withコロナ期と言われる中、外出自粛が解除されても、オンラインで済むことはオンラインにするなど、コミュニケーションの形は変わりつつあります。

そこで今回は、営業などのビジネスのコミュニケーションにおいて、成果を出す話し方をお届けします。

重要なのは、相手の「求めていること」を掴み、相手の心を動かすトークをするために、まずは「空気を読む」こと。

その話し方の効果は、かつて営業職時代に成約率98%、年収7,000万円ほどで、長者番付にも名前が載ったことがあり、現在はビジネスコンサルタントとして活躍する和田裕美さん自らが証明しています。

そんな和田さんに、現在、増えているテレワークのコミュニケーションのポイントや、自宅でも実践できる「人の心を動かす話し方」の練習方法を教えていただきました。

相手の心を動かすには「相手が求めていること」を読み解くこと

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どんな場面でも人は何かを求めている

まず和田さんは、営業やビジネスの人間関係における話し方で大事なのは「人の心を動かすこと」だといいます。

「目の前の人がもっと自分を好きになって、より元気になり、前向きな決意ができて、さらに行動していけるようになってもらうための話し方、それが『人の心を動かす話し方』です。

営業という仕事を通して、1万人近い人と会話をしてきたなかでわかったことがあります。それは、『どんな場面でも人は何かを“求めている”』ということ。

この求めているものが何なのか?を読み解くことができるようになると、人の心がわかり、その人の求めている言葉を発することができるようになります。

もし、あなたの目の前にいる人が、あなたの求めているもの、例えば『こんなふうになりたい』『これが欲しい』『この問題を解決したい』という思いを叶える方法を教えてくれたり、それらの問題を解決してくれると言ったら、あなたはその言葉に少なからず興味を抱き、影響を受けます。そして、心を動かされるはずです。

ですから、ビジネスにおいて『人の心を動かしたい』と思うのなら、まず『この人が求めているものは何なのか?』を知る必要があります。

しかし、多くの人は遠慮や見栄で、求めているものをなかなか口にしません。だから、相手の求めているものを見つけるために、まずは『空気を読む』のです。

空気を読むことで、相手がしてほしいことや、相手が求める言葉がわかるようになります。そして、心の真ん中に届く言葉を使えるようになります」

「空気を読む」は能動的に「相手のために」行うことがポイント

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空気は相手のために読めば疲れない

相手の心の真ん中に届く言葉を使えるようになれば、営業をはじめ、ビジネスの成果も出そうな気がします。でも「空気を読む」のは疲れると思う人もいるかもしれません。和田さんは次のように話します。

「人は、言葉にしない言葉をたくさん持っています。日本人は特に『阿吽(あうん)の呼吸』や『察する』などを得意とするので、とにかく空気を読まないとといけないシーンがたくさんあります。

確かに、空気を読みすぎると疲れてしまいますが、今後長く付き合っていこうとする相手や、何かものを買ってもらおうとする相手など、何かしらのゴールがある相手であれば、能動的に空気を読んでいくと、大きなメリットがあります。

また、空気は自分のメリットのためだけに読むと、すごく疲れます。でも、相手にハッピーな気持ちになってもらうために読むと、疲れないのです。相手のために空気を読めるようになると、相手の心が動くような空気をつくることができるようになるからです」

テレビ会議でも「空気を読む」コミュニケーションのポイント3つ

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相手を信じて

最近では、会社勤めから在宅勤務に変わったり、外出を控えて自宅で過ごすことが増えている人も多いでしょう。このような時期こそ、「空気を読む」ことは、人と人とのコミュニケーションにおいて重要になってくると和田さんは話します。

そこでテレワーク時に、空気を読むコミュニケーション術を教えていただきました。

■1:テレビ会議では、しっかりリアクションをとる

「テレワークではテレビ会議が増えたというお話をよく聞きますが、対面と違って、相手の空気を読みづらいところがあります。

まず、相手は会議中にカメラ目線ではないことが多く、手元の書類を見るために下を向いていたり、カメラから外れていたりすることも。普段のようにアイコンタクトを取りながらしゃべることができません。

そんなときこそ、私はパソコンの前で、相槌を打つときに、大げさにうなずくようにしています。なぜなら、話している相手は当然『自分の話を聞いてほしい』と思っているからです。

ですから『あなたの話を聞いていますよ』という意思表示のためにも、相槌のたびに大げさにうなずいて、相手の求めていることをかなえるようにしているのです。

テレビ会議とはいえ、画面の向こうに人が居るという意識でやることがポイント。よくテレビ番組で、右下のほうに小さい画面が出ていて、タレントが流れている映像を見ながらリアクションをとっている姿が映し出されることがありますよね。

そのときに、よいリアクションができるタレントは使えると言われますが、4人のオンライン会議も、それと同じだと思っています。

でも、みんな下を向いていたり、カメラから顔が抜けていたりして、もったいないことをしていると感じます。カメラ目線で『うんうん』とうなずくだけでも、人に差をつけられると思います」

■2:電話・メール・チャットでも空気を読む

デジタルツールを使う場合でも空気を読む
デジタルツールを使う場合でも空気を読む

「空気を読みにくい電話や、メール・チャットなどの文章は、空気を読み切れないと返事を間違ってしまったり、誤解を生んでしまったりと、コミニケーションミスが起きやすいです。

例えば、信頼している上司が『お前、バカだなぁ』と笑いながら、ふざけているのが伝わって来る話ぶりのときは会話も弾みますが、メールで『お前、バカだなぁ』という文面が飛んできたら、ショックではありませんか?

