関東近郊の田舎の古民家と東京のマンションとで、2拠点生活を送る会社経営者の堀江美希さん。古民家の庭をバラで埋め尽くすべく、さまざまな「バラの育成」に奮闘しています。今回はそのなかでも、壁などに這わせる蔓薔薇(つるバラ)の育て方についての悩みや、解決策をお伝えします。

バラ園のように、いっぱいのバラでお庭の壁を埋め尽そうと!初めてつるバラ栽培を手探りで始めて、3年が経ちました。

去年の5月頃。3年目となる今年の開花が待ち遠しいです♡
去年の5月頃。3年目となる今年の開花が待ち遠しいです♡

1年目の2017年3月、つるバラ栽培を手探りで始め、無事に春には花を咲かせました。しかし冬を迎え「誘因と剪定」が、さっぱり分からず、途方に暮れるはめに。運よくバラのスペシャリストの助けを得ることができ、導かれるままに冬のお手入れを実施。そのおかげで、2年目になると、3倍ほど大きな株に成長を遂げました。

しかし、また2回目の冬を迎えると、バラが立派になった分、前年に習った基本の「誘因と剪定」方法が、通用しなくなる問題が発生!また新たな悩みが出てきてしまいました。今回は、「冬に行う誘因と剪定」について、そこで今回は1回目の冬に学んだ基本と、2回目の冬に新たに学んだ応用について、ご紹介します。

達人から学んだ、つるバラの冬に行うお手入れ方法を参考にしていただければ幸いです。

つるバラを育てる際、初心者が悩みがちなのが「誘引と剪定」

初めてつるバラを庭に地植えをした1年目、その年の冬やらなければならない「つるバラの誘因と剪定」は、わからないことだらけ。このとき、基本を学んだつもりでしたが、また新たな悩みが2年目も出てきてしまいました。

鮮やかな濃いピンクが美しい大輪のバラ、ツル・うらら。
鮮やかな濃いピンクが美しい大輪のバラ、ツル・うらら。

私のバラの先生は、造園業を営む傍らバラに魅せられ、おひとりで250株も育てているSさん。ご近所さんからのリクエストがきっかけで庭を開放し、今では評判のバラ園となりました。地図にも載っていなかったその私設バラ園を偶然発見し、覗いてみたらたまたまご本人がいらっしゃって、バラの育て方を相談したことがきっかけで、それ以来、お世話になっています。

1回目の冬は、Sさんに2日間お越しいただき、7割ほどの株の誘引&剪定をしていただきました。手際よく作業を進めながら、傍らで手伝う私に、コツや疑問にお答えいただき、みっちりバラ栽培のプライベートレッスンをしていただきました。

おかげで2年目は、見事に美しく、立派なバラが咲き乱れました♡ また、3年目もいっぱい咲かせたい! Sさんの作業を間近で見て学んだ経験を活かして、この冬は自分だけで頑張ろうとしたのですが、今度は新たな疑問が…。

ということで、今年もSさんにSOS! 2年めとなるバラの冬お手入れについて、バラの本にも載っていないプロから学んだつるバラ育成のノウハウを、私がSさんに伺った11の疑問に沿って、お届けしたいと思います。

つるバラの誘引&剪定についての11の疑問と解決策

冬の手入れは一番寒い季節に行いますが、ハードな作業で汗だくになります。
冬の手入れは一番寒い季節に行いますが、ハードな作業で汗だくになります。

■疑問1:つるバラの誘引と剪定にふさわしい時季は?

つるバラの誘引と剪定は、木立ち性よりも芽吹くのが早いため、12月から1月の間に行うのが理想。遅くとも2月中旬までに済ませましょう。

■疑問2:寒肥のタイミングは?

寒肥(かんごえ)とは、庭の木々や農作物に、寒い時期に肥料をあげること。春に根が養分を欲するときに、土の中に養分を残しておくことを目的に行われます。つるバラ、木立ち性のバラの場合、両方とも1月中旬~2月上旬のバラが休眠している間に。

■疑問3:寒肥の肥料の配合は?

バラは寒肥を施さなくても、花を咲かすそうです。ただ、美しく・たくさん・立派に! 咲かせたいとなると寒肥が大事。私がスペシャリストから教わった「レシピ」はこちら。

肥料、バラの成長具合に合わせて、調整してくださいね! A:牛ふん堆肥=微生物の活性化のために入れます。土壌をフカフカにしてくれます。スコップ2杯分 B:油かす=茎と葉を育てます。入れすぎると、枝が柔らかく軟弱になったり、病気になりやすくなります。各200g C:骨粉(豚や鶏が主流の、リン酸が補給できる有機肥料≒リン酸)=花を育てます。 D:ようりん=花を育てます(≒リン酸)。マンガン、苦土、カルシウムなどの微量要素が含まれています。 E:硫酸カリ=根を強くしてくれます。20g
肥料、バラの成長具合に合わせて、調整してくださいね! A:牛ふん堆肥=微生物の活性化のために入れます。土壌をフカフカにしてくれます。スコップ2杯分 B:油かす=茎と葉を育てます。入れすぎると、枝が柔らかく軟弱になったり、病気になりやすくなります。各200g C:骨粉(豚や鶏が主流の、リン酸が補給できる有機肥料≒リン酸)=花を育てます。 D:ようりん=花を育てます(≒リン酸)。マンガン、苦土、カルシウムなどの微量要素が含まれています。 E:硫酸カリ=根を強くしてくれます。20g

■疑問4:寒肥のやり方は?

