羽生結弦(はにゅうゆづる)選手や宇野昌磨(うのしょうま)選手など、世界選手権に出場予定だったフィギュアスケーターたちが、ファンに向けたコメントや動画を配信してくれたのは前回の記事でお伝えした通り。その後も世界中でコロナ禍に立ち向かうスケーターたちの動きが広まり、新たなムーブメントとなっています。

今回は、4時間以上にわたって配信されたチャリティ番組『オープン・アイス!』や宮本亜門さんが発足した「上を向いてプロジェクト」、そして安藤美姫さんが中心となった動画「チームジャパン 日本フィギュアスケーターからのメッセージ!」など様々なトピックをご紹介。各スケーターたちによる過去の名プログラムもあわせてお届けします!

世界中のスケート・ファミリーが集合した「オープン・アイス!」

ネイサン・チェン選手はコーチ業もスタート!?

2020年4月26日、ISU(国際スケート連盟)のYouTubeチャンネルより、新型コロナウイルス感染症対応のためのチャリティ番組「Open Ice!(オープン・アイス!)」がライブ配信されました。同企画のプロデューサーでもあるカナダのケイトリン・ウィーバー選手が司会を務め、世界中のスケート関係者にオンラインインタビューを敢行。

羽生選手のライバルでもあるアメリカのネイサン・チェン選手も出演し、「誰も予想できなかった非常事態になったけれど、少し時間をおいて、人生の新しい展望を見据える時期でもあると思います。スポーツにおいても、それ以外のことにおいてもね」と語りました。

ネイサン選手は名門・イェール大学に在学中で、今はオンライン講義を受ける日々だそう。さらにこの機会にトレーニングコーチの資格も取得したそうで、文武両道ぶりにますます拍車がかかりそうです。

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振り付けを手がけたのはカナダの元アイスダンサー、マリー=フランス・デュブレイユ。写真:坂本 清/アフロ
振り付けを手がけたのはカナダの元アイスダンサー、マリー=フランス・デュブレイユ。写真:坂本 清/アフロ

ネイサン選手のプログラムで振り返りたいのは『ロケットマン メドレー』。本人もお気に入りだというこのフリースケーティングは、エルトン・ジョンの半生を描いた映画のサウンドトラックを使ったもの。4本の4回転ジャンプを組み込んだ高度な構成はもちろん、縦横無尽に踊りまくる後半のコレオシークエンスに注目! 氷の上とは思えないエネルギッシュな動きに、視線が釘付けに。

「僕たちは強い」とハビエル・フェルナンデス氏

そして平昌五輪の銅メダリストでもあるスペインのハビエル・フェルナンデス氏も出演し、「イタリア、スペインはもちろん、今やアメリカも大変な状況になっていますが、僕たちは強い人間だからきっと乗り越えられるでしょう」と笑顔で人々を元気付けました。

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試合で見せる表情とはうって変わった、コミカルな演技が会場を沸かせます。写真:松尾/アフロスポーツ
試合で見せる表情とはうって変わった、コミカルな演技が会場を沸かせます。写真:松尾/アフロスポーツ

ハビエル氏のプログラムで振り返りたいのは『エアロビッククラス』。会場を盛り上げる、大人気のエキシビションナンバーです。80年代の名曲に乗せてエアロビクスに挑戦するストーリーですが、途中で衣装を脱いでスーパーマンに変身! 後半にバケツの水を掛けられる場面は、公演ごとに様々なゲストに協力を依頼しているそうで、どのスケーターが登場するかも見どころです。

宇野昌磨選手のあの衣装がマスクに!

