焼き物の街として、今もその名をはせている、岐阜県多治見市。中でも年に一度、4月に行われる「たじみ陶器まつり」は、伝統的なものから現代作家のものまで、あらゆる陶器がお値打ち価格で購入できるとあって、大賑わいを見せています。

唯一無二の存在「モザイクタイルミュージアム」

一度見たら忘れない、不思議な外観にワクワクするモザイクタイルミュージアム
一度見たら忘れない、不思議な外観にワクワクするモザイクタイルミュージアム

多治見市では、焼き物といっても陶器だけでなく、大正時代からタイル産業も盛んに行われてきました。

今回ご紹介する、国内にも類を見ない、モザイクタイルに特化した「多治見市モザイクタイルミュージアム」は、多治見駅から東鉄バスで20分ほど。

開けた土地に突如出現する、不思議な形の建物、それが多治見市モザイクタイルミュージアムです。

外壁に埋め込まれた、さまざまな陶器の破片。
外壁に埋め込まれた、さまざまな陶器の破片。

タイル産業が盛んだった多治見市において、1995年ごろから地元の有志たちが、モザイクタイルの収集を開始。約20年をかけて、貴重なコレクションへと成長しました。

この意義に共感し、設計依頼を引き受けたのが、建築と自然との融和をテーマに、国際的な評価を得ている建築家・藤森照信さんです。

細部にもタイルがあしらわれています。こちらは階段の手すり
細部にもタイルがあしらわれています。こちらは階段の手すり

タイルの原料を掘り出す粘土山を思わせる外観は、圧倒的な存在感を放ちながらも、決して周りの風景から悪目立ちすることはありません。その不思議なたたずまいに、入る前からワクワクする気持ちをかきたてられる、この建物の内側を、いざ見てみましょう。

圧巻のタイルアートにときめく4階からスタート!

窯をイメージしたトリックのある階段
窯をイメージしたトリックのある階段

受付を通ると、まずは4階に上がる階段へ。とても遠く見えるこの階段、手前は幅を広く、奥は狭く作ってあるので、実際より遠く見える不思議なつくり。

のぼり窯や坑道を思わせるこの階段は、上から差し込む光が、行く方向を導いてくれます。

焼き物ならではのタイルの色味をいかした、素敵なタイルアートの数々
焼き物ならではのタイルの色味をいかした、素敵なタイルアートの数々

4階の展示室は、藤森さんがセレクトしたモザイクタイルの数々が、ぎっしり展示されています。

筆者のお気に入りはこちら。かつて、銭湯の湯船の内側で泳いでいた魚たち
筆者のお気に入りはこちら。かつて、銭湯の湯船の内側で泳いでいた魚たち
見れば見るほど引き込まれるモザイクタイルの魅力にあふれています
見れば見るほど引き込まれるモザイクタイルの魅力にあふれています

飾られたモザイクタイルは、ほとんどが実際にどこかで使われていたもので、アートといって差し支えがないものばかり。並べ方で魅せるもの、タイルそのものの形状で魅せるもの、描かれた絵で魅せるもの…モザイクタイルのもつ表現の幅広さに、改めて気づかされます。

自然光を受けた輝きが美しいタイルのカーテン
自然光を受けた輝きが美しいタイルのカーテン

天井に空いた穴から広がるモニュメントは、「タイルのカーテン」と呼ばれているのだそう。インスタ映えスポットとして、観光客からも人気の場所だとか。

モザイクタイルの歴史が整理された展示
モザイクタイルの歴史が整理された展示

3階に降りると、タイルの製造工程と歴史を展示したコーナーに。かつてのタイル産業で使われていた型や機械など、貴重なものが数多くみられます。

今見てもスタイリッシュな、かつて作られていたモザイクタイルの数々
今見てもスタイリッシュな、かつて作られていたモザイクタイルの数々

懐かしさと、今改めて新鮮さを放つ、モザイクタイルの持つ味わいを、じっくり感じることができます。

モザイクタイルを並べる、さまざまな柄の貼り板がずらり
モザイクタイルを並べる、さまざまな柄の貼り板がずらり

インテリアに多く使われていたモザイクタイルは、職人が現場で並べるのではなく、事前に貼り板に並べて、紙貼りやネット貼りにする仕事をする人たちがいるのだそう。だからきっちりと、同じ模様を描くことができるんですね。

現代の生活にモダンな華を添えるモザイクタイル

実際にやってみたくなる、魅力的なモザイクタイルを取り入れたインテリア例
実際にやってみたくなる、魅力的なモザイクタイルを取り入れたインテリア例

2階は、モザイクタイルを、今のインテリアにどう素敵に取り入れることができるのか? さまざまなテイストや用途で、サンプルスペースが作られていました。

今のトレンドを取り入れた、シャープなデザインのタイルもたくさん
今のトレンドを取り入れた、シャープなデザインのタイルもたくさん

壁や床の一部がタイルになると、こんなにも洗練された、オリジナリティのある空間がつくれるんだ!と、気持ちが高ぶります。特に、フォームや模様変えを予定している方は、心が揺らぐこと間違いなし!

手軽にタイルを取り入れることができる、シート状になったモザイクタイルを、その場で購入することも可能です。

シート状になったモザイクタイルは、購入可能
シート状になったモザイクタイルは、購入可能

お土産に買って帰りたい!タイルやタイル雑貨の販売コーナー

特に女性に喜ばれそうな、愛らしい雑貨がたくさん
特に女性に喜ばれそうな、愛らしい雑貨がたくさん

そして1階に降りると、タイルそのものや、タイルを使ったさまざまな雑貨を販売するコーナーが。

何に使おうか迷ってしまいそうな、タイルばら売りコーナー
何に使おうか迷ってしまいそうな、タイルばら売りコーナー

ハンドメイドやDIYに興味がある方は、あまりの愛らしいタイルの数々に、思わず手が伸びてしまいそう。不器用で、あまり手作りはしない筆者ですが、ついついタイルがあしらわれたピアスを、自分用のお土産に購入。ほんのりかわいらしい、タイル使いのピアスは、お気に入りの旅の記念アイテムになりました。

とてもお気に入りなので自慢してみました
とてもお気に入りなので自慢してみました

職人技が冴えわたる、魅力的なモザイクタイルの数々、その成り立ち、そして現代の生活でもオリジナリティを放つ、インテリアとしてのタイル展示、実際に手に入れることができるタイル販売…と、順を追うことで、モザイクタイルの奥深さに気づかされる、よく考えられた展示構成に、感心することしきり。

かつてタイル産業が栄え、その歴史を未来に繋げていきたいという、人々の長年の努力と想いが形になった、多治見だからこそ実現することができたモザイクタイルミュージアム。

岐阜県を訪れた際には、ぜひ足を伸ばしていただきたい場所に出会いました。

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EDIT&WRITING :
安念美和子