1:株元から30cmほど離れた位置に、直径30cmほど(スコップの頭部分程度)を掘る。
2:Dようりん以外をすべて混ぜ合わせ、穴の底に入れる。
3:掘り出した土を少し穴に戻して、2と馴染ませる。
4:Dのようりんを入れる。
5:掘り出したすべての土を穴に戻す。

ようりんを最後に入れるのは、水で溶けずに、根から分泌される有機酸によって溶ける性質があるためです。穴を掘った時に出てくる、バラの白い根に触れる位置に置くことがポイントです。

また接木された台木により、バラは土中で根張りの方向が異なるそうです。日本のイノバラは横に貼っていき、イングリッシュローズやフレンチローズ(バラの品種名)は根が直下に伸びていくそうなので、ご自身の育て散る株を確かめて、穴を掘る位置や深さは調整してみてくださいね。

■疑問5:つるバラの誘因、枝同士の間隔はどうすればいいの?

「誘引してから、剪定」の順にすることも大事なポイント。せっかく良い向き×良い芽の上で剪定しても、フェンスに括り付けた際、くるっと芽の向きが変ってしまうことなどもあるからです。

次に、メデューサのように方々に生えている枝を見ると、どこに何を配置したらいいのか混乱してしまうのですが、まずは株元を見て、枝がどの地点から、どの向きに生えているのかを見極め、左右どちらに倒すのかを考えてから、固定していく順番を決めましょう。

株元から枝が生えている自然な向きに沿って誘引をします。
株元から枝が生えている自然な向きに沿って誘引をします。

上下に這わせた隣り合う枝は、こぶしひとつ分を目安にあけます。狭いかなと心配したのですが、我が家のフェンスで言うと、ひとつおきくらいでも十分と言われました。

誘引時、間隔をあけ風通しを良くすることで、害虫や病気の被害を抑えます。
誘引時、間隔をあけ風通しを良くすることで、害虫や病気の被害を抑えます。

水平~先端を上に上げるように誘引すると、花付きが良くなります。

■疑問6:フェンスに誘引するときの正しい紐の結び方は?

女性の力でも簡単に、しっかり結べるシュロ縄がおすすめです。
女性の力でも簡単に、しっかり結べるシュロ縄がおすすめです。

フェンスに誘引する際、枝に負担をかけないように、私は8の字に優しく紐をかけていました。しかし、これはNG。しっかりと枝が動かないように固定することが大事。シンプルに、ぎゅっと隙間なく構造物にくくったら、片結びをすればOKでした。

バラ園を手がけるSさん曰く「枝が動いてしまうと、強風の時に株が傷つく原因にもなるので、最悪芽が取れてしまいますよ」とのこと。ついつい、野菜の誘引と同じような意識で行っていましたが、バラは違っていたんですね。

■疑問7:剪定すべき枝はどんな枝?

不要な枝を落としてから、誘引をするのがコツ。
不要な枝を落としてから、誘引をするのがコツ。

まずは、枯れている枝や、先端部の細い箇所を整理します。続いて主枝から伸びた枝を、ちょうどいい太さで選別していくわけですが、バラの大きさによって変えていきます。

例えば、中輪~大輪は鉛筆の太さ以下は剪定、小輪~中輪は割箸~竹串程度の細さを目安に。切る位置は、2芽残したあたりの外芽(伸ばしたい方向に向いている芽)の上で切ります。 

主枝の付け根から、2~3芽にある、外芽の上で剪定します。
主枝の付け根から、2~3芽にある、外芽の上で剪定します。
主枝から伸びた立派な枝は、切らずに這わせて、花を咲かせます。
主枝から伸びた立派な枝は、切らずに這わせて、花を咲かせます。

2年目にして悩んだのは、主枝と同等の太い枝について。あまりに立派で、二芽で落とすにはもったいない!そんな時は、そのままの長さで誘引してあげて良いそうです。

さらに悩んだのはバラの教科書に出てきた、「古い枝は花きが悪くなるので切り落とす」という解説。2年目の冬を迎える私の庭には、まだ見当たらないと言われました。

しかし、来年以降見分けるポイントとして、2年以上前の枝だったり、枝の表面をチェックして木質化しているものがあれば、開花時期に、花付きがどうかを観察しておいて、不要なら切り落としても良いそうです。

写真右側、硬く、皺が出てきて木のようになってきた枝が古い枝です。
写真右側、硬く、皺が出てきて木のようになってきた枝が古い枝です。

なお、生育旺盛なつるバラにはあまりないようですが、シュート(新しい枝)を出しにくい品種は、古い枝も大事に取っておくように教えていただきました。

■疑問8:枝は間引いたほうがいいの?

