世界遺産・清水寺で開催される「CONTACT つなぐ・むすぶ・日本と世界のアート展」
世界遺産・清水寺で開催される「CONTACT つなぐ・むすぶ・日本と世界のアート展」

2019年9月1日(日)から9月8日(日)の期間、「ICOM(国際博物館会議) 京都大会」の開催を記念して、世界遺産・清水寺で開かれる展覧会「CONTACT つなぐ・むすぶ・日本と世界のアート展」。

展示作品は、美術のみならず、文学や映画、マンガなど、ジャンルを横断し、世界と日本のアーティスト、クリエイターがどのように影響を与え合い、響き合ってきたかの軌跡を展観できる内容になっています。

国際博物館会議、ICOM 京都大会とは?

本展は、9月1日から9月8日まで開催される「ICOM(国際博物館会議) 京都大会」を記念し、同時期に開催されます。ICOMは、美術関係者でないと知らない人も多いと思いますが、ミュージアムの進歩進展を目的に1946年に創設された国際的な非政府機関です。

3年に1度、世界大会が行われ、今年は日本で初めて京都が開催都市となり、世界141の国と地域から3万人を越す美術館・博物館関係者が集結します。

日本と世界のアートにおける、両者の「コンタクト」がテーマに

猪熊弦一郎《無題》1948-49年頃 油彩、板[3枚組の一部] 個人蔵 ©公益財団法人ミモカ美術振興財団
猪熊弦一郎《無題》1948-49年頃 油彩、板[3枚組の一部] 個人蔵 ©公益財団法人ミモカ美術振興財団

「コンタクト」をテーマに、互いに影響を与え合う日本と世界のアートが集結。例えば、日本のアーティストやデザイナーに多大な影響を与えたアンリ・マティスや、南仏でマティスに師事した猪熊弦一郎、四半世紀以上も日本で個展を開催し続けてきたゲルハルト・リヒターなど、日本と積極的に接触をした外国人アーティスト、そして国際的に活躍した日本人アーティストの作品を併せて展示することにより、日本と世界のアートがどのように融和してきたかを展観します。

ゲルハルト・リヒター《8枚のガラス板》2012年© Gerhard Richter 2019 (01082019)
ゲルハルト・リヒター《8枚のガラス板》2012年© Gerhard Richter 2019 (01082019)

セルフポートレートの巨匠・森村泰昌がゴッホに挑んだ映像作品の隣には、宮沢賢治が病床で思いの丈を手帳に書きつけた「雨ニモマケズ」が飾られていたり、美術のみならず、文学やマンガ、映画などジャンルをミックスしたユニークな展示もみどころです。

森村泰昌《エゴ・シンポシオン/ゴッホ》2017年 © 2019 Yasumasa Morimura
森村泰昌《エゴ・シンポシオン/ゴッホ》2017年 © 2019 Yasumasa Morimura

本展の総合ディレクターを務める作家の原田マハさんは「宮沢賢治の『雨ニモマケズ』を初めて見たとき、とてもアーティスティックに見え、いつか作品として見せたいと思っていました。今回、清水寺の成就院で森村泰昌さんの作品を展示することになり、森村さんからできるなら『雨ニモマケズ』と一緒に展示したいと言われて、そうすることになったんです」と語ります。

宮沢賢治『雨ニモマケズ』直筆手帳 1931年 (C)株式会社林風舎
宮沢賢治『雨ニモマケズ』直筆手帳 1931年 (C)株式会社林風舎

小説家・原田マハが初監修するアート展

8月8日、清水寺で行われたた記者会見。会見に登壇した4名。左から、ICOM京都大会2019年組織委員長・佐々木丞平、細見美術館館長・細見良行、原田マハ、清水寺執事補・大西英玄
8月8日、清水寺で行われたた記者会見。会見に登壇した4名。左から、ICOM京都大会2019年組織委員長・佐々木丞平、細見美術館館長・細見良行、原田マハ、清水寺執事補・大西英玄

この展覧会は、キュレーターのキャリアを持ち、ICOMの会員でもある原田マハ自らが発起人となり、総合ディレクターを務めています。さらに、短編小説「20 CONTACTS 消えない星々との短い接触」を書き下ろし、同展に先駆け刊行されています(幻冬舎より8月10日発売)。

