今、「畑」と直結したレストランが話題になっています。その土地の新鮮な食材に精通し、それを心から愛する料理人と、彼らが手がける究極のひと皿。土地の魅力が詰まった逸品に出合うべく、訪れてみる価値のあるレストランをご案内します。

延岡ならではの食材との対話、生産者との密な交流から生まれる独創的なひと皿は驚きの連続。遠方でも訪れたい延岡イタリアン「チェルカ・トローヴァ」(宮崎県・延岡)

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レストランの外観と内観
横山恵春シェフ
(よこやま よしはる)宮崎県延岡市生まれ。調理師学校を卒業後、18歳で上京。東京のイタリア料理店「リストランテ山﨑」などで研鑽を積み、延岡に帰郷。1996年、28歳で「トラットリア エンツォ」を開店。2016年、20年の節目に「チェルカ・トローヴァ」として新たに。

思い描いた料理を納得いくまで追求できるのは、個性的な生産者がいるからこそ

イタリア語で「探し、見い出せ」を意味する「チェルカ・トローヴァ」。こちらには、メニューと呼ばれるものは存在しません。庭に繁る木々や、店内の心地よい音楽、キッチンから漏れ出す料理音や香り。この店のすべてを、料理とともに五感で楽しんでほしいというシェフの想いが、店名にも込められています。

「東京から地元に戻ってすぐのころは、海外からも食材を輸入していました。でも、朝早くから『今日はこんなのがあるけど、どう?』と、その日いちばんの食材を届けてくれる方、育てた野菜がどんな料理になるのかを楽しみに、店に通ってくださる方。

個性豊かで、真剣に食材と向き合う延岡の生産者の方と意見を交換するなかで、故郷の食材の魅力や奥深さを知りました。20数年たった今でも、新たな発見の連続です」

子どものころ、海や川で釣った魚や山に入って採ったキノコ、かじった肉桂(ニッケイ)、畑の野菜たち。慣れ親しんだ食材こそ、自分の料理の原点。そう気づいてから「キッチン、畑、山、川。どこにいても食材と一緒。寝ても覚めても食材と料理のことばかり考えています(笑)」とシェフ。

「先日も『雨が降った後の肉桂は、香りも味も違うから』と、掘ったばかりの肉桂の根を届けてくれて。さっそくソースに使いました。まだまだ延岡の食材を追求していきたいです」

料理人と交流しながらつくる、イタリアなす「パープルクララ」

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なすとうなぎを香り豊かな肉桂のソースで。

珍しい野菜を数多く手がける柳田秀樹(やなぎたひでき)さんの「パープルクララ」。外皮に白いストライプが入った、鮮やかな紫色の小型なすは、大瀬川でとれた天然青うなぎの炭火焼と一緒に。掘りたての香り豊かな肉桂に焦がし蜂蜜、フランボワーズビネガーを効かせた甘ずっぱいソースでいただく。

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横山シェフと柳田秀樹さん
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パープルクララはとろりとクリーミー。

旬の栗と松茸、すっぽん。深まる秋を丸ごと味わうひと皿

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「栗と天然すっぽんのリゾット」

秋のコースより「栗と天然すっぽんのリゾット」。宮崎県北部にある日之影町(ひのかげちょう)は、品質日本一といわれる栗の生産地。中山 悟(なかやま さとる)さんが手がける栗は、粒が大きく、さっぱりとした甘さが特徴。すっぽんのコンソメで炊いたリゾットと、香り高い松茸との相性は抜群。滋味深い一品。

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大きく艶やかほっくほくの栗!

生産者の紹介をたどり出会えた新たな生産者。これぞ自分好みのトマト

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トマトのジュレに赤ピーマンの濃厚なムースと、北浦のアカザエビのグリルを合わせて。

「栗のほかにも中山さんがつくる完全有機栽培のトマトは味が濃く、酸味のバランスが絶妙でジュレに最適。この日は、畑に行ったらトマトの花が咲いていたので、摘んで飾りにしました」。

赤ピーマンの濃厚なムースと、北浦のアカザエビのグリルに合わせて。真っ白な皿に鮮やかなオレンジが美しい。紫、グリーンの皿ともに、使われている器はすべて人気陶芸家・吉村和美(よしむらかずみ)さんの作品。

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中山 悟さんと横山シェフ
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糖度の高いトマトはジュレに。

問い合わせ先

  • チェルカ・トローヴァ
  • 営業時間/19:00~(ラストオーダーは特になし) 日曜休み
  • コース/ディナーコース¥10,000・¥15,000(税別・サービス料なし)※要予約
  • TEL:0982-33-0169
  • 住所/宮崎県延岡市博労町4-14

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PHOTO :
平川雄一朗
EDIT :
田中美保、佐藤友貴絵(Precious)
取材 :
大塚 瞳
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