三日月が上品に輝く夜空、池で気持ちよさそうに泳ぐ金魚などが表現された、思わず食べるのがもったいないと感じるほど、美しい夏ようかん。

そのビジュアルに目を奪われがちですが、せっかく季節の和菓子を楽しむなら、見た目だけではなく、味も確かな夏ようかんをいただきたいところ。

そこで今回は、『ニッポン全国和菓子の食べある記』の著者で、髙島屋で約10年和菓子のバイヤーを務める畑主税(はたちから)さんに、この夏一度は食べたいおすすめの「夏ようかん」を3つお伺いしました。

見て楽しい、食べておいしい夏ようかん3選

3種の夏ようかんの画像
畑さんがおすすめしてくれた3種の夏ようかん。左より「夏まつり」、「星づく夜」、「水灯り」

■1:さざれ石の細工が美しい「夏まつり」/亀屋良長

亀屋良長「夏まつり」の画像
亀屋良長「夏まつり」¥1,026(税込)※日持ちは常温で約20日間

気持ちよさそうに泳ぐ金魚が縁日を彷彿とさせる、亀屋良長の「夏まつり」。亀屋良長は、享和3年(1803年)創業の京菓子の名店です。

底に敷かれた砂利は、練り切りと黒ごまで作られたもの。夏の風情を演出する細やかな手仕事が光ります。

亀屋良長「夏まつり」の画像
色違いの金魚が気持ちよさそうに泳いでいます。

食感は寒天がベースなので、つるんとしたゼリーのような口当たり。ときどき、金魚に使われた豆の風味が口の中でほんのり広がります。

よく冷やすとさっぱりといただけるので、あずき餡の濃厚な水ようかんが苦手な方にもおすすめできる一品です。

■2:これぞ食べるアート!爽やかな味の「星づく夜」/亀屋清永

亀屋清永の「星づく夜」の写真
亀屋清永「星づく夜」小 ¥810(税込)※日持ちは常温で約20日間

鮮やかな星空に目を奪われる亀屋清永の「星づく夜」。亀屋清永は、17代に渡り400年以上の歴史を持つ、京都にある老舗和菓子店です。

「星づく夜」は、満点の星が夏の夜空に輝く情景を見事に表現した夏ようかん。

亀屋清永「星づく夜」の画像
煌々と光る美しい三日月。

しっかりとした寒天ゼリーのような食感で、パッションフルーツとレモンがほのかに香ります。後味がスッキリとしているので、夏バテ気味でもペロリと食べられそう。

■3:弾力がおいしい涼しげな「水灯り」/俵屋吉富

俵屋吉永「水灯り」の画像
俵屋吉富「水灯り」¥1,080(税込)※日持ちは常温で約40日間

俵屋吉富の「水灯り」は、金魚が仲良く泳ぐ様子が、見た目に涼しげな一品。俵屋吉富も、宝暦5年(1755年)創業の歴史ある京都の老舗和菓子店です。

俵屋吉永「水灯り」の画像
親子のようにも見える愛らしい金魚。

もち米を加工した「道明寺」という材料が使用されているため、ゼリーよりも弾力のあるモチモチとした食感です。噛みごたえがあるため、金魚に使われた豆の風味もしっかりと感じられます。

ご紹介した3つの夏ようかんは、ともに髙島屋では一部の店舗を除く、各店舗にて夏季限定で販売されています。

実はようかんじゃない!?夏ようかんの正体は「錦玉」

美しい透明感のある見た目に涼を感じる夏ようかんですが、正確には「ようかん」ではないことをご存知でしょうか。

畑さんによると、夏ようかんは「錦玉(きんぎょく)」と呼ばれるものなのだそう。ようかんとの大きな違いは、あんこを一緒に練って流し固めているかどうか。あんこを加えずに、透明感のある寒天を流し固めたものを「錦玉」と呼びます。

ちなみに、錦玉は江戸時代からある生和菓子で、その頃は「錦玉羹(きんぎょくかん)」と呼ばれていたそう。背景を知ることで、より一層、夏ようかんのおいしさを楽しめそうですね。


思わずうっとりと眺めてしまうほど、美しい夏ようかん。寒天がベースでさっぱりといただけるので、厳しい残暑の涼をとるのにもピッタリの一品です。ヒンヤリおいしい夏ようかんで、今年の夏を締めくくりませんか?

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この記事の執筆者
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WRITING :
文 希紀