枝野幸男さんといえば、東日本大震災の際に官房長官として不眠不休で事故対応にあたった姿や、劇的な立憲民主党立ち上げなどが印象的ではないでしょうか?

その傍らで夫を支えてきた妻の和子さんが、本を出版されました。タイトルは『枝野家のひみつ 福耳夫人の20年』。

枝野さんとの出会いや結婚、妻の立場から垣間見る政治の舞台裏、双子を授かるまでの不妊治療の紆余曲折、ドタバタだけれど愛にあふれた子育ての様子などなど、「代議士妻のリアルライフ」が、とても率直かつ気さくな文章でつづられていることに、驚かされます。

ここまで書いて大丈夫? と心配になるような本ができあがるまでの裏話や、マナーを大切にしているという日ごろのファッションについてなど、いろいろなお話を直接、伺ってきました。

世間が持つイメージとは違う、「本当の姿」を詰め込んだ一冊

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『枝野家のひみつ 福耳夫人の20年』(光文社)¥1,600(税抜き)

暴露されて困ることは何もないからと、ほぼノーチェックで出版に

Precious.jp編集部(以下同)――友人から「本を書いてみたら?」とすすめられたのがきっかけだそうですね?

世間から見た枝野(幸男さん)の姿と、私が語るふだんの様子にギャップがあるそうで、面白いと感じていたそうです。私自身、そういう人間らしい部分を知ってもらいたいな、という気持ちもあったので、子どもが中学生になったタイミングでやってみようかなと。

──最初に「本を書く」ということを伝えたときの、ご主人の反応は?

別になんとも(笑)。と言いますか、それが現実的なことなのかどうかピンときていなかったみたいですね。ですから、「ふーん」というリアクションでした。

枝野はこれまで私の“作文”を見ることもなかったので、「この人、本当にできるの?」といった気持ちはあったようなんですけど、書き上がったものを読んで「ああ、けっこう作文うまいんだね」みたいなことを言われましたね。

出版されてからは、「番記者がみんな買ってくれてるよ」とか、「わりと面白いって話題になっているよ」と、枝野のほうからツイッターなどを見せてくれます。

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枝野和子さん

 ──どんなことを書かれてしまうのか、という心配はされなかったのでしょうか?

「暴露本かも。ふふふ」と言ったら、「え!?」と少し驚いてはいました。でも、枝野本人にも家庭にも、暴露されて困ることは特にないですから。

ふだんから、つまらないことには目クジラを立てないというタイプなので、「やりたいことならやれば?」というスタンスなんですよね。

私としては、昔から作文が好きだったとはいえ、自分が書いたものが世に出ることになるとは、思いもよらないことでしたから、気が引ける部分もなくはなかったんですが…。

枝野も私の文章を読みながら「面白い」と笑ってくれたので、がんばってよかったなと、今は思っています。

期待以上の協力に驚かされた、家族の「宣伝活動」

──政治に関わる部分のエピソードについても、相談はせずに?

本ができあがる前に原稿をチェックしてもらったのですが、正式名称の修正や、名前を伏せたほうがいいのでは? というアドバイスがあったくらいで。

内容については、まったくと言っていいほど訂正はなかったですね。事実ではあるし、彼のよさが伝わると感じた部分もあったんでしょうね。

今は、永田町で記者の方々に「手前みそだけど、これ面白いからさ」とPRしているらしくて。私がふだん「内助の功」と言われるようなことをしているので、たまには反対もいいよね、みたいな感じでやってくれているようです。ありがたいですね。

子どもたちも、自発的に宣伝活動をしてくれています。自分についてのエピソードが書かれているページをみんなに見せたりして、楽しんでいるようです。「●●くんと●●くんは、買ってくれたよ」とか、「●●くんのお母さんは号泣したって言ってたよ」と報告してくれるんです。

先日はママ友から、次男が同じ学年の全クラスの黒板に「お母さんの本、光文社『枝野家のひみつ』が出てます。よろしく」と書いて回ったのだと聞きました。先生に怒られなかったか心配しましたが、大丈夫だったそうです(笑)

政治家の妻としての覚悟があったから、動じなかった「あの時」のこと

──本には、東日本大震災のときの様子も詳しく書かれています。妻という近い立場でありながらも、和子さんの情報量やそれを得るスピードは、私たちとあまり変わらないという点が意外でした。

