1962年、ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港にオープンした、エーロ・サーリネンによるデザインのトランス・ワールド・エアライン(Trans World Airline)のターミナル。

ジェット機時代のグラマラスで陽気な、レトロ可愛い! を凝縮したような空間は、1994年にニューヨーク市のランドマークに指定されたものの、2001年に閉鎖。しかし、その後も2005年には国立、そしてニューヨーク市の歴史地区として登録されるなど、ニューヨーク市民に愛され続けてきました。

©︎ David Mitchell 出発の掲示板はイタリアのSolari Di Udineによるカスタムメイド
©︎ David Mitchell 出発の掲示板はイタリアのSolari Di Udineによるカスタムメイド

そのパッションが身を結び、約20年間に及ぶ日影の時代を経て、晴れて再びその姿を見せたのが、このミッドセンチュリーのアイコンです。ターミナルは修復され、その背後に翼のように、ふた手に広がるホテル棟、そしておよそ4,645平方メートルのイベントセンターが完成。

©︎ Emily Gilbert 映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン(Catch Me If You Can)』の撮影に使われるなど、レトロなムードでいっぱい
©︎ Emily Gilbert 映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン(Catch Me If You Can)』の撮影に使われるなど、レトロなムードでいっぱい

22の政府機関と170以上の企業が参加したという、巨大プロジェクト。古い建物に新たな生命を吹き込む作業には膨大な努力を要したとのことですが、そんな背景にも、この空間に対するニューヨーク市民の深い愛が感じられます。

古くて新しい! ビートルズで盛り上がったオープニングセレモニー

TWAのTシャツを着て参加する往年のファン
TWAのTシャツを着て参加する往年のファン

待望の2019年5月15日のオープンには、数千人のファンやニューヨーク州知事であるアンドリュー・マーク・クォモなどセレブリティーが多数駆けつけました。

ニューヨーク州知事のアンドリュー・クォモは左から2番目

ニューヨーク州知事のアンドリュー・クォモは左から2番目

この空間のアイコンといえるザ・サンケン・ラウンジ(The Sunken Lounge)ではリボンカットのセレモニーも。

フライトブリッジで再会を喜ぶフラッシュモブのパフォーマンス
フライトブリッジで再会を喜ぶフラッシュモブのパフォーマンス

ビートルズのヒット曲にのせて、当時の制服を来た従業員達による再会を喜ぶフラッシュモブが、会場をさらに盛り上げました。

エレガントからモードまで、バリエーション豊かな歴代の制服
エレガントからモードまで、バリエーション豊かな歴代の制服

カラフルなTWA航空の歴代の制服は、「ヴァレンティノ(Valentino)」や「ラルフ・ローレン(Ralph Lauren)」などのデザイナーが手掛けたもの。帽子やバックまで洗練されたコーデは、当時の女性達の憧れだったはずです。

写真に映える!TWAホテルのレトロ可愛いスポット4選

■1:カリスマシェフによるレストラン|パリ・カフェ

200席あるジャン・ジョルジュのパリ・カフェ
200席あるジャン・ジョルジュのパリ・カフェ

日本にも出店したカリスマシェフ、ジャン・ジョルジュによるレストランでは、オープンキッチンでの朝食、ランチ、ディナーを提供しています。

©︎ David Mitchell 世界中にレストランをもつカリスマシェフ、ジャン・ジョルジュ・ヴォンゲリヒテン
©︎ David Mitchell 世界中にレストランをもつカリスマシェフ、ジャン・ジョルジュ・ヴォンゲリヒテン

TWAターミナルの中心に位置し、著名なパリジャンの工業デザイナー、レイモンド・ローウィによる当時のデザインを活かしたインテリア。1955年のコカ・コーラのボトルや、1959年のTWAの地球がふたつ重なるロゴマーク、そして1962年の不二家のルックチョコレートのロゴとパッケージなどに代表される、彼のレトロなムードは、どこを切り取っても写真映えしそうです。

■2:チリ・ペッパー・レッドの絨毯が強烈なインパクト|ザ・サンケン・ラウンジ

©︎ David Mitchell ザ・サンケン・ラウンジではカクテルやコニー飛行機の眺めが楽しめます
©︎ David Mitchell ザ・サンケン・ラウンジではカクテルやコニー飛行機の眺めが楽しめます

JFK空港で一番のマティーニを飲むなら、ザ・サンケン・ラウンジへ。'60年代のムードを存分に堪能できる、TWAターミナルのアイコンというべきカクテル・バーです。

白と、チリ・ペッパー・レッドの2色による強烈なコントラストは、他では味わえない、グラマラスな世界を演出。旅への期待感を膨らませてくれそうな、1958年のフランク・シナトラのアルバム『カム・フライ・ウィズ・ミー(Come Fly With Me)』にインスパイアされたオリジナルカクテルも。

アフリカ、ギリシャ、英国のTWAのハイライト便で使用されていたカクテル用マドラー
アフリカ、ギリシャ、英国のTWAのハイライト便で使用されていたカクテル用マドラー

当時と同じマドラーも、目的地のアイコン達のカラフルなデザインで写真映えは確実です。

■3:滑走路を臨む、スペシャルなインフィニティプール|ザ・プール・バー

JFK空港の中でも大きな滑走路のひとつ、4L/22Rに位置するプール
JFK空港の中でも大きな滑走路のひとつ、4L/22Rに位置するプール

JFK空港の滑走路を臨む、パノラマビューが楽しめるのがザ・プール・バーです。こんなレアで気持ちの良い光景を目の当たりにしたら、インスタグラムにアカウントがなくても、思わず連写をしてしまいそうです。

通常のプールは6時間ごとの浄化が標準ですが、こちらは30分ごとという高い基準で水質に安心できるのもうれしいポイント。また、夏のプールだけでなく、冬はおよそ38度に温められ、ジャグジーとして365日楽しめます。

■4:カクテルラウンジに変身したプロペラ飛行機|コニー

メーン州からタイムズスクエアを経て、300マイルもの旅をしてJFK空港に到着したコニー
メーン州からタイムズスクエアを経て、300マイルもの旅をしてJFK空港に到着したコニー

ロッキード社による1958年製のプロペラ飛行機「コニー(コンステレーションのニックネーム)」L-1649がビンテージなカクテルやスナックが楽しめるラウンジに変身。飛行機マニアでなくとも、必見のスポットに生まれ変わりました。

スピードの悪魔と呼ばれ、当時の大陸横断の記録を破ったコニー。1950年代には、エア・フォース・ワンとしてアイゼンハワー大統領に仕えていたという歴史も。波乱に富んだ時代のレーダーも感じられそうなコックピットは、好奇心を刺激します。

ミッドセンチュリーモダンな客室は全て防音仕様
ミッドセンチュリーモダンな客室は全て防音仕様

ラグジュアリーなブランドショップから、お土産に最適な地方の特産品が入手できるお店まで…、誰もが楽しめる日本の羽田空港や成田国際空港に比べると、少々退屈だったかもしれないのがJFK空港です。しかし、TWAホテルの出現により、世界のハブ空港として、さらに発展しそうな予感も。

乗継ぎだけ、と言わず、ここに滞在するという目的のためにニューヨークを訪れる価値がありそうなうれしいオープンです。

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【参考資料】
TWAホテル(TWA Hotel)

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この記事の執筆者
TEXT :
Precious.jp編集部 
2019.7.17 更新
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
COOPERATION :
NYC & Company
WRITING :
神田朝子