日本ではひな祭りに桜餅を食べる習慣がありますが、なぜ桜餅を食べるのでしょうか? 桜餅が食べられるようになった理由を紐解いてみます。

また、桜餅には関東風(江戸風)の「長命寺」と、関西風(上方風)の「道明寺」の2種類がありますが、それぞれの作り方や歴史もチェックしてみましょう。

さらに、桜餅の桜の葉は食べるべきか、食べないべきか? ひな祭りに草餅を食べる意味、おすすめの桜餅&草餅をご紹介します。

■ひな祭りに桜餅を食べる理由

3月3日は女の子の成長を願う「ひな祭り」の日。この日には、ちらし寿司やはまぐりの汁物、白酒などをいただく習慣があります。

また、桜餅もひな祭りの時期にいただく和菓子として広く知られており、和菓子店はもちろんスーパーなどの店頭にも美しく作られた桜餅が並びます。

ひな祭りのちらし寿司やはまぐりの汁物などには、それぞれに子供の成長を願う意味合いが込められているのですが、桜餅については、特に深い意味はないといわれています。

なぜ、ひな祭りに桜餅が食べられるようになったの?

では、なぜひな祭りに桜餅が食べられるようになったのでしょうか?

その答えは諸説ありますが、ピンクと緑の色合いが春らしいという理由や、5月5日の子どもの日には柏餅を食べる習慣があることから、それと対になるようにひな祭りに桜餅が食べられるようになったともいわれています。

また、ひな祭りに用意される菱餅よりも桜餅の方が食べやすいとされ、人々の間で広まっていったこともあるようです。

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■桜餅の種類

春らしく女の子のお祝いにピッタリの桜餅。桜の葉で餅を包むこの和菓子は、江戸時代ごろから作られたといわれていますが、桜餅には関東地方と関西地方で2つの種類があります。

関東風の桜餅は、小麦粉で作った生地をふたつ折りにして餡をはさんだタイプで、「長命寺(ちょうめいじ)」と呼ばれています。

関西風の桜餅は、道明寺粉と呼ばれるもち米を粗く挽いて作られており、「道明寺(どうみょうじ)」と呼ばれ、つぶつぶとした食感があります。

■関東風(江戸風)の桜餅「長命寺(ちょうめいじ)」

関東風(江戸風)の桜餅「長命寺(ちょうめいじ)」
関東風(江戸風)の桜餅「長命寺(ちょうめいじ)」

関東地方で広く食べられている関東風(江戸風)の「長命寺桜餅」とは、どんな桜餅でしょうか?

関東風(江戸風)桜餅の作り方・レシピ

1. 小麦粉または上新粉、白玉粉を水で溶いて、うっすらとピンク色になるように桜の花のシロップまたは食紅で色をつけます。

2. この生地をフライパンなどに小判型に薄くひき、焼いていきます。

3. 焼きあがったら生地をふたつ折りにするようにして、餡を挟み、最後に塩漬けした桜餅の葉を重ねます。またふたつ折りではなく、餡を生地でくるくると巻いて仕上げるタイプの桜餅もあります。

関西の桜餅との違い

中に餡を入れることや、桜の葉の塩漬けを使う点は、関東と関西の桜餅に共通する点。しかし、関東の桜餅は、道明寺粉ではなく、小麦粉で作った生地を使っているところが大きな違いでしょう。

また、関東風の桜餅は、生地を焼いているので桜の葉をはがして食べやすい、という特徴もあります。

歴史や由来

関東風の桜餅が「長命寺」と呼ばれている由来は、桜の葉を塩漬けにした江戸時代の頃にさかのぼります。

ある人物が、桜が咲く時期に落ちている葉を見て、これを塩漬けにしてみようと試みました。この人物は墨田区にある「長命寺」の門番。

そして、現在も墨田区向島にある老舗和菓子店「長命寺桜もち 山本や」が初めて、その桜の葉を使って桜餅を売り出したといわれています。

■関西風(上方風)の桜餅「道明寺(どうみょうじ)」

関西風(上方風)の桜餅「道明寺(どうみょうじ)」
関西風(上方風)の桜餅「道明寺(どうみょうじ)」

一方、「道明寺桜餅」と呼ばれる関西風の桜餅は、どんなものでしょうか?

関西風(上方風)桜餅の作り方・レシピ

道明寺桜餅は、名前の通り主役となるのは道明寺粉です。道明寺粉とは、もち米を蒸して乾燥させ、それを細かく割ったものです。

1. この道明寺粉を熱湯で溶いて食紅で薄くピンク色に色付けしたら、これを蒸します。

2. 蒸しあがったらこの生地で餡を包み、おはぎのように丸め、最後に桜の葉の塩漬けでくるみます。

関東の桜餅との違い

「道明寺」と「長命寺」と違うところは、道明寺粉を使っている点。道明寺粉独特のつぶつぶとした食感を楽しむことができます。道明寺は、おはぎと似たような見た目の仕上がりになります。

歴史や由来

道明寺桜餅は、大阪にある道明寺が由来。江戸時代に道明寺で、もち米を水に浸しておき、これを蒸しあげて乾燥させ、粗く挽いた「道明寺粉」が作られました。

江戸の桜餅の方が先にできたといわれていますが、それが関西地方に広まる前に、この道明寺粉を使った道明寺桜餅が、関西の人々の間に定着したと考えられています。

■桜餅の桜の葉、食べる?食べない?

