大企業が採用、オフィスで不調を解消するために行われる「業務時間内ヨガ」とは?

明治安田生命、三菱地所、某大手代理店、etc.。今、大手有名企業が、積極的に社内でヨガを推進し、業務時間中に、ヨガレッスンを取り入れています。そのインストラクターを務めているのが、京乃ともみさん。名だたるプロアスリートの指導も手掛け、ヨガイベントなどにも引っ張りだこの京乃ともみさんに、企業でヨガが支持される理由や、オフィスでも自宅でも簡単にできる、不調を解消するヨガポーズなどをお聞きしました。

ヨガ指導者/セミナー講師 京乃ともみさん
ヨガ指導者/セミナー講師 京乃ともみさん

ヨガインストラクター・京乃ともみさんに「気軽に、どこでも誰でも、簡単にできる」ヨガポーズを伺います

Precious.jp編集部(以下同)--今、大手企業が続々と社員のために、ヨガレッスンを取り入れていると聞いていますが、なぜでしょうか?

働き方改革で、「社員の健康を考える会社が増えてきたこと」が理由だと思います。欧米では、社員のためのウェルネスプログラムなどが、とても充実しています。社内にジムがあったり、身体を動かすスペースがあったり。病気になった社員のケアにかかる費用を負担するより、最初から社員の健康気遣って、健康づくりのためのシステムを、充実させたほうが良いという合理的な考え方があります。

少しずつですが日本でも、「社員が健康であってほしい」という考え方が、企業内で浸透してきているように思います。

ーー京乃さんが実際にヨガのレッスンを行っている企業はどちらですか?

ヨガ指導者/セミナー講師 京乃ともみさん
虎ノ門ヒルズでのヨガイベントにも参加

明治安田生命、三菱地所、大手広告代理店、大手メーカーなど、沢山の企業にお伺いして、勤務時間内にヨガのレッスンをしています。社員のみなさんは、普段着のまま、着替えることなく参加して、また仕事に戻っていきます。森ビルでは「ヨガ部」が発足し、活発に活動が行われています。

ーーヨガレッスンを取り入れることに、どんなメリットがあると思いますか?

大きく3つあると思います。

①健康維持
⓶リフレッシュや疲れをとる
③個人の見た目や、パフォーマンスが上がる

ヨガを行うことで、病気を防げたり、気分転換ができる、というのは良く知られていることと思いますが、それだけではなく、「見た目が変わることにより、個人のパフォーマンスが良くなる」という点が、企業から支持されている理由だと考えられます。

ヨガをすることで、疲れがとれて、姿勢が良くなり、歩き方が颯爽としていると、仕事ができそうに見えるし、いきいきとしていて、営業スキルも上がるようです。

ですので、企業内では、「姿勢や歩き方」に着目して、そのためにはこういうポーズをしたらいいですよ、とお話しすることも多いです。

ーー各企業のどの場所でヨガレッスンをしているのでしょうか?

会議室が多いですね。勤務時間中に、会議室に来ていただいて、普段着のままレッスンに参加してもらっています。企業が社員のために取り入れると、個人がコストを負担する必要がないですよね。

また、特に働く女性は、ジムに行きたくても、なかなかその時間が取れないことが多いんです。仕事して、子供のお迎えに行って、帰宅して、家事をして…と、とても忙しいので、会社の中で気軽に参加できるレッスンが支持されています。

京乃さんが、企業の会議室で、椅子にすわっている社員の方々にヨガのレッスンを教えている様子
森ビルの会議室でヨガ部が活動している様子

ーー実際にレッスンを企業内で受けられた方から、どんなお声をいただいていますか?

「背が伸びた」「姿勢が良くなった」という身体の改善とともに、「ストレスから解放された」「気持ちが楽になった」など、心も楽になったという声もいただいています。身体の健康なくして、心の健康はありませんよね。

ヨガをすることで、まず「姿勢が良くなる」。姿勢が良くなる筋力(体幹)が鍛えられると、さらにそこに必要な筋力が維持されていきます。楽に姿勢を正せる筋力がつくと、肩が開いて、血行がよくなり、代謝が上がって、肌の調子も良くなるなど、全身が好循環になります。

ーーヨガにおいては、デメリットはないのでしょうか?

デメリットがないことが、企業に支持される大きな理由のひとつであると思います。激しい運動だと、心臓に負担がかかったり、怪我をしたりする可能性がありますが、そういうリスクがないので、性別、年代を問わずに行えるんですよね。

過去に大病を患った方や、持病を抱えている方なども、「今の自分の骨格筋」を大事にして、「個人にベストなもの」を大前提として行えるのがヨガです。

女性の3大悩みを解決するヨガのポーズとは?

ーー女性の3大悩みの「首こり」「肩こり」「腰痛」を解消する、1分ヨガのポーズを教えてください。

■1:前に出てくるあごを元に戻す「首こり」ポーズ

肩のこりをとるポーズ 片手をこめかみに、片手をのどもとにあてたポーズ
首のこりをとるポーズ

胸鎖乳突筋をゆるめることで、あごの位置を元に戻すポーズです。あごが前に出ていると、首のうしろが凝り固まりやすくなります。

【STEP1】まずは、自分の首がどこまで回るのか、を確認しましょう!

