4月10日から新国立劇場が開設している無料配信サービス「巣ごもりシアター」。自宅などでの待機を余儀なくされている人たちに、そして舞台芸術を愛する人たちに向けて、新国立劇場で上演されたオペラとバレエの公演記録映像を期間限定でストリーミング配信するサービスだ。今回、ここで紹介する『紫苑物語』はオペラの舞台としては5作品目の配信となる。

「日本発のオペラを世界に」という大野和士オペラ芸術監督の願いのもと、2019年2月に世界初演された『紫苑物語』。日本現代文学の巨匠、石川淳の中期の代表作と言われる同名小説(1956年発表)を原作に、日本を代表する作曲家の西村朗と詩人の佐々木幹郎がタックを組んで、約2年の創作期間をかけてオペラ化したもの。

 演出は、三島由紀夫に師事した後、フランスを拠点に演出家・俳優として活躍する笈田ヨシ。オーケストラ・ピットで大野和士芸術監督が自らタクトを振るということでも話題となった。

刺激的でエネルギーに溢れ、そして、大きな余韻を残した話題作

新国立劇場「紫苑物語」より
新国立劇場「紫苑物語」より

『紫苑物語』は、歌詠みの家に生まれ、才能がありながらも歌の道を捨てて弓の道へと走る「宗頼」という芸術家を主人公にした物語。その波乱の半生が、幻術と異界が交叉する幻想的な世界観の中で描かれている。

 無頼派作家として人気を博する石川淳の作品のオペラ化ということから、舞台・音楽ファンだけでなく、文学ファンの間でも大きな期待が寄せられ、実際に開演期間中は、連日満場の客席のスタンディングオーベンションが続いた。“世界初演”に立ち会った海外メディアからも多くの公演評が発信され、注目度の高さが改めて確認された。世界的なオペラ賞である International Opera Award 2020 の World premiere 部門にもノミネートされている。(受賞作品発表は2020年9月予定)

新国立劇場「紫苑物語」より
新国立劇場「紫苑物語」より

 日本を代表するオペラハウスとして、豊潤なレパートリーで多くの観客を魅了し続けてきた新国立劇場。そのレパートリーに、新たに「紫苑物語・2019年初演」と記せられた記念すべき作品。あらかじめ原作となった短編小説『紫苑物語』を読むもよし、予備知識なしで視聴するもよし。刺激的でエネルギーに溢れた舞台を、じっくり堪能したい。

西村 朗 作曲 オペラ『紫苑物語』

2018/2019シーズン(2019年2月24日上演)
全2幕 日本語上演/日本語字幕付。
配信日時:2020年5月22日(金)15:00から29日(金)14:00

おうちでまったり!「巣ごもりシアター」はこちら

おうちでまったり!「巣ごもりシアター」

※動画視聴に伴う通信料は視聴者の負担となります。

その他のお問い合わせはこちら

新国立劇場オペラサイト(日本語)

新国立劇場オペラサイト(English)

配信前にこれらを見ておけば、オペラ「紫苑物語」を観る楽しみが深まる。

巣ごもりシアター『紫苑物語』関連動画集

2019/2020シーズン終了にあたり新国立劇場オペラ芸術監督・大野和士からのメッセージ

新国立劇場提供。「紫苑物語」リハーサル風景。

新国立劇場オペラ部門は6月上演予定だった『ニュルンベルクのマイスタージンガー』の公演中止決定により、2019/2020シーズンの後半5演目がすべて中止に。このままシーズン終了を迎えることとなった。この発表とともに、大野和士オペラ芸術監督からのメッセージが新国立劇場ウェブサイトに掲出。メッセージはこちらで読むことができる。

この記事の執筆者
音楽情報誌や新聞の記事・編集を手がけるプロダクションを経てフリーに。アウトドア雑誌、週刊誌、婦人雑誌、ライフスタイル誌などの記者・インタビュアー・ライター、単行本の編集サポートなどにたずさわる。近年ではレストラン取材やエンターテイメントの情報発信の記事なども担当し、ジャンルを問わないマルチなライターを実践する。
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