短編小説「20 CONTACTS 消えない星々との短い接触」幻冬舎より8月10日発売 ¥1482(税抜)
短編小説「20 CONTACTS 消えない星々との短い接触」幻冬舎より8月10日発売 ¥1482(税抜)

同書は、「私」からの挑戦状を受け取った「私」が本展に出展しているアーティストを含む20名の巨匠に会いに行き、その創作の秘密に迫る物語。展覧会では、原田マハによる全作品の解説と小説の一部を掲載したタブロイド紙が無料配布されます。

今回の展覧会は、解説やキャプションを一切排した、シンプルな展示になっていて、タブロイド紙や小説を読んでから展示作品を鑑賞すれば、また違った感じ方をすることができます。

舞台は世界遺産・清水寺。普段は非公開のエリアも会場に

清水寺 成就院 庭園
清水寺 成就院 庭園

会場となるのは、それ自体が日本を代表する文化財である清水寺。そもそも寺院とは、御用絵師を住まわせ、作品を創らせ、それを発表するアートの擁護者としての長い歴史を持つ、いわば日本におけるミュージアムの原点ともいえる存在です。

本展では、小堀遠州作庭の美しい庭園を有する「成就院」や「経堂」といった通常は非公開のエリアでアートを鑑賞することができます。

さらに、現代アーティスト、加藤泉のインスタレーションを西門や馬駐で展示するなど、チケットなしで鑑賞可能なエリアもあり、清水寺を訪れる世界中の来場者がアートに触れることができます。

加藤泉《無題》2019年 (本展のための特別制作) 布、革、アクリル絵具、パステル、ステンレススチール、アルミニウム、鉄、刺繍、石、リトグラフ  ©️2019 Izumi Kato
加藤泉《無題》2019年 (本展のための特別制作) 布、革、アクリル絵具、パステル、ステンレススチール、アルミニウム、鉄、刺繍、石、リトグラフ  ©️2019 Izumi Kato

また、会期中は、原田マハが、俳優・竹中直人や映画監督・山田洋次など、多彩なゲストを迎えるトークイベント「CONTACT.ALK:アート経由・日本と世界のつなぎ方」も開催されます。

世界遺産の寺院での開催や小説連動という、新しい試みもいろいろ。時空とジャンルを超えて響き合い、結び合うアートと言葉に共鳴し、作品を見るだけでなく、その背景にある世界とコンタクトし、作品を体感してみていただければと思います。

「CONTACT つなぐ・むすぶ・日本と世界のアート展」出展作家

司馬江漢
オーギュスト・ロダン
アンリ・マティス
オーブリー・ビアズリー
アルベルト・ジャコメッティ
猪熊弦一郎
棟方志功
東山魁夷
ヨーゼフ・ボイス
ゲルハルト・リヒター
三島喜美代
森村泰昌
三嶋りつ惠
ミヒャエル・ボレマンス
加藤泉
荒木悠
宮沢賢治
川端康成
小津安二郎
手塚治虫
竹宮恵子
バーナード・リーチ
河井寛次郎
濱田庄司
ルーシー・リー
シャロット・ペリアン

問い合わせ先

  • CONTACT つなぐ・むすぶ・日本と世界のアート展
  • 会期/2019年9月1日(日)~9月8日(日)会期中無休
  • 開館時間/7:00~18:00※入場は閉館1時間前まで
  • 会場/清水寺(京都市東山区清水1丁目294)成就院、経堂、西門、馬駐
  • 入場料/一般1,800円 小学生以下無料 ※モーニングチケット(7時~9時入場)一般1,600円、トークイベントとのセットチケット5,000円 公式サイトで前売券を発売中 ※当日券あり
  • TEL:075-351-9915 チケット販売窓口:株式会社のぞみ内 ※電話応対時間:10:00-18:00(土日祝除)

この記事の執筆者
女性情報誌の編集を経てフリーランスに。エディター・ライター歴15年以上。生まれ育った京都を拠点に、女性情報誌やファッション誌、グルメ誌に寄稿。京都特集や京都でのファンションロケのコーディネートも行う。
公式サイト:"映える!" なにそれ、おいしいの?
Instagram へのリンク
WRITING :
天野準子