いつもの街の景色がステキに変わる! 猪飼尚司の街ぶら、アート散歩

猪飼尚司さん
編集者
(いかい ひさし)大学でジャーナリズムを専攻後に渡仏し、1996年に帰国。現在はデザイン、アート、建築を中心に活動。インテリアスタイリスト・作原文子らとの新著『Tools 2019』(オークラ出版)が好評発売中。

駅前から人口400人の村まで。日本を代表する建築家たちの力作を富山で一気見!

世界最大級の演劇の祭典「シアター・オリンピックス」の取材で、北陸新幹線で富山入り。待ち合わせまでにちょっと時間があったので、少し富山市内を散策してみました。

駅前ロータリーのデザインに感動する「JR富山駅」

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現在の富山駅周辺の景観デザインが完成したのは2015年。同年の日本サインデザイン賞優秀賞は、インフォグラフィックス(情報やデータを視覚的に表現したもの)を担当した島津勝弘に授与されたほか、2017年には計画全体がグッドデザイン賞を受賞している。

JR富山駅を出てすぐ、改札から市電やバスにスムーズにアクセスできる駅前ロータリーのデザインは感動モノです。公共交通機関を軸としたコンパクトな街づくりを目指す富山市と建築家の内藤 廣(ひろし)氏が中心となり、パシフィック・コンサルタント、GKデザイン、浦建築研究所など、複数の建築&デザイン事務所が力を合わせて完成へと導いたもの。

初めて訪れた人でも迷いなく、スムーズに移動できるように、各交通機関の駅舎からサイン計画まで、細かな工夫が各所に施されていました。

富山市立図書館&富山ガラス美術館が入る複合文化施設「TOYAMAキラリ」

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天窓から吹き抜けを通して斜めに降りてくる外光が、スギの板材と重なり、まるで木立のなかにいるような気分に浸ることができる。
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細い金属パイプを用いた館内表示やサインは、ネオンの看板を彷ほう彿ふつとさせる。

そして、駅前でレンタサイクルを借りて、「TOYAMAキラリ」へ。富山市立図書館と富山ガラス美術館が入るこの複合文化施設の設計を担当したのは、隈 研吾氏。2階から6階までが吹き抜けという大空間に、県産の杉を使ったルーバー(細長い板を隙間を開けて平行に並べて組んだもの)を多様な角度で設置。

エレベーターで移動すると景色が動いているように見えるのがおもしろく、思わず上下階を何度も往復。

シアター・オリンピックスの会場となる利賀

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「シアター・オリンピックス」の開催は今年のみ。通年は毎夏に「SCOTサマーシーズン」が行われている。

そして、いよいよシアター・オリンピックスの会場となる利賀(とが)に到着。この地は世界的に知られる演出家、鈴木忠志が40年以上活動の拠点にしている場所で、設備も本格的。

古い合掌造りを改造した3つの舞台に加え、建築家の磯崎 新が設計した野外劇場は、周囲の山々、石の彫刻が浮かぶ池と現代的な設計の舞台とのコントラストが圧巻です。

人口わずか400人の土地に、世界の演劇ファンが2万人以上集まるといわれる、大自然のなかで繰り広げられる演劇祭の開催にも注目です。

※本記事は2019年9月7日時点での情報です。

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EDIT :
剣持亜弥・宮田典子(HATSU)、喜多容子(Precious)