長尺のつるバラ苗は、まる2年の間でフェンスいっぱいに枝数を増やしてくれました。そこで疑問になるのは、株が疲れない、枝の本数があるのかどうか?

答えは、ない!ということで、植えられる範囲めいいっぱい、枝数を整理せずに栽培して良いとのこと。我が家はフェンスに絡めた子たちが、4mほど伸びて、フェンスを軽々飛び越えたりもしていたのですが、表側がいっぱいになった個所は、裏面にも這わせてみました(ご迷惑にならない程度に、バラの参道なんて演出できたらいいな)。

5月のバラ開花シーズン後、気づけば通れなくなってしまっていたアーチ。
5月のバラ開花シーズン後、気づけば通れなくなってしまっていたアーチ。

また一方で、アーチは夏を過ぎたあたりから、歩けないほどカオスになってしまいました。

ここのお悩みは、1、アーチを増設する 2、現状のアーチに合わせて枝をバッサリ切る。

という2択を突き付けられました。

たくさん植えていても、どのバラもかわいくて愛しくて…せっかく元気に育った枝を切るなんて、とんでもない!という気持ちになってしまうのですが、今年は増設が間に合わないため、心を鬼にして後者を選択。

まずは、アーチの内側に伸びてきてしまった枝を切り落としました。
まずは、アーチの内側に伸びてきてしまった枝を切り落としました。

構造物を増やしてしまうと、メンテナンスのタスクが増えるので、もう少し、バラの手入れに慣れてきたら、アーチからトンネルへと延長したいと思います。

すっきりと整理されたアーチ。今年は成長途中にしっかり観察をして、内側に入り込みそうな枝は、外側に引っ張っておこうと思います。
すっきりと整理されたアーチ。今年は成長途中にしっかり観察をして、内側に入り込みそうな枝は、外側に引っ張っておこうと思います。

■疑問9:冬のお手入れ中、確認しておくべきことは?

誘引をしながら、プロがチェックしていることは何かあるか尋ねてみました。「冬は虫や病気の心配は気にしなくて大丈夫」とのことで、少し気が楽になりました。

■疑問10:トゲが落ちてしまった、バラの生育は大丈夫?

誘引作業中、枝がフェンスとこすれた拍子に、とげが何か所も取れてしまい、ひどいところは皮がむけてしまいました。バラにも絆創膏が必要なのか疑問が浮かびましたが、

硬い枝を整理していると、トゲや表皮がはがれてしまいますが、成長には問題ないそうです。
硬い枝を整理していると、トゲや表皮がはがれてしまいますが、成長には問題ないそうです。

「問題なし!バラは樹だから、実はとっても強いんです。誘引中に枝をしならせたとき、最悪ぽきっと折れてしまっても、皮が一部でもつながっていたらセーフ。その時には、接木テープ(なければ養生テープでもなんでもOK)でぐるぐるっと包帯のように巻いてあげたら、春までに自分で傷を治してぴったりとくっ付いていますよ」と、Sさんから心強いアドバイスを頂きました。

■疑問11:選定後の枝、正しい捨て方は?

大きな株だと1/3も切り戻すため、剪定後はすごい量の枝が出てしまいます。

幸い我が家は、畑があるのでそちらに集めて、乾燥させて、燃やしているのですが、住宅地で栽培している時はどうしたらいいのでしょう? 「ゴミとして、燃えるゴミの日に出せます。ただし、とげが危ないので、細かく切って、新聞紙などに包んでから捨てるのがマナーです」(Sさん)。

以上、私のつるバラに関する素朴な疑問と、その解決策でした。同じお悩みをお持ちの方、参考になりましたでしょうか? 今年も美しいバラをたくさん愛でられるように、厳しい寒さがまだ続きますが、ローザリアンのみなさま頑張りましょうね!

ずっと憧れていた、庭で育った草花を添えたローズブーケづくり♡今年は、もっともっと!大きなブーケをつくりたいと思います!
ずっと憧れていた、庭で育った草花を添えたローズブーケづくり♡今年は、もっともっと!大きなブーケをつくりたいと思います!

冬の間に行う庭の手入れは、夏とはまた違った肉体労働。どうぞ腰など痛めないように、またエクササイズに昇華してきれい磨きにつながるように、コチラの記事もご覧いただければと思います。

次回は「木立ち性の木のお手入れ」をご紹介したいと思います。お楽しみに!

東京⇔田舎で二拠点暮らし。シリーズ「セカンドハウスライフ」

この記事の執筆者
<プロフィール> 1980年、東京生まれ。大学を卒業後、マスコミ業界に就職。テレビ、雑誌、WEB、ラジオの企画や制作に携わったのち、20代後半からグラフィックデザインを学ぶ。美容業界でデザインや広報の仕事をする傍ら、2015年9月に関東圏の古民家をセカンドハウスとして買い取り、東京と地方を行き来する生活を始める。 好きなものは、本、カメラ、花、ティファニーとTシャツ。趣味は、読書、アート鑑賞、カメラ、陶芸、料理、ピラティス、ゴルフ。「たくさん、よりも、自分に合う、永く愛せる物や人間関係を大切にしたいと思います。また、そういったものに巡り合っていきたいです」
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