接客業や医療従事者、清掃作業員など、現場で働くさまざまな職種では、テレワークや在宅勤務を導入することができません。かといって簡単に休業するわけにもいかないのが現実。テレワークできない業種の方々は日常生活のみならず、出退勤時や業務中の新型コロナウイルス対策に人一倍、気を配っていらっしゃることでしょう。

とはいえ、慣れ親しんだ生活習慣を変え、新しく取り入れた習慣を長期的に継続していくのは、なかなか大変ですよね。最初の1週間は、やる気満々で取り組んでいたとしても、2~3週間経つとサボりがちになり、1か月後には元どおりなんてことも……。

「例えば、マラソンでスタート直後から100メートル走のペースで全力疾走したら、完走は難しいでしょう。新しい習慣を定着させるときも、マラソンと同じようにペース配分を考えることが重要です」

そう語るのは、『何でも「続く人」と「続かない人」の習慣』の著者である伊藤良さん。まずは試運転のつもりで、新しい習慣に慣れることからスタートしましょう。

慣れてきたら、その習慣を続けるための仕組みづくりにエネルギーを注ぎます。最も力を入れるべきなのが、この仕組みづくりの段階。仕組みができてきたら、少し力を抜いてペースを維持することに注力するのです。

ペース配分のほかにも、新しい習慣を身につけるときのコツや注意点があります。以下でご紹介するポイントを念頭に置いて、積極的に新習慣を取り入れていきましょう。

テレワークできない業種の人向け!新しい習慣を身につけるコツ5選

■1:真っ先に数字目標を設定するのはNG

過去にダイエットに取り組んだものの、残念ながら挫折してしまった経験がある方は多いはず……。挫折の原因のひとつとして考えられるのが、最初に数字目標を設定してしまうことです。伊藤さんによると、先に数字目標を設定するのではなく「どんな自分でありたいか」から逆算して、今やることを考えるのが良いのだとか。

「新習慣を身につけようとしたとき、真っ先に『5時に起きたい』『10kg痩せたい』など、数字で計れる目標を考えてしまいがちです。しかし、それだけだと『なぜ目標に向かって努力するのか』という動機が曖昧なので、挫折しやすくなってしまいます。

そこで、最初に『どんな自分でありたいか』という理想像、つまり行動する理由(動機)を明確にしてみましょう。

例えば、まず『外国の取引先と英語でコミュニケーションをとっている自分』という理想像を設定したとします。この理想を実現するために『英語の学習を習慣化する』というやりたいことが生まれ、そのための目標として『TOEICで800点以上を獲得する』という数字目標が逆算されるわけです。

ありたい姿→やりたいこと→欲しいもの、という順番で考えれば、行動する理由=ありたい姿がハッキリしているので、数字目標=欲しいものに向かって努力することができるでしょう」(伊藤さん)

単に数字目標を追いかけるだけでは、挫折しそうになったとき、心の支えになるものがありません。数字目標よりも先に、自分の理想像を設定することが大切なのですね。

■2:3つの時間軸で未来を想像してみる

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『10・10・10の法則』で未来を想像してみましょう。

よい習慣も悪い習慣も、その効果を実感するまでに数か月、数年という時間を要します。そのため、新習慣を続けられなくなる理由としてありがちなのが、「効果がなかなか実感できず、意欲が低下するから」。そんなとき、意欲を高めるために有効なのが10分後、10か月後、10年後の未来を想像することです。

「例えば、複業家を目指そうかどうか迷っているとしたら、『複業家を目指したら、10分後に自分はどう変わるのか?』『10か月後に後悔しないか?』『10年後に幸せになっているか?』と、自分自身に問いかけてみましょう。このように、10分後、10か月後、10年後という3つの時間軸で、自分の未来を想像して決断を下すことを『10・10・10の法則』と呼びます。

未来を想像するときのポイントは、『それができたら、どんなよいことがあるか?』というポジティブな質問と、反対に『それができなかったら、どんな悪いことがあるか?』というネガティブな質問の両方を行うこと。

それぞれの未来のイメージから、『こうなりたい』『こうなるのは嫌だ』といった感情を呼び起こすと、それが自分を動かすパワーになります」(伊藤さん)

10・10・10の法則を実践する際、「自分は慎重派だ」という方は、特にネガティブな質問を重視してみてください。なぜなら、ネガティブな未来に起こり得るリスクを想像することで「できなかった場合」に対する危機感が高まり、動き出せるようになるからです。

■3:仕事の後に取り組もうとするのはNG

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学習に最適な「朝時間」を有効活用。

新習慣に取り組むのにちょうどいいタイミングは、その人自身の生活リズムや、どんな習慣を行うかによって異なるでしょう。しかし資格取得や語学といった勉強、読書など、頭を使うような新習慣を身につけたいなら、仕事が終わって帰宅したあとにやろうとしてはいけません。

