東京の街がデザインとアートに席巻される12日間。今年の見どころは?

「DESIGNART TOKYO(デザイナート・トーキョー)」とは、“POWER TO THE CREATIVES” をコンセプトに、世界中からアート、インテリア、ファッション、テクノロジーなどさまざまなジャンルのモノやコトが東京を舞台に各所で繰り広げられる大規模イベント。

今年で4回目となる「デザイナート・トーキョー 2020」は、前回より会期を2日間延長し、2020年10月23日(金)~11月3日(火・祝)までの12日間開催されます。

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今回のデザイナートのメインビジュアルとなった、フランス在住オイルチョークアーティストのPhillippe Baudelocque(フィリップ・ボードゥロック)によるアートワーク

約150組が参加し、都内70か所を超える会場で同時多発的に展示やイベントが行われるほか、今年はニューノーマル時代のイベントのあり方を模索。デジタル・オンラインコンテンツをさらに強化するとともに、オンラインエキシビションも初登場します。

本記事では、Precious.jpの人気連載「身長156cmのインテリア」を執筆しているインテリアエディターDが、人の手が生み出すアートの普遍的な力を全身で感じられる2つの特別展示をはじめとする今年のおすすめ7選と、3つの楽しみ方をご紹介します。

■1:特別展1|大胆かつ繊細な線で描く宇宙。チョークアーティスト、フィリップ・ボードゥロック@KASHIYAMA DAIKANYAMA

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2018年冬に京都の妙心寺で描かれた、フランス人チョークアーティスト、フィリップ・ボードゥロックの作品

本国ではエルメスとの長期的な取り組みも注目を集める、フランス人チョークアーティスト、フィリップ・ボードゥロック。「デザイナート・トーキョー 2020」のメインビジュアルとなった作品も手がけています。

植物図鑑のようにも見える繊細なタッチで描きだされる大きな世界観を、私たちになじみのある画材・チョークでひとりの生身の人間から紡ぎ出されていくことに驚きを感じませんか?

2018年の冬には、日本最大の禅寺・臨済宗 大本山 妙心寺(京都府京都市右京区)にて開催された、「Philippe Baudelocque × PLETHORA Magazine Exhibition」が大きな反響を呼びました。

今回の会場は、国際的に活躍するデザイン集団nendo(ネンド)設計で話題の「KASHIYAMA DAIKANYAMA」です。デザイナーがつくり出した空間に、アーティストはどのような絵を描き出すのでしょうか?

クリエイティビティとは人の心の中に広がっているものだとしたら、それを全身で味わってみたい、そういう体験を久しくしていないという方も多いかもしれません。現場でしか味わえない感覚、そのものがとても貴重な体験になるはずです。

【イベント詳細】

  • 会場/KASHIYAMA DAIKANYAMA(樫山 代官山)
  • 会期/2020年10月27日(火)~11月3日(火・祝)
  • 開館時間/11:00~20:00(最終入場19:30)
  • 休館日/月曜
  • 住所/東京都渋谷区代官山町14-18 

 

■2:特別展2|日本画の技法を用いて現代アーティストとして活動している大竹寛子@サルヴァトーレ フェラガモ 銀座本店

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大竹寛子さんの作品 ※今回の展示作品とは異なります。

一見すると、花と蝶が描かれている可憐な絵のはずなのに、溶けているようなどこか破滅的な香りや、蝶の眩いばかりの鮮やかな輝きに儚さを感じさせる作風。実物を見てみたいと思いませんか?

作者は、日本画の伝統的な技法を基に、岩絵具や箔を用いて新たな表現を展開し、国内外で活躍中の現代日本画家・大竹寛子さん。蝶が幼虫から蛹になるときに一度すべて液体になり、そこから新たな形を形成するという完全変態(メタモルフォーゼ)という彼らの生態について知ったことが蝶を描くきっかけになったのだとか。

本展示会では、「自然の摂理である循環」をテーマにした作品を発表。1927年にイタリアで創業したサルヴァトーレ フェラガモの世界観のなかで、その作品はどのように融合するのでしょうか?

