サファリジャケットというと、その名称から特殊な服のように感じるかもしれない。

「私たちはトレンチコートやバルカラーコートなどアウターをいくつか手がけていますが、それらは紳士のワードローブにあるべきもの、として提案しています。サファリジャケットもそのひとつです」

紳士の装いに帰還するサファリジャケット

1953年に公開されたアメリカ映画 『モガンボ』でクラーク・ゲーブ ルが着用していた半袖のサファリジャケット。当時スタンダードだったデザインが半世紀の時を経て今の形になった。現代のサファリジャケットのルーツである。写真:Everett Collection/アフロ
1953年に公開されたアメリカ映画 『モガンボ』でクラーク・ゲーブ ルが着用していた半袖のサファリジャケット。当時スタンダードだったデザインが半世紀の時を経て今の形になった。現代のサファリジャケットのルーツである。写真:Everett Collection/アフロ

こう語るのはテーラー「バタク」の中寺広吉氏。「バタク」で展開されているサファリジャケットは、フロントに4つのパッチ&フラップポケットが付き、シャツタイプの襟と前立て、背中両側にアクションプリーツが配され、しっかりとしたウエストベルトで締めるスタイルがある。素材は低速織機でつくられたオリジナルのコットンドリルを中心に、麻素材でも展開している。範としたのは、1953年に公開された映画『モガンボ』で、クラーク・ゲーブルが着用していたサファリジャケットだそう。

「実は現在のサファリジャケットは2代目です。初代は1940年代の英国のテーラーが仕立てたものをベースとしていました。軍服調の仕立てで、肩は狭くそでは腕なりに仕立てられ、ウエストが絞ってありました。でもそのがっちりとした雰囲気が大げさに思えて、大人っぽくないとも感じていたのです。そんなときに『モガンボ』を観て、あの感じならいいのではないかと、更新しました」(中寺氏)

ヴィンテージクローズにも造詣が深い中寺氏だが、サファリジャケットを見かけるのは'40年代ぐらいからだという。テーラーが手がける注文服として、軍服のつくりを下敷きに、'50年代から'60年代にかけてしだいにサファリジャケットとして完成していったと見る。『モガンボ』のサファリジャケットは「機能性とテーラードのバランスがちょうどいい、注文服として最後の頃のサファリジャケット」と中寺氏。そして'60年代には〝アバクロンビー&フィッチ〞などのアパレルメーカーが既製服化し、さらに'70年代にイヴ・サンローランがモードとして提案、現代のファッションへとつながっていく。

サファリジャケットのルーツとなった映画「モガンボ」

左/1953年公開の映画「モガンボ」の映画ポスター。エヴァ・ガードナーとクラーク・ゲーブルの衣装にも注目だ。写真:Everett Collection/アフロ
左/1953年公開の映画「モガンボ」の映画ポスター。エヴァ・ガードナーとクラーク・ゲーブルの衣装にも注目だ。写真:Everett Collection/アフロ

特に2018年はサファリジャケットを筆頭に、トレンドとしてコロニアルな要素が非常に多く見受けられ、現在でもその影響は続いているように感じられる。

ピッティやパリやミラノのコレクションなどで発表されるメンズファッションにおいては、ここ数年ベージュやカーキといったカラーが注目され、これまではどちらかというとミリタリーやワークウエア由来の色として語られることが多かったが、2018年の春夏からはより多彩なアイテムが提案されるようになってきた。

ピッティの人気ブランド「ラルディーニ」が提案していたように、それらの中には、昔日のコロニアル、北アフリカや東南アジアの風土を連想させるものが多く、時代とのニーズに合わせた変化を遂げている。 

さらに、それらの色をベースとした柄物や、リネンやシルクといった清涼感ある素材、シャツやニット、イージーパンツなどアイテムも多岐にわたっていて、ベージュとカーキの豊かなバリエーションが注目だ。 その一方でスタイリングにおいては、リラックス&カジュアル一辺倒から、ビスポークのジャケットやウエストコート、タックトラウザーズ、ブレイシーズといった着こなしが春夏においても多く見られるようになっている。中にはラルフ ローレン パープル レーベルが提案したオフホワイトのシルクリネンスーツなど、1930年代のコロニアルスタイルを彷彿とさせるようなエレガントな夏の装いも散見された。

それらは緩やかなサイズ感のトップス、太めのボトムスなど、モードの世界でも主流となったシルエットと組み合わされることで、が然大人っぽいリラックス感を生み出している。現代性を付加したコロニアルスタイルといえるかもしれない。 さらに、モードブランドのコレクションではベージュやカーキ同色のグラデーションによるスーチングも多く見られ、そのスタイルはいわゆるクラシックなコロニアルスタイルを超越して、むしろアフリカや中東、または東南アジアの風土そのものから影響を受けた装いのようにも感じられ、今後の方向性を予感させる。

この記事の執筆者
TEXT :
MEN'S Precious編集部 
BY :
MEN'S Preciosu2018年春号より
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