Amazonの金券など全く地域に関係ないもので税金を集める地域もあり、制限は仕方ないのかとも思う」(40代・女性)

そもそもふるさと納税の規制が必要となった背景には、高額で豪華な返礼品を提供するためにしのぎを削る、過剰な返礼品合戦がありました。もちろん消費者にとってはうれしいことですが、これでは自治体が共倒れになる危険性もあり、何より本来の理念「ふるさとへの恩返し」から逸脱する可能性も。そういった事情を考慮する消費者は少なくないのです。

しかし、少数派ですが「反対」の人もいます。こちらの自由意見は以下の通りです。

「地方の努力を無にする。いちいちクレームをつけるなら、ふるさと納税制度そのものをやめれば良い」(60代・男性)

「返礼率を上げてでも税収を得たい地方の判断を尊重すべき、また地場産品も地域間で格差があるのだから、それだけに縛るのは地域によっては大変不利になる」(30代・女性)

確かに過剰な返礼品合戦は問題がありますが、それも地域の必死な努力。その努力を尊重する考え方も正解かもしれません。そして一番多かった「どちらでもない」ですが、自由意見はこちらです。

「規制の意味合いもよくわかるが、実際自分にとって魅力的であれば、納税先を返礼品で決めているというのが実情のため」(40代・男性)

「ふるさと納税制度自体、いまいちわからない方も多いと思います」 (40代・男性)

「どちらでもない」を選んだ人は、そもそもの制度に対する疑問や分かりにくさを指摘。この答えが全体の6割以上を占めているのです。まだまだ認知に問題があるといえそうです。

ふるさと納税の制度がスタートして今年で11年。課題があるのは事実ですが、トライ&エラーを繰り返しつつ、地域活性化に役立つ意義のある制度として今後に期待をしたいところです。

【調査概要】

調査主体:株式会社エアトリ

調査タイトル:「ふるさと納税」に関するアンケート調査

調査対象:20代~70代の男女685名

調査期間:2019年4月23日~4月26日

調査方法:インターネット調査

この記事の執筆者
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