「自由奔放な美女マノンに魅入られ、翻弄される青年デ・グリュー! 教会の中でも男を口説く究極の小悪魔マノンがもたらす悲劇を、めくるめく音楽で紡いだフランス・オペラの傑作!(中略)華やかでありながら退廃的なL・ペリーの名演出、ゴージャスな衣装の数々もお見逃しなく。」

 METライブビューイング日本公式ホームページをのぞくと、ドキッとするようなコピーで紹介されているのが、11月29日から日本全国の映画館(19館)で観ることができる『マノン』だ。

©️Marty Sohl /Metropolitan Opera
©️Marty Sohl /Metropolitan Opera

 19世紀のパリと言えばミラノやウィーンを凌ぐオペラ王国の首都。そんな19世紀のパリで大ヒットしたのが、マスネの『マノン』(1884年初演)だ。 原作はアベ・プレヴォーの長編小説「騎士デ・グリューとマノン・レスコーの物語」で、魔性の美少女マノンと駆け落ちした騎士デ・グリューの回想による恋愛物語。名作オペラのひとつとして、世界中の歌劇場で上演され続けている。

 今回、METライブビューイングに登場するのは、フランス・オペラをレパートリーの中心に世界的に活躍しているロラン・ペリーによる演出。2012年のMET初演以来好評を博してきたMETの定番演目だ。

幕間のインタビューにも注目!

 ライブビューイングならではのお楽しみは、幕間の特典映像。歌手をはじめとする関係者へのインタビューや舞台裏の様子を観ることができること。2012年上映時の『マノン』では演出家のロラン・ペリーのインタビューも組み込まれた。ロラン・ペリーは、男性のたちの衣装についてこう語っている。

「トップハットをかぶりフロックコートを着た黒づくめの男たちは、とても厳格そうに見えます。フォーマルなドレスを着ている繊細な女性たちは常に男性の存在に左右されています。そこにはいつも危険な匂いがつきまといます」「マスネが作品を手がけたのは19世紀の終わり。当時の男性の視点から見た女たちがこの物語のテーマであり、それが、今回の演出のコンセプト」 と。

ファッション目線で楽しむことができる『マノン』

マノン
©️Marty Sohl /Metropolitan Opera

 紳士服の歴史でいえば、19世紀の後半は現代へと続く紳士服の構成、「上着・ベスト・長ズボン」という基本形が完成した時代。上着はほとんど黒に統一され、昼間のフロックコートと夜の燕尾服の着用が正装として完全に定着したのもこの時代だった。“黒づくめの男たち”の衣装は、マスネが生きたその時代をあらわしたものといえよう。

マノン
©️Marty Sohl /Metropolitan Opera

 マノン役は新世代のライジング・スター、リセット・オロペーサ。彼女を取り巻くのは世界的に注目される共演陣。その豪華さに誰もが感動するにちがいない。加えて、ファッション目線でオペラを観るというコアな楽しみ方もできるのが、総合芸術といわれるオペラの真骨頂。だから、視点を変えて繰り返して観るのもいいだろう。さっそく上映スケジュールをチェックしたい!

METライブビューイング

METライブビューイング2019-20ラインナップ

この記事の執筆者
音楽情報誌や新聞の記事・編集を手がけるプロダクションを経てフリーに。アウトドア雑誌、週刊誌、婦人雑誌、ライフスタイル誌などの記者・インタビュアー・ライター、単行本の編集サポートなどにたずさわる。近年ではレストラン取材やエンターテイメントの情報発信の記事なども担当し、ジャンルを問わないマルチなライターを実践する。
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