「1日の疲れが溜まっている夜は、どうしても意志力が低下しています。仕事を終えて帰宅したあとであれば尚更です。頭を使うタイプの新習慣には、朝の時間に取り組むことを強くおすすめします(ただし1日の振り返りや日記をつけるといったリラックスを伴う習慣なら、夜でも構いません)。

早朝は脳がエネルギーに満ちているので、学習に関する新習慣を行うのに最適です。出勤前に確保できる時間は限られていると思いますが、むしろ時間制限があるほうがやるべきことに集中できるため、夜遅くまでダラダラやるよりも効率的。

早朝の時間をいかにうまく活用するかが、1日のパフォーマンスを決めると覚えておきましょう。

ちなみに、もし朝の時間内にやるべきことが終わらなければ、ランチタイムの30分や仕事が終わった直後に少しカフェに寄るなど、別のタイミングに時間を設ければOK。計画どおりに進められなかったときのために保険をかけられるのも、朝時間を活用するメリットですね」(伊藤さん)

疲労がピークに達している仕事のあとに、資格の勉強のような頭を使う習慣に取り組もうとしても、疲れていて集中できない可能性大。夜は無理せず早めに就寝して、翌朝の「エネルギーが回復した自分」にバトンをつなぎましょう。

■4:完璧を求めず「最善を尽くせばOK」と考える

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完璧にこなすことよりも毎日続けること。

新習慣に挫折しやすい方の共通点として「やるからには完璧にやりたい」「100点を目指そう」といった完璧主義の傾向があります。もちろん、決めたことを完璧に実行できれば理想的。ですが、100点を目指してしまうと、それ以下の点数を許せなくなり、習慣を継続するのが苦しくなることも……。

「習慣化において大事なのは100点を目指すことよりも、とりあえず30点でも毎日続けることです。完璧主義を手放し、とにかく最善を尽くせばOKという発想で取り組むことを、コーチングでは『30点主義』と呼んでいます。

例えば、毎日15分ジョギングすることに取り組んでいるとき、仕事が忙しくて時間が割けない、体調がよくない、などの問題が生じたとしましょう。ここで『15分走れないから、今日は運動の習慣を達成できなかった』と諦めてはいけません。

ジョギングの本来の目的が運動することなのであれば、5分だけ軽く走る、就寝前にストレッチをする、といった代わりの運動をすればOKと考えてみてください」(伊藤さん)

どんな習慣でも、完璧にこなすことよりも毎日続けることが大切。30点主義を心掛ければ、イレギュラーな事態にも柔軟に対応できるようになるはずです。

■5:他人と比較するのはNG

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成長、貢献、感謝という3つの感情に意識を向けて。

習慣化による成果は、実感できるまでに時間がかかるのは先述のとおり。ですから、途中で投げ出したくなることもあるでしょう。そんなときに、つい気になってしまうのが他人の活躍です。

たしかに「あの人はあんなに成果を出しているのに、自分は……」と考えてしまう気持ちもわかりますが、自分と他人を比較してはいけません。

「もし自分と他人との比較で落ち込むことがあったら、ほかの人に勝つことよりも、自分のレベルアップを目指しましょう。というのも、ほかの人や社会の常識にとらわれてしまうと、自分の心の声が聞こえなくなってしまうからです。

それでも他人と比べてしまうときは、成長、貢献、感謝という3つの感情に意識を向けてみてください。この3つのバランスがとれていないと、他人との比較に気を取られやすくなってしまうので要注意です。

まず『成長』では、どんなレベルでも構わないので、自分が以前よりも成長しているところを見つけましょう。

例えば、3年後の自分を想像し、そこに近づいているかどうかを日々記録しておくと、今までできなかったことができるようになっている、と気が付くはず。

次に『貢献』では、自分が誰かに与えているものや与えてきたものに目を向けます。

ここで大切なのは、ほかの人にプラスの感情を与えようとするスタンス。なので、役に立つ情報があったから家族に知らせた、面白い映画をSNSで紹介した……といったものでもOKです。

そして、今のあなたが『感謝』できることにもフォーカスしましょう。

『感謝は不安の解毒剤』と言われるように、不安を感じたときこそ、感謝の視点で身の回りの環境を見直してみてください」(伊藤さん)

成長、貢献、感謝の3つの感情を常日頃からバランスよく感じることで、本来の自分の価値観を取り戻すことができるでしょう。


気合と根性だけで新習慣を身につけようとするのは、あまりにも無謀……。やみくもに取りかかるのではなく、まずは習慣を定着させるコツを理解することから始めましょう。それが、毎日少しずつでも自分をアップデートしていくための第一歩です。

伊藤 良さん
良習慣プロフェッショナルコーチ
(いとう りょう)国際コーチ連盟アソシエイト認定コーチ、GCS認定プロフェッショナルコーチなどの資格を持つ「習慣化の達人」。セミナーや読書会を主催するほか、ブログ『良習慣の力!』の運営、メルマガ『複業で自分を磨く習慣』の発行、ビジネス書の執筆など、複数の分野で活動中。http://www.ryoushuukan.com/
この記事の執筆者
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WRITING :
上原 純