香港のミシュラン2つ星のレストラン「アンバー(AMBER)」のフレッシュランチには、シェフが仕掛ける秘密のイベントが!

香港の最上級ラグジュアリーホテル「ザ ランドマーク マンダリン オリエンタル 香港」。香港の中心部にある商業施設「ランドマーク・ビル」に入っている、このアジアトップクラスのホテルのメインダイニングが、世界的に著名なシェフ、リチャード・エッケバス氏が率いるフレンチレストラン「アンバー(AMBER)」です。

香港のミシュランの星を長年獲得し続けているだけでなく、「アジアのベストレストラン50」でも上位にランクインし続けるなど、香港にとどまらず、こちらもアジアを代表するフレンチ・レストランとして、グルメな人々に広くその存在を知られています。

2019年5月には、その内装をリニューアル。どのような雰囲気に変わり、またいただけるお料理もどのように変貌したのか? 潜入取材をしてきました!

アンバーの店内の様子

自然光がたっぷり入る特別なロケーションは、香港の南に位置する香港島の中心、中環(Central)と呼ばれるエリア。眼下には香港の街が広がっています。

アンバーのテーブルの様子

デザインしたのは、ニューヨークを拠点に世界中で多くのレストランを手掛けている、デザイナーのアダム・テハニー氏。サステナビリティを重視するこのホテル、そしてレストランの精神にのっとり、旧「アンバー」で使われていた家具もデザインし直し、再利用されています。

リチャード・エッケバス氏が手掛けるフランス料理は、世界各地から取り寄せた食材の、素材そのものが持つ味わいを活かすスタイル

前菜はワゴンで運ばれてきて、テーブルで仕上げ。ピンクのものは、桜を塩漬けして乾燥させたもの

シェフのリチャード・エッケバス氏が手掛けるフランス料理は、素材そのものが持つ五味をいかした近年のフランス料理のトレンドを踏襲。砂糖や塩は極力使わず、世界各地から取り寄せた食材を吟味し、素材が持つ本来の味わいを活かした調理法で、軽やかにいただくスタイル。

ウッドボードやシンプルな陶磁器などで提示される、新感覚のフランス料理の世界は、驚きの連続です。

発酵させた自家製絹豆腐と塩、アメーラトマト、桜

夏のコースでは、日本から空輸されたアメーラトマトを使うなど、シェフの知見で旬の野菜がそろえられていました。

沖縄産コーン、海水、スダチ 、クリスタル シュレンキ キャビア

コースの間に秘密のイベント! キッチンでいただく1品も

キッチンにいるリチャード・エッケバス氏

こちらのレストランについて、まだあまり知られていないのが、食事の合間に特別なイベントがあること。2皿いただいたところで、シェフのアトリエであるキッチンに招かれます。

シェフが目の前で仕上げる様子を、"かぶりつきで"見られるとは。

ハイクラスのレストランの厨房となると、充実した設備とたっぷりとした空間。そして、時間との戦いの厳しい空気を想像していました。

しかし、アンバーのそれは、とてもハートウォーミングなおもてなしの空間。客席と壁1枚隔てていても、同じく美しくデザインされていました。

フレンチレストランのキッチンでスタンディング体験!

そして、そこに作られたカウンターで3品目をいただくことになるのです。一流フレンチの、キッチンで、立った状態で、ですよ!

カトラリー類は、キッチンのテーブルの引き出しの中に

キッチン内は撮影OK。自分たちがいただく次の料理をシェフたちが準備する様子をチェックできるのです。

筆者が訪れたときは、カップルがセルフィーを撮影していました。コースでいただくフランス料理=堅苦しいなんてイメージはここにはありません。

キッチンでの一品。洋ナシ、イカ、ラルド、わかめ

広報担当のグラディス・ヤン氏によると、リニューアル前からたくさんのゲストに「キッチンを見学したい」との声が多かったそうです。

しかし、以前の状態ではスペースがなく、長い時間見学してもらうことは難しいものでした。アンバーのようなレストランで、どのように調理が進むのかを食事をしながら見ていただくことで、理解を深めることができると考えているそうです。

「テーブルに2時間半座っているのは、なかなか大変なことですよね。キッチンでの体験をすることで、席に戻ったときにまた新しい会話の種ができるのです」(グラディス氏)

 コースのメイン料理も、伝統的なフレンチとは異なるシックなアプローチ

A5ランクの和牛サーロインステーキ、ベビーロメインレタス、玉ねぎ、アンチョビ、タマリンド

伝統と格式あるフランス料理とはまた異なるアプローチは、メインでも見られました。和牛、アンチョビを包み込んだロメインレタス、ソースが縦に配された様子は、まるで寺院の石庭のような美しさ。

食後のコーヒー

食後のコーヒーの提供も、少し趣が異なります。

絶品すぎるマドレーヌ

筆者の人生で、これまでにいただいたマドレーヌの中で一番おいしかったと思えたマドレーヌ。ぜひ、持ち帰り用を販売してほしいものです!

ビターチョコレート、スモーキー バーボンバレル ミクターズ、そばの実

一皿一皿、旧来のフランス料理が提示してきた重厚さではなく、軽やかだけど決してカジュアルではないスタイルで旬の味を選び取り、重ね合わせる。シンプルなもので極上のおいしさを引き出す、現代のスタイルに即したフランス料理です。

今回ご紹介したコースについて、シェフのリチャード氏は「私の考えは"Less is More"。シンプルでありながら高いレベルのクォリティを実現することで、料理の本質に立ち返り、私の料理の美しさを表現したい」と考えているそうです。


和食で見慣れた食材が多く使われているので、日本人的に見ると、せっかく香港に来ているのに「日本の食材が多いな…」と感じる方もいるかもしれません。逆に考えると、それだけ日本には魅力的な食材があり、素材が持つ味の力を求めるシェフに認められている、ということでしょう。

香港で一級のフランス料理という体験、訪問先の候補として、覚えておいていただけたら幸いです。

アンバーのランチ「FULL AMBER EXPRIENCEコース」概要

会場/ザ・ランドマーク マンダリン オリエンタル香港
ランチタイム/12:00~14:00
料金/1,400HKドル(5品)
住所/15 Queen's Road Central, Central, 香港

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この記事の執筆者
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WRITING :
北本 祐子