東急池上線長原駅から徒歩約1分の場所にある和菓子店「wagashi asobi(ワガシアソビ)」。

稲葉基大さんと浅野理生さん、ふたりの和菓子職人が手がける和菓子は「ドライフルーツの羊羹」と「ハーブのらくがん」の2品のみ。「一瞬一粒(ひとつひとつ)に想いを込めてつくる」を理念に、自分たちのできる範囲で和菓子をつくり、販売しています。

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「wagashi asobi」の稲葉基大さんと浅野理生さん

そのおいしさと見た目の美しさから「ドライフルーツの羊羹」はSNSでも話題に。お取り寄せもできるため、遠方でも味わえるのが嬉しいです。

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「ドライフルーツの羊羹」はSNSでも話題に

魅力的な看板和菓子がどのようにして誕生したのか?が気になります。「wagashi asobi」の創業当時の話と一緒に、稲葉さんと浅野さんのおふたりに伺いました。

味も見た目も新感覚!「wagashi asobi(ワガシアソビ)」渾身の創作和菓子2選

■1:新しいけど奇抜じゃない!ラム酒が香る「ドライフルーツの羊羹」

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「ドライフルーツの羊羹」¥2,300(税込) ※実店舗とオンラインで購入可

小豆と沖縄県西表島の黒糖でつくった羊羹に、木の実とドライフルーツを丸ごと入れて、ラム酒で香りづける……洋菓子を思わせるようなこの魅力的な羊羹は、浅野さんが手がけたものです。

黒糖羊羹にナイフを入れると、現れるのは美しい断面。クルミやイチヂク、いちごが羊羹のキャンバスに不思議な模様を描いているように見えます。これは、浅野さんの「切ったときに黒糖羊羹にフルーツの断面が浮かび、抽象絵画のように美しく見えるように」とのインスピレーションから生まれたもの。

羊羹を口に入れると、口いっぱいに広がる黒糖とラム酒の香りと共に、ドライフルーツやナッツの食感も楽しめます。これまでにない組み合わせなのに、まったく違和感がありません。

元々は、アーティストのご友人から「パンに合う和菓子をつくって」と頼まれたことがきっかけだったそうです。パンに合う和の食材として思い浮かんだのが、あん、そして和菓子の起源でもある木の実や果物。テリーヌをイメージしたそうです。

そのまま食べるのはもちろん、クリームチーズやバターを塗ったバゲットの上に1cmほどに切った羊羹を載せるのもオススメだとか。ティータイムはもちろん、夜にワインと一緒にいただきたくなる大人の味です。

■2:グリルドチキンが運んだ縁!ニューヨークで生まれた「ハーブのらくがん」

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「ハーブのらくがん」4粒入り¥360(税込) ※実店舗のみの販売

コロンとした形に優しい色合いが可愛らしい「ハーブのらくがん」の誕生は、稲葉さんが6年間和菓子修行したNY時代にさかのぼります。きっかけは、レストランで食べたグリルドチキンに添えられたローズマリーでした。

「このいい香りの葉っぱを和菓子に使いたい!」と思い、草餅や錦玉羹(きんぎょくかん)など、さまざまな和菓子を試作した結果、一番おいしくできたらくがんに決まったのでした。

「ハーブらくがん」は、ローズマリー、ハイビスカス、カモミール、抹茶、いちご、ゆずの6種類。7月〜8月には、ゆずに代わって、紀州南部の南高梅を自然塩のみで漬けた南高梅が登場するそうです。

洋菓子を思わせるような不思議な魅力の秘密は、使用する型にあります。独立当初の稲葉さんには、らくがんに使用する特注の木型をつくる資金がなかったため、チョコレートの型で代用することを思いついたそう。常識にとらわれない柔軟な発想が、魅力的な和菓子を生み出しているのだと感じます。

オープンは震災の約1か月後…「wagashi asobi」の成り立ちについて

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「wagashi asobi」店舗外観

老舗の和菓子店でそれぞれ和菓子職人として修行をした稲葉さんと浅野さん。「wagashi asobi」の誕生のきっかけとなったのが、稲葉さんが仕事とは別に始めた和菓子職人としての活動です。浅野さんを含んだ当時の職場の3名を誘い、ユニット「wagashi asobi」として、本名や勤務先を伏せて和菓子をつくっていたそうです。

さまざまな業界の人と出会い、リクエストに基づいた和菓子をつくっているうちに、稲葉さんと浅野さんは独立を意識するように。そして、稲葉さんの行きつけのカフェが閉店してしまったことを期に、同じスペースに店を構えることにしたのです。

「wagashi asobi」の店舗がオープンしたのは2011年4月。東日本大震災のすぐ後で、余震が続く中でのスタートでした。稲葉さんは「不安しかありませんでした」と当時を振り返ります。また、老舗が多い業界の中で、和菓子職人が一から独立創業することはとても稀なのだとか。モデルケースがない分、すべてが手探り状態だったそうです。

独立するにあたり、ふたりに共通していたのは「やりたいことだけしたい」と考えていたこと。浅野さんは「ドライフルーツの羊羹」、稲葉さんは「ハーブのらくがん」と、それぞれに愛着のある2品と特注の創作和菓子のみを扱うことに決めました。売れる和菓子を次々につくったり、事業を拡大したりするのではなく、自分たちにできる”せいぜい”を大切にしているそうです。

今後の目標を伺うと、「『前向きな現状維持』です。そのためには、おいしい和菓子を1日でも長く提供することを続けていきたいと思います」と稲葉さんは答えてくれました。

2品の和菓子を「地元の銘菓」として育て、生まれ育った地域に貢献したい。その想いで、今日も和菓子をつくり続けています。


おいしいお菓子は巣ごもり生活に彩りを与えてくれるはず。ゆっくりお茶をいれて和菓子をいただく、穏やかな時間をつくってみませんか?

問い合わせ先

  • wagashi asobi 
  • 営業時間/10:00〜17:00
  • 定休日/日曜日、不定休 ※営業日時は新型コロナウイルスの影響により、変更の場合あり。地方発送可
  • TEL:03-3748-3539
  • 住所/東京都大田区上池台1-31-1-101

この記事の執筆者
フリーランスのライター。企業の採用サイトやパンフレット、女性向けの転職サイト、親向けの性教育サイトなどで取材記事を執筆。好きなもの:中村一義、津村記久子、小川洋子、マンガ、古いもの、靴下など
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EDIT :
小林麻美