【STEP2】手のひらをこめかみにあてて、頭の位置はそのままで、ぐ~と押し合います

【STEP3】口から「はぁ~」と息をはきます

【STEP4】②と③を3回繰り返す

【STEP5】もう一度どこまで回るかを確認して、①のときよりもスムーズな動きになっているのを確認しましょう

■2:肩甲骨を動かしてこりをほぐす「肩こり」ポーズ

肩こりをとるポーズ 片手を上にあげ、天井を押し上げるように
肩こりをとるポーズ

肩をもんでもダメなら、肩甲骨を動かしてみましょう! 肩から背中のこりを一気にほぐせます。

【STEP1】いすに座って片腕を伸ばし、手のひらを外側に上体を少し傾けながら、腕をななめに上げていく。

【STEP2】腕をあげきったら、天井にむけて手のひらでプッシュ

【STEP3】腕を後ろに回していき、壁があるイメージでなで下す

【STEP4】4回目腕をあげたら、上体を少し横に倒す

【STEP5】ゆっくり3呼吸キープして元に戻す

■3:お尻の筋肉を伸ばす「腰痛」解消ポーズ

腰痛をとるポーズ 片足を反対の膝の上にのせる(左)足をのせたまま上半身をだらんと下げる(右)
腰痛をとるポーズ 左から右のポーズへ

デスクワークで座っているとき、お尻の筋肉がクッションになり、体重を支えてくれているお尻がこると、腰に負担がかかって腰痛になってしまいます! 殿筋を伸ばすことでケアしましょう。

【STEP1】椅子に座って、片膝を曲げて、足首を反対の膝上にのせる

【STEP2】手のひらで曲げたひざを下に押す

【STEP3】余裕がある人は、上体を前傾して脱力しましょう

ーーこれらのポーズは、どのくらいの頻度で行うと効果的なのでしょうか?

気がついた時にやってみてください。ヨガは「何かを治す」という考え方よりも、「元のフラットな状態に戻す」という考え方なんです。予防医療と同じです。私自身、毎朝、起きると30分ヨガをして、自身の身体を「フラット」な状態に戻しています。

気がついた時にその都度、このヨガのポーズを取ることで、「いつもと違うな」とか、「今日はここが固いな」とかわかるようになります。自分で自分の身体の状態がわかるようになると、精神的に楽になりますよね。会社で、デスクの前に座って、先ほどのヨガのポーズを繰り返すことを続けるだけで、「自分のフラットな状態」がわかるようになった方も、沢山いらっしゃいますよ。

ヨガで大切なのは「リラックス」「リフレッシュ」2つの呼吸法

また、ヨガをする際に一番最初に、みなさんにお伝えすること、それは「呼吸」です。呼吸が止まっているときは、身体が無理をしているときなので、呼吸が止まらないように、無理のない範囲でポーズをしてくださいね、といつもお伝えしています。

――呼吸法を具体的に教えてください。

大きく分けて、リラックスとリフレッシュの呼吸法があります。

リラックスの呼吸法(ウジャイ呼吸)

満員電車などでイライラしたら、波音の呼吸で副交感神経を高めて、気持ちを落ち着かせましょう。

【STEP1】のどの奥を閉じ、鼻から6秒吸い、8秒吐く

【STEP2】寄せては返す波音を奏でるように、のどの奥で音を鳴らします。3回繰り返しましょう 

リフレッシュの呼吸法(ナディショダナ―⦅片鼻⦆呼吸)

 忙しいときは、片鼻呼吸でリフレッシュしましょう。

【STEP1】右手の人差し指を眉間に当てる

【STEP2】中指の関節で左鼻を閉じ、右鼻からゆっくり吸う

【STEP3】親指で右鼻を閉じ、中指を離して左鼻からゆっくり吐く

右から吸う→左から吐く→左から吸う→右から吐くを、3セット行います。

自然の中で気持ちよさそうにヨガをする京乃さん
屋外でヨガを行うこともしばしば

以上、京乃ともみさんに、オフィスでも自宅でも簡単にできる、不調を解消するヨガポーズを教わりました。次からは、京乃さんご自身とヨガとの関わりについて伺います。

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この記事の執筆者
TEXT :
岡山由紀子さん エディター・ライター
BY :
働くみんなの1分すぐ楽ヨガ いつでもどこでも瞬間リフレッシュ! 京乃ともみ著 学研プラス
新卒で外資系エアラインに入社、CAとして約10年間乗務。メルボルン、香港、N.Yなどで海外生活を送り、帰国後に某雑誌編集部で編集者として勤務。2016年からフリーのエディター兼ライターとして活動を始め、現在は、新聞、雑誌で執筆。Precious.jpでは、主にインタビュー記事を担当。
公式サイト:OKAYAMAYUKIKO.COM
EDIT&WRITING :
岡山由紀子