ほかに宇野昌磨選手が師事するステファン・ランビエール氏も出演。ランビエール氏は「僕は日中、ピラティスのクラスや生徒へのレッスンのほか、キッチンで料理を楽しんだりしています。シーズン中は普段できないような庭仕事や掃除もね」と語りました。

また、衣装デザイナーのマシュー・キャロン氏が、宇野選手がフリースケーティング『ダンシング・オン・マイ・オウン』で着用した衣装デザインを元にしたマスクを披露してくれる場面も。視聴者からの大きな反響を受け、キャロン氏はその後チャリティーとしてこのマスクを公式サイトで販売。すでに売り切れとなっています。

もとになった『ダンシング・オン・マイ・オウン』のコスチュームはこちら。写真:アフロ
元になった『ダンシング・オン・マイ・オウン』のコスチュームはこちら。写真:アフロ

さらにこの「オープン・アイス!」では、カナダのパトリック・チャンさんの演技や、サラエボ五輪の金メダリストであるトービル&ディーン組による映像なども特別公開。チームジャパンからは宮原知子選手が参加。

練習拠点のカナダ・トロントにいる宮原選手は「私は毎日、何かひとつでも楽しみを見つけて、アクティブに過ごすように心がけています。オンラインでのダンスやピラティスやトレーニングのレッスンを受けて、そしてこれまで以上に趣味に没頭する時間を楽しんでいます」と日本語で語りました。

4時間以上にわたる放送の途中で、すでに目標額の15,000ドル(約160万円)の2倍を超える寄付が集まった「オープン・アイス!」。番組終了後もYouTubeチャンネルでアーカイブが残っているので、ぜひチェックしてみてくださいね。

有名スケーターらも参加した「上を向いてプロジェクト」

高橋大輔選手が再び歌声を披露!

そして、フィギュアスケート×源氏物語『氷艶hyoen2019~月光かりの如く~』も手がけた演出家の宮本亜門さんが発足した「上を向いてプロジェクト」にも、スケーターたちの姿が。この企画は新型コロナウイルスと闘っている人や医療従事者、生活を支えるために働いている人、また、部屋で不安を抱え未来を案じている人たちに少しでも希望を感じてもらうためにスタートしたもの。多くのスターたちと共に高橋大輔選手、荒川静香さん、村上佳菜子さんが参加し、メッセージを発信しました。

高橋選手は「ありがとう! 当たり前(のこと)ができないからこそ、この言葉を実感しています。でもこの経験がきっと明るい未来をつくる、そう信じて一緒に乗り越えていきましょう」とあたたかな笑顔でコメント。坂本九さんの名曲『上を向いて歩こう』を参加者で歌いつなぐ動画もYouTubeで公開中です。

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ダンサーとしての才能を余すことなく発揮する名プログラム。写真:Enrico Calderoni/アフロスポーツ
ダンサーとしての才能を余すことなく発揮する名プログラム。写真:Enrico Calderoni/アフロスポーツ

高橋選手のプログラムで振り返りたいのは『マンボメドレー』。現在、村元哉中選手と組み、アイスダンスという新たなジャンルに挑戦している高橋選手ですが、シングル選手として活躍していた頃のショートプログラムは今でも大人気。アイスショーでもおなじみの演目となっています。ラテンのリズムに乗った熱いダンスと「ウッ!」の決めポーズは、一度見たら忘れられないかも…!?

チームジャパン集結! 夢のメッセージリレーが実現

パジャマ姿の選手たちが自宅でスケート!?

そして安藤美姫さんが中心となった動画「チームジャパン 日本フィギュアスケーターからのメッセージ!」もYouTubeで公開中。「不安な気持ちを抱えながらおうちで待機している方、そしてこんな時期でも仕事に行かないといけない方々、さまざまな方がいると思います。少しでも皆さんの笑顔に繋がりますように」と、スケーターたちがそれぞれパジャマでスケート靴という「おうちスタイル」で登場するメッセージ動画を公開しました。

登場したのは高橋大輔&村元哉中組、田中刑事選手、樋口新葉選手、小松原美里&ティム・コレト組など豪華な顔ぶれ。フィギュアスケートだけでなく、ショートトラックの選手たちもメッセージを寄せています。これも安藤さんの情熱と人望がなせるわざ!

