アメリカ・マサチューセッツ州ケープコッド。そう聞いて、ピンとくる人はそう多くはないでしょう。ジョン・F・ケネディゆかりの地ですが、それよりも少女コミック『バナナフィッシュ』の主人公、アッシュ・リンクスの生まれ故郷と言ったほうが、刺さる人が多いかもしれませんね。

ケープコッドのサンドウィッチは、北米で最も長い歴史をもつ町。アメリカ独立宣言よりも100年以上前の1639年、ヨーロッパ人が最初に移住した場所のひとつです。

ケープコッド様式の邸宅
古き良きアメリカを思わせる建物が通り沿いに点在

ボストンから車で約1時間30分。サンドウィッチの町に入ると、緑の街路樹に縁どられた道のところどころに、ケープコッド様式の邸宅が点在しています。

三角屋根に白い横板を張った壁、観音開きの窓に、イスを置いた玄関前のポーチ。古き良きアメリカのイメージどおりの佇いです。キッチンではエプロン姿のおかあさんが焼きたてのチェリーパイを切り分けているのでは? と、想像も膨らみます。

米国人が憧れる、300年の歴史をもつプチホテル

そのサンドウィッチのほぼ中心部に、ダニエル・ウェブスター・インはあります。このプチホテルの創業は1692年。前身の「ケープ・コッド・ロッジング」から300年以上に渡り、紆余曲折がありながらも、宿泊業を営んでいます。

フェセンデンハウス
300年の歴史を見守ってきた「フェセンデンハウス」。1982年に改装

ダニエル・ウェブスター・インは2階建てのホテル棟と、「フェセンデンハウス」という一軒家からなります。この一軒家、もともとはローランド・コットン牧師の牧師館として建造。その後、フェセンデン牧師に受け継がれ、やがてタバーンとして1750~1857年まで町の人々の憩いの場に。

その間に、リバプールからわずか20日間で航海した記録をもつキャプテンや、米国上院議員も務めた“フェイマス・ファイブ”と呼ばれたダニエル・ウェブスターなどが深く関わりました。そしてこのフェセンデンハウスは1982年に改装された際、邸宅にまつわる人の名前が各スイートに名づけられたそうです。

エレガントな客室
全48ルーム、どの客室もエレガントな風情

美しいコロニアル調の客室はトータルで48室。手の込んだ木彫りがほどこされた四柱ベッドは台座が必要なほど、高さのあるもの。エレガントなファブリックや家具でまとめられています。

窓から見えるガーデン
手入れの行き届いたガーデンの美しさも、このホテルの魅力
ケープコッド様式の建築のメイン棟
2階建てのメイン棟。こちらもケープコッド様式の建築

部屋によっては暖炉や、ふたりで入っても十分に広いホイールプールタブ(バスタブ)も。スイートルームには300番糸のリネンやマイクロファイバーのバスローブを用意し、肌触りからも優雅さを感じます。

暖炉が設置されたジャーベススイート
暖炉がある、人気の「ジャーベス」スイート。木彫りの四柱ベッドなど細工がみごと

温室のようなレストランでサンデーブランチを

外の景色が見えるコンサバトリーレストラン
陽光麗しい季節に気持ちよく過ごせるコンサバトリーレストラン

ホテル内の4つのレストランのうち、おすすめは温室のようにガラス張りの「コンサバトリー」。外光がたっぷりと注ぎ、ガーデンの花々や緑に包まれて、気持ちのいい空間です。朝食やランチ、サンデーブランチも人気です。

レストランの内装
カジュアルなタバーン。王道メニューもひねりが効いています

シェフは王道のプライムリブやフィレミニョンに、季節の味わいをプラスしてクリエイティブなメニューをサーブ。ワイン専門誌の『ワインスペクテーター』による賞も獲得したワインリストもお見逃しなく。

緑に囲まれたスイミングプール
美しいガーデンの奥に、緑に包まれたスイミングプールも

アメリカ人が昔日のロマンを求めて訪れる、小さなホテル。見知らぬ町で、思いもよらぬ名ホテルとの出合い。だから、旅は面白いのですね。

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この記事の執筆者
ダイビング雑誌の編集者を経てフリーに。海外旅行専門誌でもビーチを担当。月に1~2回、海外を中心に国内外のビーチリゾートへ通うこと、かれこれ四半世紀以上になる。女性誌の旅記事、ライフスタイル誌の連載、ウェブの連載ほか、共著に『奇跡のリゾート 星のや竹富島』など。世界のビーチガイド「World Beach Guide(http://www.world-beach-guide.com ) 」主催 好きなもの:海でボーッとすること、ボディボード、ダイビング、ビーチパーティー、Jazztronik、H ZETTRIO、渋谷Room
公式サイト:古関千恵子ホームぺージ
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WRITING :
古関千恵子
EDIT :
安念美和子