スポーツカーのメインストリームたるフェラーリ。ロードカーのネーミングはエンジンに由来するものが多かったが、近年は必ずしもそうではなく(伝統的なキーワードとエンジン由来の数字の合わせ技もあり)、開閉式ハードトップを備える「ポルトフィーノ」は、港町が由来だ。

そのポルトフィーノをベースに開発されたのが、「ローマ」。この都市の名から、メンズプレシャスの読者はきっとスタイリッシュで退廃的、内容もさまざまに解釈できるフェリーニの「甘い生活」が思い浮かぶことだろう。2019年11月、この類い稀な美しいスポーツカーのお披露目の場は、もちろんローマで行われた。現地を訪ねたライフスタイルジャーナリストの小川フミオ氏が、その模様をリポートする。

ローマの豊かで自由な時代をイメージ

記者発表会では3台(3色)がお披露目された。
記者発表会では3台(3色)がお披露目された。
生前のマルチェロ・マストロヤンニはカーマニアとしても知られた。
生前のマルチェロ・マストロヤンニはカーマニアとしても知られた。

英国人は伝統的にスポーツカーづくりがうまい。なによりいいのは、アグレッシブさとエレガンスとのバランスに長けていることだ。ところがフェラーリも負けていない。2019年11月にイタリアで発表会が行われた「ローマ」は、50年代のフェラーリのGTモデルを彷彿させるエレガンスがウリなのだ。

車名のとおり、ジャーナリストを招待しての発表会場はローマ市内。フェラーリは、「カリフォルニア」や「ポルトフィーノ」など地名をネーミングに使ってきたとはいえ、「ローマ」はけっこう大胆な車名といえる。理由は、かつて1950年代から60年代にかけてのローマが持っていた、豊かで自由なイメージを連想してほしいから、だそう。

当時のローマといえば、映画の都チネチッタがあり、フェデリコ・フェリーニやロベルト・ロッセリーニら、多くの映画人が名作を世に送り出していた。そして映画に関係する、プロデューサーや俳優などがローマ市内で遊びまくっていたのだ。フェリーニの「甘い生活」(1960年公開)で描かれているようにベネト通りの「ハリーズバー」などは、セレブリティのたまり場だった。

「フェラーリ・ローマ」はその当時の空気感を、いまふうに表現したのがコンセプトなのだ、と発表会の場で、マーケティングと販売を担当する重役のエンリコ・ガレリア氏は言う。そのためコンセプトは「新しい甘い生活」。実際、発表会の会場では、映画「甘い生活」のマルチェロ・マストロヤンニやアニタ・エグベリ(エグバーグ)の姿が大写しされていた。

ポルトフィーノの単なるクーペ版にあらず

「ローマ」のテーマは「新しい甘い生活」。
「ローマ」のテーマは「新しい甘い生活」。
最高出力は456kW(620CV)@5750−7500rpm、最大トルク は760Nm@3000−5750rpm。
最高出力は456kW(620CV)@5750−7500rpm、最大トルク は760Nm@3000−5750rpm。

「ローマは、50年代のフェラーリのGTカーをイメージしています。もちろん具体的な引用はありませんが、スタイリングではエレガンスをイメージし、ボディのシルエットと各部の処理な流麗さを心がけました」

デザイン統括のフラビオ・マンツォーニ氏が説明してくれた。

全長4656ミリ、全幅1974ミリ、全高1301ミリの「ローマ」は「フェラーリ・ポルトフィーノ」をベースに開発されている。車体サイズはほんのわずか「ローマ」のほうが大きいが、2670ミリのホイールベースは同一。ただし7割がたの部品が新設計で、車重も90キロ軽い。

メカニカルレイアウトは、3855ccV型8気筒ターボエンジンをフロントに置く、後輪駆動だ。出力は「ポルトフィーノ」より20CV(イタリア式馬力標記で”ps”に近い)上がって620CV(456kW)。ツインクラッチの変速機も、7段から8段に。

1CVあたり2.37キロというウェイト・トゥ・パワーレシオは、「セグメントでベスト」とフェラーリでは謳う。フェラーリのGTモデルには初という「サイドスリップコントロール6.0」や、ブレーキによって車体の動きを制御する「フェラーリ・ダイナミックエンハンサー」など、運動性能を高める制御技術が盛り込まれている。

「しかしローマはポルトフィーノのクーペ版ではありません。まったく異なるコンセプトで開発されたモデルです」。前出のガレリア氏は強調する。どこがどう異なるのかは、乗ってみないとわからないかもしれないが、「スポーツカー初心者でも日常使いで楽しめるモデル」とガレリア氏が説明するコンセプトは、たしかに新しい。

独自の世界観をもうひとつ

左右の席が独立したコンセプトを強く打ち出したコクピットで、背後には小さな席が2つある「2+(プラス)」シーター。
左右の席が独立したコンセプトを強く打ち出したコクピットで、背後には小さな席が2つある「2+(プラス)」シーター。
「F1カーがイブニングドレスを着ているイメージ」とスタイリングコンセプトを説明してくれたデザイン統括のマンツォーニ氏。
「F1カーがイブニングドレスを着ているイメージ」とスタイリングコンセプトを説明してくれたデザイン統括のマンツォーニ氏。

フェラーリといえば、大胆なデザインで知られてきた。ハイスピードをはじめとする高い性能を追求するため、F1などで培ったノウハウを次々と採用してきたためでもある。代表的なものは、車体各部の空力付加物。そのためけっこう複雑なデザインである。

フェラーリが80年代以降、大胆なデザインを採用してきた背景には”自信”がある。自分たちこそがホンモノのスポーツカーを作ってきたリーダーであり、フォロワーではけしてないという自負。自分たちがやることがつねに正しい、という揺るぎない信念が、独自の世界観を作りあげてきたのだ。

「ローマ」は、スタイリングは流麗でエレガント。それに、プラグインハイブリッドの「SF90ストラダーレ」ともつながるデジタル技術をふんだんに使ったインテリアの組合せである。新しい世界をもうひとつ作ろうというフェラーリの意気込みが強く感じられる。

価格は「20万ユーロからになるでしょう」とガレリア氏。発売は夏ごろだそうだ。日本では2020年春の発表が予定されている。

発表会のさいフェラーリが仕込んでいた「(新しい)甘い生活」をイメージさせる男女のモデル。
発表会のさいフェラーリが仕込んでいた「(新しい)甘い生活」をイメージさせる男女のモデル。
同時に発表されたエンボスされた鹿皮のレザージャケットは599着のみ作られマラネロのフェラーリストアで受注するという(価格は3500ユーロ)。
同時に発表されたエンボスされた鹿皮のレザージャケットは599着のみ作られマラネロのフェラーリストアで受注するという(価格は3500ユーロ)。

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この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。