今回は、セーヴル通りにあるエルメスのブティックの向かい側、レカミエ通り3番地のレカミエ劇場が会場だ。1908年から78年まで興行していた劇場だそうだが、今やそこに劇場があることさえあまり知られていない。

 外観は白くシックだが、中に入るとそこはまさに工事中。暗く照明を落とし、コンクリートの四角い塊が置かれた劇場内に新コレクションがならべられていた。むき出しの素材が置かれた未完成の会場に、完璧な職人技で作られたエルメスのシューズがくっきり映える。

新時代の正統派はスポーティなライン入りのシューズ!

エルメスの2020-21年秋冬シューズ・コレクション

舞台にはカーテンが降り、下の方だけ少し開いていてエルメスのシューズを履いたダンサーが男女を演じる。見えるのは足元だけという趣向。
舞台にはカーテンが降り、下の方だけ少し開いていてエルメスのシューズを履いたダンサーが男女を演じる。見えるのは足元だけという趣向。
むき出しのコンクリートに完成度が高いエルメスのシューズが並べられると、面白いコントラストの効果が出る。
むき出しのコンクリートに完成度が高いエルメスのシューズが並べられると、面白いコントラストの効果が出る。©️Christophe Coënon
仔牛革とネオプレンのローファー。バイカラーのノッチド・ソールでアクティブなテイスト。
仔牛革とネオプレンのローファー。バイカラーのノッチド・ソールでアクティブなテイスト。 ©️Image Group
布地と山羊のベロアを使ったスニーカー。ラバーソールには、メゾンの頭文字であるH。
テクニカル素材と山羊革スエードのスニーカー。ラバーソールには、メゾンの頭文字であるH。 ©️Christophe Coënon
仔牛革のダービー。ノッチド・ソールとボディをエラスティックなベルトで締めて、スポーティに。
仔牛革のダービー。ノッチド・ソールとボディを取り外し可能なゴムベルトで締めて、スポーティに。©️Image Group
個性的な仔牛革のアンクル・ブーツ。Hのバックルつき。
個性的な仔牛革のアンクル・ブーツ。Hのバックルつき。©️Image Group
テクニカル・キャンバス、仔牛革と山羊のベロアを使ったスニーカー。サイドには流れるようなHの文字。
テクニカル素材、仔牛革と山羊革スエードを使ったスニーカー。サイドには流れるようなHの文字。©️Image Group
ブルーマリンの仔牛革のローファーのソールはラバーで、履きやすい。
ブルーマリンの仔牛革のローファーのソールはラバーで、履きやすい。©️Image Group

 レザーだけでなく、テクニカル素材やネオプレンなど異素材を組み合わせているのも見逃せないポイントだ。カジュアルテイストは現代の装いに必須の要素だが、ただカジュアルというのも没個性。最高品質で洗練されたエルメスのシューズだからこそカジュアルさが映える。シックでかつスポーティなこの新コレクションは、今秋、「この男、やるな」と思わせる足元を作るはずだ。

この記事の執筆者
某女性誌編集者を経て2003年に渡仏。東京とパリを行き来しながら、食、旅、デザイン、モード、ビューティなどの広い分野を手掛ける。趣味は料理と健康とワイン。2013年南仏プロヴァンスのシャンブル・ドットのインテリアと暮らし方を取り上げた『憧れのプロヴァンス流インテリアスタイル』(講談社刊)の著者として、2016年から年1回、英語版東京シティガイドブック『Tokyo Now』(igrecca inc.刊)を主幹として上梓。
公式サイト:Tokyo Now