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左/同時展示予定のフェラガモの秋コレクション。右/同ブランドの優れたクラフトマンシップや豊かな自然への情熱にインパイアされた作品を発表予定の大竹寛子氏。

【イベント詳細】

  • 会場/サルヴァトーレ フェラガモ銀座本店
  • 会期/ 2020年10月23日(金)~ 11月3日(火・祝)
  • 開館時間/12:00~20:00
  • 住所/東京都中央区銀座7-8-2 

 

■3:大学発。トップシェフ&パティシエと未来のデザイナーが食べものを変身させる「メタモルフード展」@渋谷パルコ1階

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鍋から注がれた液体によって花が開くように変身する試作の様子 ※当日発表する内容とは異なります。

東京造形大学のインダストリアルデザイン専攻領域の学生を中心とした7名と、ワークショップを通じデザイン先行で食べ物を「変身」させる授業を行っているプロダクトデザイナー、酒井俊彦氏のゼミが主体となり、「見える化プロジェクト」の一環として開催する「メタモルフード展」。

ミシュラン一つ星を獲得したフレンチレストランOde(オード)」の生井祐介オーナーシェフ、新進気鋭の日本人トップパティシエINFINI(アンフィニ)」金井史章オーナーシェフオランダの3Dフードプリンターメーカー「byFlow」の協力のもと、デザインを具現化し、新しい食の形を提案。

日本を代表するトップシェフ、シェフパティシエとともに、未来のデザイナーはどのような「食」をつくり出すのか。見て、食べて、感じるここでしかできない体験を楽しんで!

【イベント詳細】

  • 会場/渋谷パルコ 1階カミングスーン
  • 会期/2020年10月23日(金)~ 10月28日(水)
  • 開館時間/11:00~21:00(最終日は18:00まで)
  • 住所/東京都渋谷区宇田川15-1

 

■4:自粛中の手仕事をポジティブなアート作品に昇華する「ニットオールトゥギャザー」@KASHIYAMA DAIKANYAMA

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展示会や作品の売上は全額「新型コロナウィルス感染症拡大防止活動基金」に寄付。

新型コロナウィルス感染症予防のために家にいる時間が増えて、お料理や手仕事をされる方も増えたのではないでしょうか?

ニットブランド Motohiro Tanjiの丹治基浩氏と、フォトグラファーYuji Watanabeによる共同プロジェクト「knit all together (ニットオールトゥギャザー)」は、そういった状況を少しでもポジティブに過ごすことができないかと思い立ち上げたプロジェクトです。

日本中の編み物をしている方達がご家庭で編んだ編み物を募集して、1~2か月程度をかけて、ひとつの巨大なニット作品をつくります。

【イベント詳細】

  • 会場/KASHIYAMA DAIKANYAMA(樫山 代官山)
  • 会期/2020年10月27日(火)~11月3日(火・祝)
  • 開館時間/11:00~20:00(最終入場19:30)
  • 休館日/月曜
  • 住所/東京都渋谷区代官山町14-18 

 

■5:色の魔術師と呼ばれるミラノのファニチャーブランド「パオラ・レンティ」のポップアップカフェ@コートヤードHIROO

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パオラ・レンティの世界観で午後のひと時を過ごせる「POP-UP Paola Lenti Cafe」

グラフィックデザイナーのパオラ・レンティが、自身の名前をブランド名にした素材開発から取り組むミラノのファニチャーブランド「Paola Lenti(パオラ・レンティ)」。独創的な美しさと圧倒的なシーンは、毎年ミラノで行われるミラノサローネ 国際家具見本でも話題です。

唯一無二の居心地をつくり出す家具やファブリックは、自然の美しい色味をアウトドア用に独自に研究・開発したロープを編んで仕上げたもの。これらのアイテムを緑豊かな中庭に配した“POP-UP Paola Lenti Cafe”が期間限定でオープン! 「デザイナート・トーキョー 2020」会期中はもちろん、来年3月末まで継続予定です。

設置しているプロダクトはすべて購入可能とのこと。ラグジュアリーなアウトドア家具をお探しの方にもおすすめです。また、会場のコートヤードHIROOでは、アートコレクター・青井茂氏のプライベートコレクションを一般公開する「SHIGERU AOI ART COLLECTION展」も開催しています。

【イベント詳細】

  • 会場/コートヤードHIROO
  • 会期/会期中~2021年3月31日予定 ※変更の可能性あり
  • 営業時間/12:00~20:00(水曜、土曜日は19:00まで)
  • 定休日/日曜
  • 住所/東京都港区西麻布4-21-2

 

■6:インテリア界のスター「ストゥディオ・ペペ」の日本初展示会@ジャスマック青山

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ストゥディオ・ペペによる「Desiderio/デジデリオ」(英語ではDesire)と称したビデオインスタレーションが日本初開催。

