胸の大きな女性向けアパレルブランド「overE」を立ち上げたことで、大きな注目を集めた株式会社エスティーム代表取締役の和田真由子さん。「ミレニアル世代の女性起業家」として、各メディアなどでも話題となっています。

柔らかな雰囲気をもつ和田さん
柔らかな雰囲気をもつ和田さん

そんな和田さんに「overE」を立ち上げた背景や、胸の大きな女性の生きづらさ、女性起業家のメリットやデメリット、今後の事業計画などのお話を伺いました。ミレニアル世代ならではの新しい発想は、明日からのビジネスのヒントになるかもしれません。

胸の大きな女性はココが生きづらい!

これまでになかった、胸の大きな女性向けアパレルブランドを世に送り出したことで、注目を集めた和田さん。

もともと、和田さんも胸の大きな女性として、生きづらさを感じていたひとりだったそう。どんな想いを抱えていたのでしょうか?

和田さんが体形で感じた生きづらさとは?
和田さんが体形で感じた生きづらさとは?

「こんなエピソードがあります。雑誌で見て『可愛い!』と思った、インポートもののワンピース。着ている姿を想像してみたら、テンションが上がった。帰路を急いで、駅ビルに足を運ぶ。実物は雑誌で見たよりもっと素敵で、店員さんに声をかけて試着室に入った。

実際に着てみると、『なんだか違う』『ちょっと胸が強調され過ぎているよね』。外国の街中ならいいかもしれないけれど、日本で普段着るにはセクシーすぎる。かといって、ワンサイズ上げてしまうとぶかぶか。

『いかがですか~?』と店員さんの声にハッとして、適当な理由をつけて返品。よくあることだけど、少し傷ついている。胸が大きいことは私の魅力だと思うし、嫌いではないけれど。だけど、こんなときは…。

これは、overEが公式ショップの『about overE』に載せているエピソードです」と和田さん。

胸の大きな私は「そもそもファッションを楽しむ資格がないのではないか?」

「多くの女性にとって試着室は、新しい自分に出会える心ときめく空間なのでしょう。それが、私や胸が大きな女性たちにとっては、ある種『試練』の空間でした。

『着られるか、着られないか』。事実はそれだけにとどまらず、『私はブランドから、ひいては社会から認められていない』ような疎外感や、『そもそもファッションを楽しむ資格が、ないのではないか』という思い込みを抱かせるようです」

「とりわけ年齢でいえば中高生といった思春期にはいっそう、そう感じさせます。中高生といえば、体形の変化を、自分自身や周囲も受け止めきれない時期。友人たちと同じような、白やピンクの可愛らしいランジェリーが欲しいのに、大きいサイズのランジェリーには、大きな花の刺繍がデフォルト。下着悩みの話題は、お客様交流会での『胸が大きな女性あるある』鉄板ネタです」(和田さん)

胸の大きな女性たちは、自分に合う服や下着がないことそのものはもちろん、疎外感やファッションそのものを楽しむ資格がないという、生きづらさを感じていたのですね。

女性起業家には、女性ならではの「悩み」がある

女性が起業する際の不安について
女性が起業する際の不安について

そのほか、和田さん自身が「女が生きづらい」と感じることについて尋ねてみると、「女性起業家としての生きづらさもあります」との返答が。どういうことでしょうか?

■1:全世界に自宅住所が公開されてしまう

「法人を設立すると、会社代表者の住所は定款に記載されます。つまり、法務局で登記簿謄本を取得すれば、誰でも住所を知ることができるのです。男性でも同様ですが、女性としては、特にひとり暮らしや家庭がある方にとっては、不安だと思います」

■2:結婚後の「姓」の名義変更が煩雑

名義変更への不安
名義変更への不安

「私は昨年の年末に“いざ婚活!”と一念発起し、あるマッチングアプリを使っていました。その際にミスマッチはお互いに不幸になると思い、『結婚後のご相談事項』をプロフィールに記載しました。そのひとつが『夫婦別姓希望』。ただでさえ結婚時の名義変更は大変だと聞くのに、金融機関をはじめ、法務局、税務署、労基…代表者として登録してあるすべての名義変更は、想像するだけでも気が遠くなります。

『まあ、そのうち法律が変わるはず』とたかをくくっていたものの、先の3月に『夫婦同姓は合憲』という地裁判決が出てしまい、暗雲立ち込める今日このごろです…。まだ予定はないんですけどね(笑)」

とはいえ、女性起業家は、かえって生きやすい面もあるといいます。

「女性であることで、年齢を問わず創業支援の融資制度が使えたり、国や東京都のサポートが受けられたりするのは、本当に感謝。会社員をしていたころのほうが私には生きづらかったので、むしろ起業は生きづらさへの一策かもしれません」

和田さんがいま計画中の事業は?

これから計画している新たな事業とは?
これから計画している新たな事業とは?

「overE」のほかに、現在計画している事業や分野などはあるのでしょうか?

「年内に始動したいのは、女性・ファミリー向け自動販売機の事業です。ソフト面でもハード面でも『女性の生きづらさ』を解消するさまざまな提案ができるのではと考えています。もちろん、overEでも感度の高い方にも喜んでいただけるアイテムの企画など、チャレンジを続けていきます!」

自動販売機の中身が気になるところですが、まだ内緒だそうなので、ぜひ楽しみにしていましょう!

和田さんの戦いは、まだまだ始まったばかり! 女性の生きづらさを解決してくれる新たな試み、期待したいですね。

和田真由子さん
株式会社エスティーム代表、overEディレクター
山形県出身。胸が大きな女性に光を当てたアパレルブランド「overE」をリリースするとメディア・SNSで話題に。現在は銀座にサロンを構えるほか、全国の商業施設でポップアップショップショップを開催。公式サイト
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
石原亜香利
EDIT :
安念美和子