まったく受け取り方が違いますよね。また、チャットとかメールは証拠に残ってしまうので、もし上司の立場であれば、気をつけないといけません。ですから、テレワーク中の電話やテレビ会議、メールやチャットなどは、より空気を読みながら、コミュニケーションを取りましょう」

■3:遠隔コミュニケーションでは「相手を信じている」声かけを

「もしあなたが上司の立場であれば、離れている部下に対して『サボってるんじゃないか?』と思うかもしれません。しかし、『サボってるかも』と思って声をかけると、『あなた、ちゃんとやってるの?』という声かけになりますし、返事が遅いと『あなた、寝てるんじゃないの?』などの、ネガティブな声かけになってしまいます。

そうなると、部下のやる気が下がってしまいます。

部下がやる気を出すためには、『あなたのことをわかっていますよ』という声かけをすることです。人は誰でも『自分のことわかってほしい』と思っています。特に在宅勤務では、孤独で寂しいという声が多く聞かれます。

ですから、上司はそれを理解してあげて、『部下が孤独だけれど、頑張って仕事をしている』という前提で話をすると、よい声かけができますし、部下のやる気も出ます。

また、部下に対して疑う気持ちではなく、信じている気持ちで立ち向かうと、部下は『信じられているんだ』と思って、たとえサボっていたとしても、部下の気持ちも変わります。

よくコンビニのトイレに『いつもきれいに使っていただき、ありがとうございます』と張り紙が貼ってありますが、これは店の人が、使う人に対して『きれいに使ってくれるだろう』と信じている気持ちを伝えています。

すると、使う人は『きれいに使うと信じられているから、きれいに使わないとな』という心理になり、行動するのです。それと同じで、上司も部下を信じてあげること。そうすると上司も自分の人格が上がりますし、部下も『信じられているんだ』と思って適切な行動するでしょう。

このとき、1週間後に仕事をやった量をあとで見るからね、などと伝えておくとよいでしょう」

自宅でできる「人の心を動かす話し方」のレッスン2つ

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マスクでも微笑みを!

続いては、「人の心を動かす話し方」を身につけるために、自宅でできる練習方法をふたつ、和田さんに教えていただきました。

■1:「マスクをしたままの笑顔」で、目が動いているかチェック

「当たり前のことですが、表情は相手と話をするときに、とても重要です。特に、笑顔は人の心を動かすのに欠かせません。しかし最近は、マスクをつけながらコミュニケーションをとることが多いので、笑ったときに口元が隠れており、つくり笑顔だと目が笑っていないことが多く、冷たい表情に見える人も多いのです。

マスクをつけて笑顔をしたときに、目が笑っているかどうか、ぜひ鏡の前でチェックしてみてください。もし鏡の前で笑ったときに、目が動いていないなと思ったら、目の周りの筋肉、眼輪筋を動かす練習をしてみてください。そしてマスクのときは特に、たとえつくり笑顔だったとしても、目を動かすようにしましょう」

■2:良いしゃべり方も悪いしゃべり方も真似をして、色んなことを学ぶ

「家で過ごす際には、YouTubeなどの動画や、ドラマや映画などを観ることも多いでしょう。そのとき、よいしゃべり方だなと思った人がいたら、そのしゃべり方を真似してみましょう。例えば、自分の心に響いた演説の、間の取り方などを真似することで、体感しながら、よいしゃべり方を身につけることができます。

また、人のネガティブなしゃべり方を真似するのもおすすめです。例えば、誰かから嫌悪感を感じた話し方をされたとき、その人の真似をしてみるのです。

私が開催している話し方セミナーでも、警察官や大物のしゃべり方の真似をしてもらうことがあります。真似をすることによって、認知学習をしているため、『私はそういう話し方はやめよう』と思う効果があります。

また、実際にそういう嫌なことを言われたときにも、認知が先に走るので、冷静に人のことを見ることができるというメリットもあります。例えば、誰かから意地悪なこと言われたとします。

普通なら、その意地悪なことに対して、直接ショックを受け、嫌だなと感じますよね。しかし、その意地悪なしゃべり方を真似したことがあるのであれば、意地悪なことを言われたときに、『あっ、このしゃべり方は前に真似した、あの嫌なしゃべり方だ!」と思い、ワンクッション置くので、自分の受け取り方が変わるのです。

つまり嫌だと感じた人のしゃべり方の真似をするということは、自分の心の状態をよくして、ポジティブに受け取ることができるようになるのです」

以上、ビジネスコンサルタントとして活躍する和田裕美さんに、「人の心を動かす話し方」をするためのポイントとなる「空気を読む」方法や、話し方の練習方法を教えていただきました。

テレワーク中はもちろんのこと、あらゆる人とのコミュニケーションにも応用できそうです。「空気を読みにくい」コミュニケーションが多い今こそ、意識してみましょう。

和田裕美さん
(わだ ひろみ)成約率98%という驚異の数字で世界142か国中2位を収めた女性営業のカリスマ。累計220万部超えの著書には『成約率98%の秘訣』『人生を好転させる「新・陽転思考」』などがあり、絵本「ぼくはちいさくてしろい」は小学校の道徳の教科書に採用。最近ではNHK Eテレなどへも出演し幅広く活動中。オフィシャルサイト「人の心を動かす話し方」

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この記事の執筆者
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WRITING :
石原亜香利
EDIT :
安念美和子、榊原淳