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艶っぽいワインレッドの衣装も、演技を引き立てます。写真:AP/アフロ
艶っぽいワインレッドの衣装も、演技を引き立てます。写真:AP/アフロ

安藤さんのプログラムで振り返りたいのは『ヴァイオリン協奏曲 第1楽章』。伊藤みどりさん、佐藤有香さん、荒川静香さんに次いで日本人歴代4人目の世界女王の座に輝いた2007年シーズンのフリースケーティングです。世界選手権の重圧をはねのけ、次々と迷いなくジャンプを決めていく演技は圧巻! 当時19歳とは思えない豊かな表現力は、会場をスタンディングオベーションの渦に。

誰もが笑顔になってしまう織田さんの「YMCA

そしてこのチームジャパンの動画の中で唯一無音ながら、みんなをハッピーにさせてくれるパフォーマンスを披露してくれたのが織田信成さん。スケート靴のまま地上で踊って見せてくれたのは、現役引退後にもかかわらず2018年のジャパンオープンで高得点を叩き出したプログラム『YMCA』の振り付けです。

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伸びやかなスケーティングと笑顔たっぷりのパフォーマンス。写真:築田純/アフロスポーツ
伸びやかなスケーティングと笑顔たっぷりのパフォーマンス。写真:築田純/アフロスポーツ

ジャパンオープンでは会場を一体化させる素晴らしい演技で、観客を魅了。高さのある4回転ジャンプには場内がどよめいたほど。現役時代のパーソナルベストを超える高得点でチームジャパンを優勝に導きました。ハイレベルながら、思わず手拍子したくなるコミカルな演技は織田さんならではですね。スピンしながら繰り出す「ヤングマン」の手振りも必見です。

浅田真央&舞姉妹は「おうち時間」の達人!

こんな時期だからこそ、あの演技に勇気づけられる

住友生命Vitalityアンバサダーの浅田真央さんは公式チャンネルで「今は外に出たり、なかなか運動できない環境ですね。私もいつも運動していたので、今は自宅でストレッチをしたり、運動をしたり、筋トレをしたりしています。こんな時期だからこそ、自己管理をしっかりして、みんなで乗り越えていきましょう」とコメント。公式サイトでは姉の浅田舞さんとストレッチや筋トレ方法を動画で紹介しています。

また、真央さんのインスタグラムでは「大人の塗り絵」も公開中。カラーセラピーの効果を実感している日々だそう。舞さんはかぼちゃの煮物や筑前煮など、浅田家の食卓を紹介。こちらも併せて「おうち時間」の参考にしたいですね。

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「何度見ても泣いてしまう」という声も多い、ソチ五輪での演技。写真:ZUMA Press/アフロ
「何度見ても泣いてしまう」という声も多い、ソチ五輪での演技。写真:ZUMA Press/アフロ

真央さんのプログラムで振り返りたいのは『ピアノ協奏曲第2番』。世界中が涙した、ソチ五輪のフリースケーティングです。16位と出遅れてしまったショートでのミスを挽回し、全6種類、計8度の3回転ジャンプを次々と決めていく姿はまるで美しい戦士のよう。最後の瞬間まで自分らしく戦い抜いた「奇跡」のような4分間は、こんな苦難の時期こそ振り返りたいプログラムです。

いかがでしたでしょうか? リンクが閉鎖される中でも、世界のために行動するスケーターたちの行動力とその絆には心動かされますね。試合やショーが延期になってしまいましたが、トレーニングや柔軟に励み、普段はできない趣味や家族との交流を楽しむ選手も多いようです。私たちもポジティブマインドで今できることを最大級、楽しんでいきたいですね。

「Precious.jp」では、強く美しく戦うフィギュアスケーターたちを応援すべく、今後もさまざまな情報を発信していきます。どうぞご期待ください!

※高橋大輔選手の「高」は正式には「はしご高」。宮本亜門さんの正式表記は「宮本亞門」です。

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この記事の執筆者
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WRITING :
Fuyuko Tsuji