「拘泥る」の読み方は?意味はポジティブ?ネガティブ?どちらともとれる?

本日7月9日は、文豪・森鴎外の忌日『鷗外忌』です。

鷗外といえば、作家業のほか、医師としても大変なエリートだったことで有名です。

年齢を2歳多く偽り、第一大学区医学校(現在の東京大学医学部)予科に、12歳で入学。

その後ドイツへの国費留学を経て、45歳で日本の陸軍医官のトップとも言われる地位陸軍省医務局長に就任しています。

エリート医師と作家、という「二足のわらじ」を履き、作家としても大成した森鴎外、大変優秀な人だったのですね。

…というところで、本日の1問目です。

【問題1】「拘泥る」ってなんと読む?

「拘泥る」という日本語の読み方をお答えください。

ヒント:「ものごとに固執すること」という意味の「拘泥(こうでい)」という熟語に送り仮名「る」をつけた熟字訓です。

<使用例>

「理想が高いのはいい事だけれど、拘泥りすぎると、周囲を疲弊させてしまうわよ?」

「○○○る」と読み仮名3文字です。
「○○○る」と読み仮名3文字です。

…さて、正解は?

※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。

正解は↓に!!
正解は↓に!!

正解は… 拘泥(こだわ)る です。

「こだわる」部分は、人によって違いますし、度合いも違いますが…
「こだわる」部分は、人によって違いますし、度合いも違いますが…

「拘泥(こうでい)」の「拘」という字は、「拘(こだわ)る」「拘(とら)える」「拘(かか)わる」などの訓読みを持ち、「こだわる/ひっかかる」という意味と「つかまえる/とどめておく」という意味を持ちます。

つかまえたりとどめておくのは、ひっかかる、こだわるがゆえですので、「こだわる」という意味が最も強い漢字、といっていいでしょう。

「拘泥(こだわ)る」という表現にも適用されている「熟字訓」は、日本語へのこだわりを大切にするがゆえの、当て字的な側面を持つ読み仮名です。

当て字といえば、森鴎外主宰の同人会「新声社」の訳詞集に『於母影(おもかげ)』というタイトルがあります。短いタイトルながら戦略的な当て字の効果で、なんともノスタルジックで優しく、かつ、どことない憂鬱さをまとったようなイメージが興味をひきます。良い意味でのこだわりを感じますよね?

しかし一長一短、森鴎外は若い頃はこだわりが強すぎて、主義主張の違う相手とは徹底的に口論したため「論争壁」と揶揄されるような部分もあったのだとか。その後、一時は「左遷」といわれるような人事に甘んじた時期を経て「丸くなった」とも評されています。…なんだか親しみを感じるエピソードですよね?

「こだわる」という言葉には「好みに妥協しない」「独特の見識を大切にする」的なポジティブ・イメージもありますが、

ヒントの例文のように「こだわりが強すぎて聞く耳を持たない」というネガティブな意味で使われることもあります。

…というところで2問目のクイズです。

【問題2】『泥む』ってなんと読む?

「泥む」という日本語の読み方をお答えください。

ヒント:「停滞する」「執着する」という意味を持つ日本語です。

<使用例>

「この場所から暮れ泥む海辺の景色を見ていると、心がとても落ち着くの。」

「○○む」と読み仮名2文字ですが「どろむ」ありませんよ!
「○○む」と読み仮名2文字ですが「どろむ」ありませんよ!

…さて、正解は?

※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。

正解は↓に!!
正解は↓に!!

正解は… 「泥(なず)む」 です。

「なずむ」だけだと耳慣れないイメージですが、「暮れなずむ」はお馴染みですよね?

「暮れなずむ」の「なずむ」は、この字なのね!と発見された方も多いのでは?「暮れ泥む」は、「暮れていく状態が停滞する=日暮れがゆったりとしている」状態を表します。…美しいですね。

漢字の訓読みは、その漢字の理解を深めるヒントになりますが、「泥」という漢字に「停滞する」「執着する」という意味があるため、

「拘(こだわ)る」と合体した熟語「拘泥(こうでい)」は、単に「こだわる」のではなく、「固執する。とらわれる。」というような、ネガティブな意味になります。

「好みに妥協しない」「独特の見識を大切にする」ようなポジティブな「こだわる」の漢字表記に「拘る」は使用できますが、

「拘泥る」という表記だと、ネガティブなこだわり方を表現してしまいます。

また、

「あなたのこだわり方って、一家言ある、という感じがして憧れるわ!」

という表現はできますが、無理に熟語を使って

「あなたの拘泥って」などというと、その時点でけなしている形になってしまうので、お気をつけください。

本日は、

・拘泥(こうでい)

・拘泥(こだわ)る

という日本語と

・拘(こだわ)る

のニュアンスの違い、また

・泥(なず)む

という読み方をおさらいしました。

 

この記事の執筆者
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ILLUSTRATION :
小出 真朱