今月のアスリート王子 中村 克(水泳選手・自由形)

プール内の中村選手
西村尚己/アフロスポーツ

オリンピックでテレビに目が釘づけになるスポーツといえば、やはり競泳だ。スタート台に並ぶスイマーたちは、神々しさが漂うフォルムの持ち主ばかり。中でも花形種目である100m自由形には、世界中から選りすぐりのトップスイマーが集っている。

彼らと伍(ご)してメダルを争うのが、この種目の日本記録保持者である中村克(かつみ)選手だ。183cm、80kgの均整の取れたマッチョボディは、ハッとするような美バランス。取材エリアでの話し口調はいつも明朗快活で、甘いマスクから意志の強さがにじみ出るところに、魅力があふれる。

Athlete data

プロフィール用(中村選手)
中村 克選手
水泳選手・自由形
(なかむら かつみ)1994年2月21日、東京都生まれ。子供のころはサッカー少年だったが、小学校5年生で水泳を習い始めると、中学生で早くも全国大会上位に。私立武蔵野高校時代は2,3年生のときに50m自由形でインターハイを連覇。早稲田大学時代の2015年に初めて日本記録を樹立してから、何度も記録を塗り替えている。大学では個人メドレーの現世界王者である瀬戸大也選手の1学年上。イトマン東進所属。183cm、80kg。©松尾/アフロスポーツ

見た目もイケメンだが、性格がこれまたとびっきりのイケメンだ。水泳を始めたのは小学校5年生と、早いほうではなかった。きっかけは、水泳好きでライフセーバーの資格を取ろうとしていた母が、交通事故で断念せざるを得なくなったこと。「僕が代わりに泳ぐ」と言った克少年は、そのときから水泳教室に通い始めたという。なんという母親思い!

研ぎ澄まされた肉体美の持ち主だからさぞかし食生活もストイック? と思いきや、意外にもスイーツやラーメンが好きという親近感の沸くキャラでもある。学生時代にはドーナツを10個食べたことがあるそうだ。

上半身の中村選手
松尾/アフロスポーツ

才能を開花させたのは早稲田大学の4年生だった2015年。ジャパンオープンで48秒41を出して、高速水着の時代に出された日本記録を6年ぶりに更新すると、社会人になった2016年にはリオデジャネイロ五輪で47秒99を記録し、日本人で初めて48秒の壁を破った。

すごいのはこれだけではない。2018年に出した47秒87(※2020年2月1日現在も日本記録)は、この年の世界ランキング2位のタイムで、リオ五輪なら4位相当だった。 

個性豊かな泳ぎも中村選手の魅力だ。他の自由形の選手の多くがヒジを高く上げる「ハイエルボー」で水を掻く中で、中村選手はヒジをまっすぐに伸ばして腕を高く上げる「ストレートアーム」。腕全体で瞬時に水面を叩きつけて、掻くのがカツミ流である。

後半に強いのも特徴だ。中村選手自身もこれを自身の最大の持ち味としてとらえており、「100mのレースプランは前半で楽にスピードを出して、後半のラスト15mの強さという長所を出したい」と語っている。

メダルをかけた中村選手
松尾/アフロスポーツ

競泳選手は、日本選手権やオリンピックなどのビッグレースには、腕や足、背中までくまなく剃毛するピカピカの勝負スタイルで臨む。背中など手の届かない位置はチームメート同士が協力し合って剃っている。プールから上がったときの肌つやが素晴らしいのはそれが理由だろう。

五輪で毎回大活躍している日本の競泳陣だが、男子100m自由形は世界の壁が厚く、五輪や世界選手権などで60年以上も決勝進出者すらいない。その分厚い壁を破っていけそうな俊英が、東京五輪を迎える今の日本にいる幸せ…。中村選手がその中心にいる。

矢内由美子さん
スポーツライター
(やない ゆみこ)取材歴25年のスポーツライター。オリンピック種目などをカバー。日本スポーツプレス協会会員。

 

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この記事の執筆者
TEXT :
Precious編集部 
BY :
『Precious3月号』小学館、2020年
美しいものこそ贅沢。新しい時代のラグジュアリー・ファッションマガジン『Precious』の編集部アカウントです。雑誌制作の過程で見つけた美しいもの、楽しいことをご紹介します。
PHOTO :
松尾/アフロスポーツ、西村尚己/アフロスポーツ
WRITING :
矢内 由美子(スポーツライター)
EDIT :
宮田典子(HATSU)、喜多容子(Precious)