自粛期間を経たことで音楽劇からミュージカルへ路線変更!アクの強い人間たちが歌い、躍りまくる極上のエンターテイメント

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『フリムンシスターズ』

昨年、「Bunkamuraシアターコクーン」の芸術監督に就任した松尾スズキ。

就任会見は自らが書き下ろした新曲などでつづるショー仕立ての「就任謝罪会見」の趣向で行なわれ、わざと? 転んで登場するなどサービス精神旺盛。文化村社長を「村長」と呼んだり、「♪オレを選んだお前が悪い~」なる歌詞が登場するなど、確信犯的にやりたい放題路線で行くことをうかがわせました。

魅惑の三人組を軸に描く友情物語『フリムンシスターズ』

そんな芸術監督の就任後最初の作品が、2020年10月24日(土)に上演される『フリムンシスターズ』。長澤まさみと秋山菜津子、そして阿部サダヲが演じる魅惑の三人組を軸に描く友情物語です。

故郷沖縄での忌まわしい過去を消し去り西新宿で暮らす女(長澤)が、絶不調のミュージカル女優(秋山)とその親友であるゲイ(阿部)と出会い――。

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左/阿部サダヲさん、中/長澤まさみさん、右/秋山菜津子さん

さらには、自殺願望をもつ青年や足の不自由な女優の妹、謎のバスタオルおじさん(プレスリリースの文言通り)、激しめのオカマ(これまたプレスリリースの文言通り)など、「狂った人間=フリムン」が次々と登場、歌って踊って怒涛のラストを迎えるとか(これまたプレスリリースの文言通り)。

演じるは、皆川猿時、栗原類、村杉蝉之介、池津祥子、猫背椿、片岡正二郎、オクイシュージといった個性楽しみな面々です。

音楽は、映画やテレビドラマなどを幅広く手がけている渡邊崇が担当。ちなみに、自粛期間中、あまりに時間があったことから、当初は音楽劇の予定だったのが、ミュージカル新作として発表することとなったそう。

長澤は松尾上演台本・演出の舞台『キャバレー』でミュージカルに初挑戦しており、このとき秋山とも共演。今回もそのふたり&阿部が歌い踊りまくる姿をたっぷり観られそうです。

芸術監督就任早々、コロナ禍に見舞われることとなり、7月初めに「コロナの荒野を前にして」なる文章を発表した松尾。困難に直面した劇場文化の現状を「荒野」と表現、「荒野に立ちがちな演出家です」と所信表明しました。

そのうえで、7月末に発表されたWOWOWが劇場とのコラボレーションで制作したオリジナル番組『劇場の灯を消すな!Bunkamuraシアターコクーン編』のオープニング映像では、スーツ姿で「Bunkamura」の入り口から「シアターコクーン」のロビー、はたまた女子トイレ、そして客席まで軽妙に踊り狂って進む姿を見せ、「荒野」に対する彼自身のあふれんばかりの想いを表現してみせました。

興味のない人々からは「不要不急」と端的に片づけられがちなライブ・パフォーマンス分野において、シアターコクーン新芸術監督が確信犯的に見せる魅惑の現状打開作に大きな期待がかかります。

Information

  • 『フリムンシスターズ』 
  • 西新宿のコンビニで住み込みのバイトをしながら無気力に暮らす女<ちひろ>。実は沖縄のユタの血筋で不可思議な能力をもつ彼女が、昔から憧れていたかつての大女優<みつ子>と出会ったことから、その親友でゲイの自称「2億円のオカマ」<ヒデヨシ>も巻き込んで、コンビニにかかわる人々や新宿二丁目界隈の人々をも巻き込んで…。出演は「シアターコクーン」初登場となる長澤まさみ、秋山菜津子、阿部サダヲほか。
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  • 会場/Bunkamura シアターコクーン
  • 公演期間/2020年10月24日(土)〜11月23日(月)
  • TEL:03-3477-3244(Bunkamura)
この記事の執筆者
TEXT :
Precious編集部 
BY :
『Precious11月号』小学館、2020年
美しいものこそ贅沢。新しい時代のラグジュアリー・ファッションマガジン『Precious』の編集部アカウントです。雑誌制作の過程で見つけた美しいもの、楽しいことをご紹介します。
WRITING :
藤本真由(舞台評論家)
EDIT :
宮田典子(HATSU)、喜多容子(Precious)