2019年末より、オーストラリアで発生している未曾有の森林火災。この2月に降り続いた雨によって鎮火が進んでいるというニュースが入ってきており、収束へ向かうことを願うばかりです。

事態の火災発生前の2019年11月、オーストラリアを代表するワインブランド、「ペンフォールズ」から醸造家が来日し、テイスティングセミナーが行われました。復興支援の意味も込めて、この模様をレポートします。

オーストラリアを代表するワイン「ペンフォールズ」ってどんなワイン?

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左から/「ビン311 シャルドネ 2017」¥6,000・「ビン389 カベルネ・シラーズ 2016」¥10,000・「グランジ 2015」¥120,000(発売日未定)・「グランジ 2014」¥100,000(2020年3月より新価格・「グランジ 2005」¥100,000(2020年3月より新価格)/すべてサッポロビール(価格はいずれも税抜希望小売価格)

オーストラリアは、ワイン産地としては「生産量」を誇るワイン産地。フランスやイタリアに比較して新世界(=ニューワールド)と呼ばれることもあります。そんななかで「ペンフォールズ」は1844年に創業し、176年もの歴史をもつ老舗ワイナリー。イギリスの有名ワイン雑誌で「世界で最も賞賛されるワインブランド 2019」にも選ばれた、グローバルで評価されるワインブランドでもあります。

イギリスから移住してきた医師、クリストファー・ローソン・ペンフォールズ博士がワインに医学的な価値を見出し、患者のためにアルコール度数高めのワインを造ったのが始まりとされています。

ワイン造りを司る人=「ワインメーカー」の役割とは?

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女性醸造家のシャヴォーン・ウェールズさん

ワイナリーにおいてワイン造りを司る人をワインメーカーと呼びます。ワイナリーの規模によってさまざまな役割がありますが、多くは畑での栽培や施設内での醸造を指揮し、チーフワインメーカーともなれば、ワインメイキングのコンセプトも左右します。

ペンフォールズ初代ワインメーカーのマックス・シューバートはフランスへ渡り、当時オーストラリアにはなかった長期熟成ワインについて学び、卓越したプレミアムワイン「グランジ」シリーズを生み出しました。

現在、ペンフォールズで赤ワインを担当するシャヴォーン・ウェールズさんが都内のホテルでテイスティング(試飲)セミナーを開催。ワインの解説とともに、ペンフォールズの歴史や哲学を語ってくれました。

ペンフォールズのワインはオーストラリアの南東地域のブドウで作られる

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ワイナリーの場所をチェック

ペンフォールズのブドウ畑は主にサウスオーストラリア州やニューサウスウェールズ州、タスマニア州にあり、自社の畑だけでなく、良質なブドウを栽培する農家とも契約しています。

「マルチ リージョナル ブレンド」と称し、複数の地域や区画のブドウをブレンドして造ることで知られています。

「気候や土壌、標高の違うさまざまな産地のブドウを厳選してブレンドすることで、高品質のワインを安定して造ることができます。このコンセプトによって、複雑味を帯びて奥深さの感じられるワインが生まれるのです」(シャヴォーンさん)

【ペンフォールズが畑をもつ主な栽培地域 】

アデレードヒルズ:南オーストラリアの産地の中でも特に冷涼で標高の高い地域。
タスマニア:冷涼な気候と古い土壌から、良質なシャルドネやピノ・ノワールが生まれる。
タンバルンバ:シドニーから南西580キロにある内陸で、標高が高く冷涼な地域。
ラットンブリー:南オーストラリア州とビクトリア州の境に近くにある比較的新しい栽培地域。
パザウェイ:ラットンブリーの北側に隣接し、日照時間が長く温暖で降雨量が少ない。
マクラーレン・ヴェイル:地域内にもさまざまな気候がある、歴史の古い産地。シラーズの栽培が盛ん。
クナワラ:赤い粘土質と石灰岩質からなる土壌「テラロッサ」で知られる、カベルネ・ソーヴィニヨンの銘醸地。
バロッサ・ヴァレー:広大な自社畑をもち、シラーズやカベルネ・ソーヴィニヨンなど赤ワイン用ブドウの主要産地。

ペンフォールズの5種類の赤ワインをテイスティング

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テイスティングセミナーでは、このようにワイン名が書かれたシートにグラスが用意されることが多い。