あのときはほとんど連絡もなくて、テレビで「ああ、今日も元気でよかった」と生存確認していました。でも、私はテレビを通じて様子がわかるのですから、恵まれているとも言えます。

それに、政治家という仕事をしている時点で、こういう事態になることにも覚悟はあったので。それよりも、枝野のまわりで働いているスタッフのことが心配でした。

枝野がいる官邸には食事をつくる人がいるので、議員さんたちは温かい料理が食べられます。でも、その下で働いているスタッフはみんなコンビニのパンやおにぎりだけで、不眠不休で仕事をしている。

それを枝野の秘書をしている義妹から聞いて、これはもうどこかで温かいものを買っていってあげなくては!と。差し入れに行ったときに出てきたSPさんが、見るからにやせているのを目にして、「何かできることを」とますます思ったのを覚えていますね。

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枝野和子さん

──枝野さんが立憲民主党を立ち上げたときの心境は? 

枝野の支持者さんたちは、枝野個人を応援してくれていると、常々感じていました。どこの党に移籍しても、無所属になっても応援するよ、と言ってくださる人ばかりなので、もしかしたらいつか無所属で出ることもあるだろうな、という覚悟がもともとあったんですね。だから、本にも書いたとおり「出てもいいよ」と伝えました。

当時の枝野は、夜12時くらいに帰ってきて、朝6時に出かけるという感じの生活でしたから、言葉を交わすのはごく短い時間でした。

そんな中で、朝さらっと「もしかして無所属で出るかも」とか、「もしかして党をつくるかも」と言っていたと思ったら、夕方にはもうテレビなどで話題になっていて。本当に目まぐるしかったですね。

ONのファッションは、シンプル&ベーシックが鉄則

──選挙活動のサポートなどで人と会う機会が多いと思います。そんな際のファッション選びで気をつけていることはありますか?

いちばん大切にしているのは、相手にいやな思いをさせない格好ですね。たとえば、ブランドがわかるようなデザインだったり、ゴージャスな印象の服だと、「この人は私よりも高いものを着ている」と思わせてしまうこともあります。

なので、シンプルかつベーシックで、マナーに則した格好というのを心がけています。黒、ネイビー、白、ベージュ、グレーといった、主張のない色のスーツをベースに、中はシャツやニットというスタイルが多いですね。

支持者の方のお宅に個別訪問で伺う際や選挙活動中など、自分で車を運転して移動する場合にはパンツスーツを選びます。体型的にスカートだとタイトシルエットが合うのですが、車を乗り降りするときに窮屈なだけでなく、注意しないとスリットが裂けてしまいますから。

──ジュエリーや時計は?

金属アレルギーなので、指輪以外は極力身につけないようにしています。華やかに装うべき場というのもあるのですが、フォーマルな席ではいつも和装なのでジュエリーがなくても大丈夫です。

日常のファッションで顔まわりがさびしいなと思ったときには、ストールやマフラーを活用しています。お気に入りはファリエロ・サルティです。冬になるとジョンストンズのマフラーもしていますね。

どなたかにお会いするときにはすぐに外せるので、たとえばピンクとか目立つ色をベーシックカラーの差し色にして楽しんでいます。

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枝野和子さん

──立っている時間も多いと思いますが、靴選びはどうしていますか? 

たとえば枝野が選挙演説する隣に立つ場合などは、ファビオ・ルスコーニの太い6センチヒールを好んで履いています。あとはユナイテッド・アローズの木型も合うので、こちらもやはり太めのヒールでポインテッドトウのものがお気に入りです。

太いチャンキーヒールはトレンドでもありますが、50歳を過ぎて前すべりするパンプスは指が痛くなってしまうようになったので、しっかりと安定感のあるヒールだとトウが細くても大丈夫なので、うれしいですね。

──今日のファッションについて教えてください。

シャツとスカートはファビアナ フィリッピです。ふだんからシャツはよく着ているのですが、このシャツは襟もとにシルバーのデコレーションがあしらってあるので、ジュエリーなしでもさりげなく華やかな雰囲気になるのが素敵ですよね。

スカートは、縦長のシルエットに見えるロングタイトを選びました。パンプスはデザインが気に入っているペリーコです。実は色違いで3足持っているのですが、長時間立ったり歩いたりしないときには、これを履くことが多いですね。

マルコ・マッシのバッグは、一枚革で軽く、ものがたくさん入るのがお気に入りポイントです。ただ、シルバーはちょっと夏っぽいので、今はハラコのタイプが気になっています。

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マルコ・マッシのバッグと、ペリーコのパンプス

 ──シャツが好きな理由は何ですか?

