きな粉と黒蜜をかけていただく代表的な和菓子といえば「くず餅」ですが、実は同じ名前でも関東と関西とではまったくの別物だということはご存じでしょうか?

関西のくず餅は「葛餅」と書かれることからもわかる通り、葛粉からつくられており透明でぷるんとした食感が特徴です。一方、関東のくず餅は、小麦を乳酸菌で発酵させたものが主な原料で、見た目は白く濁っていてお餅のよう。関西のくず餅と区別するために漢字では「久寿餅」と表記されます。

そんな関東のくず餅の元祖といえば「船橋屋」です。長い歴史と変わらぬ想い、そして定番商品に至るまで、広報担当の方にたっぷりお話を伺いました。

創業者は元豆腐屋で元植木職人!?「船橋屋」の始まり

江戸は文化二年(1805年)、十一代将軍徳川家斉の頃に創業した「船橋屋」。初代の名は勘助(かんすけ)といい、出身は下総国船橋(現在の千葉・船橋)で当時この地で豆腐屋を営んでいました。

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「東京一の藤の名所」と呼び声が高い亀戸天神。写真は1880年頃のもの

勘助は亀戸天神によくお参りに来ていたそうですが、この神社には多くの人が訪れるにもかかわらず、餅や団子を出す茶店が少ないと感じ「亀戸天神境内で茶店を開けば、繁盛するはずだ」と思い上京。しかし立派な神社の門前で、縁もゆかりもない勘助が商売を始められるはずもありません。

そこで勘助はまず亀戸天神御用達の植木職人に弟子入りし、亀戸の人々の信頼を得て、その後晴れてお店を開くことができたのです。

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明治時代、船橋屋に並ぶ人々の様子

当時、下総国船橋は上質な小麦の産地。船橋生まれの勘助は子供のころからつくり方を見ていたくず餅をつくることにしました。試行錯誤を続け、黒蜜ときな粉をかけた今のくず餅の形が完成すると、次第に評判が高まり、参拝客はもちろん、わざわざ遠方から食べに来る人まで現れたのです。

当時の屋号は出身地にちなむのが一般的だったため、店名は「船橋屋」となりました。

あの西郷隆盛も愛したというくず餅。明治~昭和にかけては、芥川龍之介、永井荷風、吉川英治など多くの文化人もしばしば訪れ、くず餅を堪能していたそうですよ。

最近でも、テレビ番組で東京・亀戸出身の俳優、田中圭さんが船橋屋のくず餅が大好きだと発言し、話題になっていました。

時代は変わっても、決して変わることのない「船橋屋」の想い

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東京・亀戸天神参道にある船橋屋本店

創業して215年、現在は8代目となる渡辺雅司氏が社長をつとめています。大学卒業後、都市銀行に就職したという異色の経歴を持つ渡辺社長になってから会社は変わり始めます。

「くず餅を食べ続けるとお腹の調子が良い」というお客様のお声から発見に至った「くず餅乳酸菌」による健康や美を提案する事業や、若い世代向けの商品開発・SNSを使った情報発信など様々な改革がスタートしました。しかしひとつだけ変わらないものがあります。それが「くず餅ひと筋まっすぐに」という経営理念でした。

「創業以来どんな社会変化があろうとも、ただひたすら真っ直ぐにくず餅の磨き込みを重ねて参りました。それはこれからも変わることはありません」(担当者)

江戸時代から続く味!「船橋屋」の代表菓子2選

伝統を守りながら進化し続ける「船橋屋」。広報担当の方に伺った代表菓子をご紹介します。

■1:永遠のロングセラー!プリもちの食感がやみつきになる「元祖くず餅」

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「元祖くず餅」小箱(24切/1~1.5名様用)¥790(税込)~

厳選した小麦澱粉を15か月かけて乳酸菌発酵精製し、ひとつひとつ丁寧に蒸し上げてつくられるくず餅。濃厚で香ばしいきな粉と、沖縄産の黒糖ベースに数種類の砂糖をブレンドした秘伝の黒蜜が合わさったことで生まれる三位一体の味わいは、あとを引くおいしさです。

無添加なので小さいお子さんからお年を召した方まで安心して食べられる上、発酵食品&低カロリーという点も女性にとって嬉しいポイント。大きめにカットされたくず餅は、食べ応えがあり文句なしの満足感です。

■2:くず餅も味わえてちょっとしたお得感「特製くず餅入りあんみつ」

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「特製くず餅入りあんみつ」1個 ¥480(税込)

 伊豆七島産を中心に全国から吟味した天草を使用し、じっくりと煮出して固めた寒天は磯の香りが強いのが特徴。昔ながらの製法でつくられた寒天はコリッとした食感も楽しめます。

そのほか、職人さんが手間暇かけてつくった自家製あんこは、小豆本来の味が活かされた上質な味わい。看板商品のくず餅が入った船橋屋オリジナルあんみつです。

「餡は食物繊維、自家製黒蜜はミネラルがそれぞれ豊富。腹もちもいいんですよ!」と担当者さん。ダイエット中でも罪悪感なく食べられそうですね。


450日もかけて発酵させたくず餅の消費期限はたったの2日。現代の技術があれば、もっと日持ちするようにつくることもできそうですが、つくり方を変えることはありません。ブレることなく江戸より受け継がれてきた「船橋屋」の味、ぜひこの冬に温かいお茶と一緒に楽しんでみてはいかがでしょうか?

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WRITING :
篠原亜由美