28歳で起業、売り上げを伸ばし続ける優良企業の経営者・大西利佳子さんにインタビュー

毎年10万社以上の企業が新設されるも、休業、廃業、倒産を強いられる会社も少なくない、今の日本。

そんななか、「前年度比140%」の売り上げを実現している人材紹介会社があり、その経営者は女性である、という情報をキャッチしたPrecious.jp。その名も、株式会社コトラの大西利佳子さん。経済低迷が続く日本で、どのように会社経営を成功させているのでしょうか?

その経営手法について、右肩上がりの理由は?などなど、成功の秘訣を伺ってきました。

銀行員としてキャリアをスタート、大変革を通じて「人」の力をサポートする業界へ

会社の看板の前で写真に写る大西利佳子さん
株式会社コトラ 代表取締役 大西利佳子(おおにしりかこ)さん

長銀破綻から、起業するまでの道のり

Precious.jp編集部(以下同)――会社を立ち上げたきっかけを教えてください。

高校生の頃から、特に具体性はなかったのですが「会社経営がしたい」と漠然と考えていました。附属高校からの進学だったので大学受験がなく、高校生のころに、学部を選ぶ時間がたっぷりあったんです。

当時はホーキング博士のような宇宙物理学者がいいかな、でも高校物理のテストすら良い点が取れないのに無理だな…とか、司馬遼太郎になりたいな、でも人生経験が足りないな、などいろいろと考えていましたが、会社経営も楽しそうだなと。「自分の判断でリスクを取ってやっていく」ということが興味深いと思い、経営するには経済学を知ったほうが良いかと、経済学部に進学しました。親戚に経営者がいたのも、経営に興味を持った理由です。

――大学卒業後、しばらくして起業したと聞いていますが?

新卒で日本長期信用銀行(以下、長銀)に入行しました。経営者のご子息たちは銀行に入る方も多かったので、「まあ、そんなものかな」と思い、銀行に就職することにしたんです。

当時は銀行業界が「変わるだろう」と言われていて、その中でもいちばん変わりそうだったのが、長銀でした。長期資金の提供という産業金融の役割を終えつつあり、新しい価値を見出していかねばならない時期でした。変化しなければならない長銀で、その中に身を置いて自分の目で変化を見たくて、長銀にお世話になることにしました。

もっと穏やかに変化が起こるだろうと皆思っていたのですが、極めてスピーディーに業界再編が起こりました。入行1年目で山一証券が破綻、それ以外にも破綻する金融機関が相次ぐ中で、巡り合わせで長銀が大きく破綻することになってしまいました。一度、起こり始めると、すごい勢いで金融業界再編が起こったんです。1998年のことでした。

その変化は非常にエキサイティングで「なるほど、こうやって変化というものは起こっていくのか」ということを、肌で感じていましたね。当時、長銀は外資との提携など手を打っていましたが、いまひとつ変わりきれず「変わりたくない圧力のほうが強い」というように見えました。

しかし、株主が変わり、経営陣が変わったことで大きく変化が始まりました。その変化を目の当たりにして、会社が変わるのは「人」なんだ、と実感し、人材ビジネスに興味を持ち、現在の人材紹介会社「コトラ」を起業しました。

――長銀が破綻し、新生銀行に変わったときの「人」の力を見て、人材ビジネスに興味を持たれたということですね?

現在の金融業界の様子は違いますが、当時はグローバリゼーションで、外資系金融機関が日本に押し寄せた時期でした。その際に、高付加価値の案件の多くを、外資系金融機関が受注していました。

ひとつひとつの案件の収益性が高いことの積み重ねで、会社全体の収益も違っていました。会社全体の収益性、生産性が違えば次の世代への投資力が違います。この繰り返しで外資系と日系の収益力、ひいては「各個人の年収の差」がついているように見えました。

生産性の差のひとつの要因は、日本企業の「総合職主義」に対して、外資企業は「プロフェッショナル主義」であると思いました。

外資系の専門知識と長い経験を持った人たちが、高付加価値の案件を手掛けている。その時に、「専門性、プロフェッショナル」ということについて、日本全体がリスペクトに欠けていると感じ、その経験をきっかけに「プロフェッショナルを紹介する会社」をつくろうと思ったのです。

長銀時代の様子
長銀時代の大西さん(右)

大西さんの考える「優秀な人材」とは?

――つまり、現在のクライアントは、優秀なプロフェッショナルを求めている企業が多いということでしょうか?

そうですね。金融、IT、コンサル、製造業、経営幹部、それぞれのプロフェッショナルを求めていらっしゃるクライアントとの取引が多いです。「優秀な人材を採用したい」という、企業様のニーズにお応えしています。

「優秀な人材」という定義が世の中的に誤解あると私は思っていて、優秀な人材とは、「その企業で成果を出せる人」だと思うんです。やる気があるとか、学び続ける姿勢とか、EQが高いとか、感じがいいとか、そういうことも大切ですが、それは、「何をどのくらいアウトプットするか」の構成要素にすぎません。

野球選手に例えるなら、中途採用では企業はイチローのように「成果を出す人」が欲しい。イチローくらい足が速くても、イチローのように肩が強くても、成果が出せなければ、プロとして認められないのと同じです。

中途採用、特にプロフェッショナル採用でクライアントが求めている優秀な人材とは、「それぞれの分野で、きちんと成果が出せる人」です。

――お客様のニーズにあった優秀な人材をご紹介するというのは、簡単なことではないのでは?

難しいですね。ただ、「優秀な人材は、どこへ行っても優秀だ」とか、「優秀じゃない人材は、どこへ行っても優秀じゃない」なんてことはまったくなく、人はそれぞれの環境の中で力を発揮します。その環境や状況を把握して、チャンスを提供するのが我々、人材紹介会社の役割です。

ある会社で能力を発揮できなかった人が、転職をして大活躍する、というのはよくあることです。

――人材紹介会社は世の中にたくさんあると思いますが、なぜ御社が選ばれていると思われますか?

コンサルタント(ヘッドハンターのこと)は、コンサルティング営業の一種ですが、コンサルティング営業には3つの能力が必要だと思います。

■1:アカウントマネジメント能力

■2:お客様を知る能力

■3:自社の製品・サービスを知る能力

この3つを持って、初めてお客様の課題を解決することができます。弊社では特に、2と3を重視しています。つまり、「お客様がビジネスで成し遂げたいこと」と、「お客様の付加価値の源泉である、業務内容を理解すること」が大切だと考えています。

その基礎となるのが、各業界の専門知識です。弊社はこの能力を重視して採用、教育をしています。人材紹介会社では1のアカウントマネジメント能力を重視している会社は多いですが、2と3を重視している会社は、そう多くないように思います。

この違いこそが、弊社がお客様から選ばれて、長く仕事をやらせていただいてる理由かもしれません。

会社で社員と話をしている大西さん
社員と話をしている様子
次ページ 人材を採用するときのコツは?
この記事の執筆者
新卒で外資系エアラインに入社、CAとして約10年間乗務。メルボルン、香港、N.Yなどで海外生活を送り、帰国後に某雑誌編集部で編集者として勤務。2016年からフリーのエディター兼ライターとして活動を始め、現在は、新聞、雑誌で執筆。Precious.jpでは、主にインタビュー記事を担当。
公式サイト:OKAYAMAYUKIKO.COM
EDIT&WRITING :
岡山由紀子