肩幅がしっかりしている体型だから着こなしやすいというのが大きいですね。白シャツはもちろん、ネイビー、黒、ベージュなどいろいろ持っています。

あとは支持者さんのお宅に伺う個別訪問でも、シャツならジャケットなしでも許されるかなというのもありますし。オフの日にはデニムなど、カジュアルなボトムと合わせて着ています。

流行に左右されず、「間違いのない」和装の魅力

──フォーマルな席に和装を選ぶ理由は?

間違いがないというのが大きいですね。たとえば皇室の行事は洋装に対してのドレスコードが厳密で、デイドレスでもひざ上丈ははばかられるものですし、色も黒と紫はNGです。手袋を着用しなければならない場合もあります。

それに、ドレスだとやっぱり流行もありますから、何かあるたびにドレスを新調するというのは大変です。その点、和装なら季節ごとに着物と帯を持っていれば、ちゃんとして見えるし、失礼にもなりません。

結婚する前にはまったくと言っていいほど興味がなかった和装ですが、今では10枚以上の着物を持っています。着物屋さんがセールになるたびに、ついつい買い足してしまって(笑)。

最近、私が懇意にしている着物屋さんが、和刺繍の職人さんの継ぎ手がいないということから、銀座のお店をたたんで京都の本店だけになってしまったので、残念です。

そんなこともあって、自分が着物を持っていることで日本文化を残すことに貢献できるのかなと、機会があれば積極的に和装にしているというのもあります。

──メイクのこだわりポイントはありますか?

眉ですね。眉の形には流行り廃りがあるので、古い顔にならないためにちゃんとアップデートしていかなくてはと、いつも気にしています。令和の眉は太めですね。もし無人島に何かひとつ持っていくとしたら、アイブロウペンシルを選ぶかもしれません(笑)。

やっと落ち着いて考えられるようになった、「家」のこと

──本には、「落選するとすぐに議員宿舎を出なければならない」というお話がありましたが、インテリアはどうされていますか?

議員宿舎はどの部屋も間取りが同じで、家具も備え付けなんです。本にも書いたように、引っ越したてのころは選挙のたびにすぐに引っ越しできるようにと断捨離していたほどなので、インテリアにこだわることは考えもしていませんでした。

そして、子どもが産まれてから最近までは、そんな余裕もなかったというのが正直なところです。なにしろやんちゃな男の子2人ですから、あちこち壊れてしまったりもしていて……。やっと中学生になったので、メンテナンスも兼ねて、そろそろ変えたいなと思っているところです。

フローリングが少しオレンジがかった色合いなので、合わせる家具の色が難しいなと悩んでいるのですが……。もしかしたらミッドセンチュリー風が合うのかな、なんて思っています。これからの課題であり、楽しみですね。

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枝野和子さん

あとは、まだまだ先の話にはなると思いますが、いつか宿舎から引っ越して犬を飼いたいと思っています。子犬ではなく、大人の保護犬と一緒に歳をとっていくのが夢で。

 でも、枝野は犬が大の苦手なんですけどね。以前、犬がたくさんいる支持者さんのお宅に伺ったときには、もはや直立不動(笑) 

どうやら、子どものころに犬にかまれた経験があるんだそうです。あまり詳細は聞いていないのですが、私が思うに、運動神経が鈍くて逃げきれなかったんじゃないかなと。

終始、朗らかにお話してくださった枝野和子さん。「代議士の妻といっても、私も含めてみなさん“ふつう”の人間。ときに悩んだりもしながら、どたばたと楽しく生活していることを知ってもらえたら嬉しい」という思いが、言葉の端々から伝わってきました。

議員の家族の生活や、枝野幸男さんの意外な素顔、政治家の妻としての覚悟など、私たちがなかなか知ることのできない話が満載の本書、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか?

枝野和子さん
『枝野家のひみつ 福耳夫人の20年』著者
(えだの かずこ)1968年、東京生まれ。さいたま市(旧大宮市)育ち。女子聖学院高校、成蹊大学を経て、日本航空客室乗務員として勤務。1999年に枝野幸男議員と結婚。不妊治療を経て2006年に双子男児を出産。趣味は旅行、読書、映画鑑賞。

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PHOTO :
齋藤暁経
EDIT&WRITING :
谷 花生