世界中のプレミアムブランドから続々と登場するスーパーSUV。パフォーマンスは500馬力オーバー、最高速250km/hを超えることなど当たり前のようになり、今やスーパーカーに匹敵する注目度だ。そんな中で今世紀に入って以来、ポルシェのカイエンなどとともにこのセグメントを牽引してきたのがBMW「X5」。2019年から日本に導入された4世代目はさすがの円熟味を帯びて、男の心を旅へと誘う。

意外なほど穏やかな乗り心地

「X5 M50i」は、いわゆる“Mモデル”ではなく(そちらは「X5 M」となる)、高性能モデルを手がけるBMW Mが、普段使いでの快適性も考慮してチューニングしている。
「X5 M50i」は、いわゆる“Mモデル”ではなく(そちらは「X5 M」となる)、高性能モデルを手がけるBMW Mが、普段使いでの快適性も考慮してチューニングしている。
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足元を固めるのは、22インチの「Mライト・アロイ・ホイール・ダブルスポーク・スタイリング」。
足元を固めるのは、22インチの「Mライト・アロイ・ホイール・ダブルスポーク・スタイリング」。

「X5 M50i」は、とても穏やかなクルマだ。

スペック上はものすごいのだが、アクセルを軽く踏み込むだけで必要な加速が手に入るので、持てる凶暴性が影を潜める。何よりもV8エンジンの、まるでモーターのようなスムーズさによって、市街地でも郊外でも心地よく快適に走れるのだ。

同時にシャシーの良さのおかげで、ミシリともいわずに平和な安定性と静粛性を伴いながら駆け抜ける。

しかも、ハイパフォーマンスカーでは当たり前のように感じるサスペンションの堅さも、ごくごく普通の日常的な走りではストレスに感じることがない。装備されているアダプティブエアサスペンションは4輪にセンサーが装備され、路面状況をセンシングしているため、つねに最良のサスセッティングを保つ。これによって独特の穏やかな乗り心地が実現できているわけだ。

高速道路では、快適さはさらに輝く。法定速度内であれば、アイドリングより少しだけ高い程度のエンジン回転のまま巡航できるのだ。これとBMWの最先端運転支援システムによるACC(アダプティブ・クルーズ・コントロールシステム)で、なんとも快適なクルージングである。

コストパフォーマンスに優れるのはBMWならでは

スポーティ感重視のコクピットデザイン。それでもオプションの「BMWインディビジュアルエクステンドレザーメリノ(アイボリーホワイト)と「BMWインディビジュアル・ピアノフィニッシュ・ブラックトリム」のおかげで、ラグジュアリーな雰囲気。レザーの肌触りはとてもしなやかだ。
スポーティ感重視のコクピットデザイン。それでもオプションの「BMWインディビジュアルエクステンドレザーメリノ(アイボリーホワイト)と「BMWインディビジュアル・ピアノフィニッシュ・ブラックトリム」のおかげで、ラグジュアリーな雰囲気。レザーの肌触りはとてもしなやかだ。
後席に友人が乗ったときに活躍するリアエンターテインメントシステムも装備(オプション)。
後席に友人が乗ったときに活躍するリアエンターテインメントシステムも装備(オプション)。
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と、ここまではまだ「X5 M50i」の素顔の半分である。残りの素顔は山道で垣間見ることができた。コーナーの連続する、登りのワインディング。アクセルを踏み込めば、低重音のエンジンサウンドが車内にもしっかりと聞こえてくる。

コーナーに突入すればロールがガチッと止まり、ボディを極力フラットに保とうとサスペンションが働く。同時に路面のうねりをキッチリとトレースしながら、タイヤがポンポン跳ねることもない。全幅が2mを超える巨体なのに、スポーティな走りの中ではその大きさをまったく意識することなく、いや、むしろ小さく感じるほどで、気持ちよく攻めることができる。

重心の高いはずのSUVだが、それさえも忘れさせてくれるような安定感だ。

車両価格は1361万円(本体価格)。テスト車両は約350万円のオプションを装備しているが、それでも1700万円強。2000万円オーバーもざらのこのセグメントにおいて、さすがはBMW。コスパの高さは際立っている。

【BMW「X5 M50i」】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,935×2,005×1,770mm
車両重量:2,320kg
駆動方式:4WD
トランスミッション:AT
エンジン:V型8気筒DOHC 4,394cc
最高出力:390kw(530PS/6,400rpm)
最大トルク:750Nm/1,800~4,600rpm
価格:¥13,610,000(税込)

問い合わせ先

BMW

TEL:0120-269-437

この記事の執筆者
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで「いかに乗り物のある生活を楽しむか」をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。