ランチでしっかりエネルギーをチャージして、午後からもうひと頑張り!……のつもりが、猛烈な眠気に襲われたり、頭が十分に働かなかったりして、いまいち仕事がはかどらないという経験はありませんか?

昼下がりに居眠りしたくなるのは、ランチの食べ過ぎなどが原因だと思われがちですが、作業療法士(リハビリテーションの専門職、国家資格)の菅原洋平さんによれば、そうではないとのこと。実は、昼休みに多くの人がやっているある種の行動が、脳の働きを下げているようなのです。そこで菅原さんから、午後の仕事に悪影響を及ぼしかねない、昼休みのNG行動について教わります。

「午後の仕事に悪影響を及ぼす」ので昼休みにやらない方がいい行動5選

■1:仮眠をとらないのはNG

座ったまま目を閉じるだけでOK
座ったまま目を閉じるだけでOK

お昼休みの後しばらくしたら、猛烈な睡魔に襲われて仕事が手につかなくなった、なんてことはありませんか?

午後の眠気は、満腹のせいと考えられがちですが、実は、お昼に何を食べたか?よりも、生体リズムの影響が大きいのだそうです。

「人間の脳は、目覚めた時点から睡眠物質が蓄積していき、起床から8時間後と22時間後に眠くなるようにできています。つまり、午前6時起きの人の場合、昼食後にあたる14時ごろ、徹夜したら明け方4時ごろにどうしても眠くなってしまうのです。

午後の眠気を回避するには、眠くなる前に短時間の仮眠をとること。そのちょうどいいタイミングが昼休みです。

昼休みに座ったまま、6分~30分、目を閉じましょう。横になると深い睡眠に入り、夜の睡眠に悪影響を及ぼすおそれがあるので、仮眠は座ったまま行います。

5分以内の仮眠でも、ある程度のスッキリ感は得られますが、脳内の睡眠物質が十分に分解されません。逆に、31分以上では深い睡眠になってしまうので、6分~30分がベストです」(菅原さん)

■2:決まった時間に昼休みをとらないのはNG

どんなに調子がいい日も決まった時間に昼休憩をとろう
どんなに調子がいい日も決まった時間に昼休憩をとろう

自分のペースで仕事を進められるテレワーク中の人が特に注意すべきなのは、これ。

午前中に調子のいいときなど、「このまま集中力を切らしたくないから」と、休憩をとらずに勢いで仕事を片付けたくなるときがありませんか? 実は、その日の気分や体調によって昼休みをとったりとらなかったりするのは、長い目で見ると仕事のコスパを下げてしまうとのことです。

「たしかに、調子のいいときに休憩をとらずに一気に仕事を片付けると、そのときは爽快感があるでしょう。しかし、日によって昼休みをとらなかったり、休憩時間をずらしたりすると、その日の気分しだいで浮き沈みがでて、1年間など長いスパンで見ると、効率がよくないことが多いのです。

あるタクシー会社で、12時から14時の間に必ず休憩をとるように指導したことがあります。基本的にタクシードライバーは、自分の裁量で休憩をとる職業ではありますが、決まった時間に休憩をとるようにしたところ、その会社では午後の事故件数が半減したのです。

昼休みの時間はむやみに動かさず、できるだけ毎日、同じ時間帯にとりましょう。そのほうが、生体リズムが整い、安定したパフォーマンスを維持することができます」(菅原さん)

■3:スマホを見ながら昼食をとるのはNG

「ながらランチ」が脳に負担をかける
「ながらランチ」が脳に負担をかける

昼食をとる際、SNSやニュースをチェックするなど、スマホを手放せない人は多いはず。しかし、スマホを見ながら食事をすると、脳に余計な負担をかけてしまうとのことです。

「基本的に、脳はマルチタスクには向かない器官。とはいえ、仕事をしていると、どうしてもマルチタスクをこなさなければならない場面は多々あるので、仕事以外の休憩時間には、なるべくマルチタスクは避けて、脳の消費エネルギーを抑えたいところです。

この点、昼休みにスマホを見ながら食事をとると、無駄に脳のエネルギーを消費してしまい、午後からのここぞという肝心な仕事において、能力を発揮できないおそれがあります。脳のエネルギー枯渇を防ぐために、昼休みはなるべくシングルタスクを心がけましょう。

ただ、“ながら”ランチはNGといっても、例外的に人と談笑しながら食事をとることは推奨できます。他愛ない雑談をすることによって交感神経の働きが抑えられ、リラックスできるので、よい状態で午後を迎えることができるでしょう。

ちなみに、画面越しの対面でも、同じような効果があることが判明しています。テレワーク中でささいなことでいらだちやすくなっている人は、画面越しでもランチミーティングなどやってみるといいかもしれません」(菅原さん)

■4:食事以外の時間に、パソコンやスマホをずっとチェックするのはNG

インプットするばかりでは情報を活用できない
インプットするばかりでは情報を活用できない

さきほど、スマホを見ながらランチはNGとお伝えしましたが、では、食事以外の時間ならスマホを見てもOKなのでしょうか?

「昼休み中は、パソコンのモニターもスマホもオフにして、デジタルデトックスするほうがいいでしょう。

脳の働きを担うネットワークは、大きく分けると2種類あります。情報を入力するときに働く実行系ネットワークと、情報を整理するときに働くデフォルトモードネットワークです。

パソコンやスマホで情報を見続けていると、脳の実行系ネットワークが起動しており、このままでは脳内が整理されず、いくら情報を詰め込んでもそれをうまく活用することができません。

他方、ぶらぶら散歩している最中にふとアイディアがひらめいた、という経験は多いかと思いますが、これはデフォルトモード中の脳内で、取り込んだ情報がつなぎ合わされることで起こる現象です。

ずっとパソコンやスマホとにらめっこしていても、ただ文字を追うばかりで学びにつながりにくいので、仮眠などにあてるほうが昼休みの有効活用だといえるでしょう」(菅原さん)

■5:ずっと室内にこもるのはNG

散歩中にアイデアが浮かぶのはなぜ?
散歩中にアイディアが浮かぶのはなぜ?

入力した情報をつなぎ合わせてアイディアを生み出すには、脳を実行系ネットワークからデフォルトモードネットワークに切り替えることが大切。この観点から、昼休み中にずっと室内にこもりきりになるのもあまり望ましくないようです。

「スマホを見たり、パソコンで作業したりするときにも当てはまるのですが、一点を見つめているときに、脳は実行系ネットワークを使っています。

逆に、外に出ると、視線がおのずと全体の風景を眺めることにより、脳はデフォルトモードネットワークに切り替わるので、室内にこもりがちな人はアイディアが煮詰まらないように、昼休みに散歩するのもいいでしょう」(菅原さん)

以上、午後の仕事に悪影響を及ぼす昼休みのNG行動をお伝えしました。午後からも効率よく仕事を進められるように、心あたりのある悪習慣はこの機会にぜひ改善しましょう。

菅原洋平さん
作業療法士、ユークロニア株式会社代表
(すがわら ようへい)1978年、青森県生まれ。国際医療福祉大学卒業後、作業療法士免許取得。民間病院精神科勤務後、国立病院機構にて脳のリハビリテーションに従事。その後、脳の機能を活かした人材開発を行うビジネスプランをもとに、ユークロニア株式会社を設立。現在、ベスリクリニック(東京都千代田区)で外来を担当するかたわら、企業研修を全国で展開。近著に『脳をスイッチ! 時間を思い通りにコントロールする技術』や、『疲れない」が毎日続く! 休み方マネジメント』などがある。
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この記事の執筆者
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WRITING :
中田綾美