桜餅を食べるとき気になるのが、桜餅についている桜の葉を食べるかどうか。桜の葉ごとそのまま食べるべきなのか、それとも葉を取ってから食べた方がいいのか、正しい食べ方はどのようなものなのでしょうか?

食べる派

以前「Precious.jp」で行った桜餅に関するアンケートでは、「桜餅に巻いてある塩漬けの桜の葉を一緒に食べる」と答えた方は全体の59%と、半数以上の方が「食べる」を選択していることがわかっています。

香りのよい桜の葉を食べると、口の中いっぱいに春の訪れを感じることができるもの。そんな桜餅ならではの魅力を、桜の葉を食べることで楽しんでいる方が多いようです。

食べない派

一方、同アンケートでは「桜の葉は食べずにはずす」と答えた方は16%、「食べることも、食べないこともある」は25%で、毎回のように桜の葉をはずしている方はごく少数であることがわかりました。

創業から300年続く元祖桜餅のお店「長命寺桜もち 山本や」の山本さんによると、桜の葉は筋の固いものもあるので、はずして食べることをおすすめしているそうです。

ただし、桜の葉は食用ですし、食べ方の好みは人それぞれなので、はずして食べても一緒に食べてもどちらでもいいそうです。

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■ひな祭りに草餅(よもぎ餅)を食べる意味

ひな祭りでは、桜餅のほかに草餅(よもぎ餅)を食べることもあります。ひな祭りに草餅を食べる習慣には、どんな由来や意味があるのでしょうか?

草餅を食べる由来

ひな祭りに欠かせない和菓子に菱餅があります。ひな祭りも菱餅も、中国の「上巳節」と呼ばれる行事にルーツがあり、母子草(ははこぐさ)を練り込んだ草餅を食べる習慣がありました。

母子草は香りの強い薬用植物で邪気を払う力があると信じられており、この習慣が日本にも伝わってきたとされています。

日本では、母子草を使うと「母と子を一緒に搗く(つく)」と連想されることから、縁起が悪いと考えられ、代わりによもぎが使われるようになったようです。

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草餅の作り方・レシピ

1. 茎を取り除いたよもぎを茹でたら、すり鉢で細かくなるまですります。

2. これを上新粉や白玉粉をぬるま湯で溶いた生地に加え、よく練ります。

3. この生地で餡を包んだら、草餅(よもぎ餅)の完成です。

■ひな祭りに食べたい桜餅・草餅のおすすめ

ひな祭りに最適なおすすめの桜餅と草餅をご紹介しましょう。

長命寺「さくら葉餅」(梅月園)

長命寺「さくら葉餅」(梅月園)
長命寺「さくら葉餅」(梅月園)

1931年創業、さくら葉を2枚使用した名物の「さくら葉餅」や看板商品の松かさ最中」が人気の、静岡のお菓子処「梅月園」。

同商品は、桜葉の産地、伊豆松崎町特産品のさくら葉を使って、昔ながらの味を再現した松崎ならではの銘菓。

北海道自然農法の小豆を使用し、ほどよく口に広がる風味と塩味が絶妙です。

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道明寺「さくら餅(生菓子)」(笹屋昌園)

道明寺「さくら餅(生菓子)」(笹屋昌園)
道明寺「さくら餅(生菓子)」(笹屋昌園)

京都・龍安寺にある老舗和菓子屋「笹屋昌園」の道明寺桜餅。春の香りいっぱいの桜餅は、独特の舌触りともっちりした食感に、同店自慢の自家炊こし餡がさらりとした口どけで、いくつでも食べられます。

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草餅「草もち本舗バキサ バキサの草もち」(草もち本舗バキサ)

草餅「草もち本舗バキサ バキサの草もち」(草もち本舗バキサ)

石川県白山市にある「草もち本舗バキサ」の草餅。苦味がなく、まろやかな味が特徴の白山麓の山奥で育つ「本草」で作った草餅です。

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ひな祭りや桜餅で、春の訪れを楽しもう

当記事では、ひな祭りに桜餅を食べる理由や桜餅の種類についてご紹介しながら、桜餅には、関東風(江戸風)の「長命寺(ちょうめいじ)」と、関西風(上方風)の「道明寺(どうみょうじ)」があること、作り方やレシピ、違いを解説しました。

また、アンケートの結果から、桜餅の桜の葉を食べる派と食べない派の意見をまとめています。

さらに、ひな祭りに草餅(よもぎ餅)を食べる意味や由来、草餅の作り方・レシピから、ひな祭りに食べたい桜餅・草餅のおすすめをチェックしました。

日本には美しい四季の移り変わりがあり、ひな祭りは、寒かった冬に終わりを告げ、温かい春の訪れを感じる行事でもあります。

桜が咲く季節にはまだ少し早いかもしれませんが、桜餅は春を感じられる日本ならではの和菓子です。ぜひ、ひな祭りには、桜餅をいただいてみませんか?

この記事の執筆者
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