産地と品種の個性を生かしたビンシリーズ2種、プレムアムレンジのグランジコレクション3ヴィンテージの違いをテイスティング。

■No.1:「ビン311 シャルドネ 2017」

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「ビン311 シャルドネ 2017」。うっすらと黄色味を帯びた色が美しい。

シャルドネのみで造られた白ワインで、アデレードヒルズ、タスマニア、タンバルンバの3カ所のブドウを使用。新樽を含むフレンチオークの小樽で8カ月間の熟成を行います。白桃やメロンのような芳醇なアロマと厚みを感じさせます。

■No.2:「ビン389 カベルネ・シラーズ 2016」

カベルネ・ソーヴィニヨン51%、シラーズ49%。オーストラリアでは代表的な2種類のブレンドの赤ワインです。5つの地域のブドウを用い、アメリカンオークの300リットル樽で12カ月熟成。豊かな果実味と引き締まった感じに、樽のニュアンスが加わり、楽しめるワインです。

■No.3:「グランジ 2015」

98%のシラーズにカベルネ・ソーヴィニヨン2%。4つの地域をブレンドし、新樽のアメリカンオークで20カ月という長い熟成期間を経てリリースします。熟した黒系ベリーやカカオのアロマにバニラ香が印象的、パワフルですがまだ若々しさもあり、20年くらい飲み頃が続きそうなポテンシャルを感じさせます。

■No.4:「グランジ 2014」

ブレンド比率や樽熟成期間は2015年ヴィンテージと同様ですが、冬の降雨と生育期の温暖な気候で、果実味と酸のバランスがよかったヴィンテージ。5つの地域をブレンドし、ソフトさも兼ね備えた印象。チェリーやブラックベリージャム、スパイスの香りからやわらかなアタックが楽しめます。

■No.5:「グランジ 2005」

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「グランジ 2005」は稀有な高級ワイン。

こちらもブレンド比率や樽熟成期間は2015年、2014年ヴィンテージと同様で、バロッサ・ヴァレー、マクラーレン・ヴェイル、クナワラの3つの地域のブドウを使用。ベリーのリキュールやダークチョコレート、レザーなどの複雑な香りが交互に現れ、厚みのある味わいがレイヤーとなって現れます。


ペンフォールズブランドの所有者である「トレジャリー・ワイン・エステーツ社」代表からのメッセージ

ここ数か月間、悲劇的なことにオーストラリアの森林はかつてない規模で破壊され、特にニューサウスウェールズ州、南オーストラリア州、ビクトリア州の山火事で多くの州が被害を受けました。

トレジャリー・ワイン・エステーツ社やワイナリー、ペンフォールズなどのワインブランドの所有地は、今回の火災による直接的な被害は受けなかったものの、他の地域では多くのワイナリーや生産者が被災されました。

我々トレジャリー・ワイン・エステーツは、オーストラリアの大規模な森林火災を受けて、当社の自然環境との重要な関係性を考えた結果、ビクトリア州火災対策機関(Victorian BushFire Appeal)と南オーストラリア州緊急救援基金(South Australian State Emergency Relief Fund)への救援活動のための多額の寄付を行いました。

この活動を通じて当社は、近年起きた米国ナパでの山火事に対する当社支援と同様、当社社員と生産者が活動している地域の回復と救援活動に貢献いたします。

残念ながら、オーストラリアの山火事の季節はまだ終わっておらず、多くの地域ではまだ様々な課題が残ってます。私たちは関係者とともに、火災がブドウとその木に及ぼす長期的影響について調査を開始しております。トレジャリー・ワイン・エステーツは今後も、森林火災をモニタリングし、火災被害を受けた近隣同業者への支援を行います。


ワインは、一滴の水も足さないブドウのみから造られる自然の産物。同じ土地のブドウも年によって特徴も異なります。ペンフォールズは、そこに人の知恵と知識を加え、その年その年でベストな品質を目指してワイン造りを行っています。そんなことを思いつつ、ペンフォールズのワインを楽しんでみてはいかがでしょうか?

問い合わせ先

サッポロビール お客様センター

TEL:0120-207-800

この記事の執筆者
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WRITING :
谷 宏美
EDIT :
石原あや乃