2006年ミラノでデザイン事務所結成以来、カッシーナ、B&Bイタリア、カルテル、フリッツ・ハンセン等さまざまな一流ブランドとのコラボレーションで人気の「STUDIO PEPE(ストゥディオ・ペペ)」

ストゥディオ・ペペのデザイン作品をポエティックに紹介しながら、架空の建築をインスタレーションします。ブランドをまたいだデザイナー切り口の展示は日本ではなかなかみられない取り組みです。

会場は、イタリアの建築デザイナー・アルドロッシ氏が設計したジャスマック青山

別世界のような空間に、どのような「ストゥディオ・ペペ」の世界観が繰り広げられるのか、インテリア好きにはたまらない展示になります。

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写真左から/インテリアデザイナーのアリアンナ・レッリ・マーニとインテリアスタイリストのキアラ・ディ・ピント

【イベント詳細】

  • 会場/ジャスマック青山
  • 会期/2020年10月23日(金)~11月3日(火・祝)
  • 開館時間/10:00~19:00
  • 住所/東京都港区南青山4-11-1

 

■7:「NEW HOME OFFICE EXHIBITION_働き方の新境地」@ワールド北青山ビル

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出展ブランドは、左/「Muuto」、右/「Steelcase/WSI」のほか、話題のインテリアブランドが多数集結。

さまざまな分野で大きな影響を及ぼした新型コロナ。「ニューノーマル時代」を迎えて仕事の環境やあり方に対する心境、意識の変化に寄り添うこれからのホームオフィスの新たなスタイルを再定義する企画です。

会場構成を手がけたのは、建築家の神谷修平氏。建築・デザインからクリエイティブディレクションまでを通じて、独自の世界観を磨き続ける注目の建築家です。

【イベント詳細】

  • 会場/ワールド北青山ビル
  • 会期/2020年10月23日(金)~11月3日(火・祝)
  • 開館時間/10:00~18:00
  • 住所/東京都港区北青山3-5-10

 

今年はここに注目を!「デザイナート・トーキョー 2020」3つの楽しみ方

■1:インフォメーションセンターやオンラインでガイドブックや地図を入手、街歩きしながら鑑賞を楽しむ

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デジタルガイドブックには効率のいい廻り方も掲載。

まずは、インフォメーションセンターや会場で、ガイドブックと地図をもらうことから始めるとスムーズです。

事前にデジタルガイドブックを発行しているので、パソコンやスマートフォン、タブレット端末などのさまざまなデバイスで読むこともできます。

■2:オンラインで体験・視聴して、多種分野をまたいだデザイン思考に触れる

「デザイナート・トーキョー 2020」は、次にご紹介する「3Dウォークスルービュー」やYouTubeなど、オンラインで作品やアーティストに触れることができるデザイン&アートフェスティバルとして、作品と観客の距離を縮め、さまざまな交流を生み出す可能性を多岐にわたって試みています。

●高画質の展示風景を見られる、3Dウォークスルービュー

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空間内部を360°見渡すことができるクラウドシステムを、「ARCHI HATCH」の徳永雄太氏のディレクションにより導入。

現地に行かずとも展示の様子を3Dで見ることができ、オンラインで作品説明を読んだり、購入したりすることも可能です(一部コンテンツ対象)。最初は少し手間取りましたが、操作に慣れると結構楽しめます。

期間限定でなくなってしまう良質なコンテンツがアーカイブできることや、事前にチェックしてから出かけるかどうか見極められるのは、これからの時代に適しているように感じました。

インテリアブランドやグッチのプレゼンテーションでも使われていたウォークスルービューによるプレゼンテーションは、今後需要が増す技術になるのかもしれませんね。

●公式YouTubeチャンネルで、開催前に出展者のプレゼンテーションを見て学べる

作品や会場について自由にプレゼンテーションできる動画を公式YouTubeで公開。出展者の声を聞くことで作品の期待が高まり、実際に見たときの満足度も変わってきます。

【公式YouTubeチャンネルはこちらから】

●業界トップのクリエイターや有識者によるオンラインカンファレンスで、思考を深掘り

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今、議論すべき4つのテーマに対して、クリエイティブで切り拓く未来への議論を行うカンファレンス。豪華な顔ぶれにも注目!

世界中がコロナの影響でファッションショーやアートイベント、音楽ライブなどあらゆる催し物が中止となった2020年。経済を優先させてきた消費社会は大打撃を受け、生活様式や価値観の転換を迫られています。

アカデミーヒルズ、アンスティチュ・フランセと協働して、「Creative for the future(クリエイティブ・フォー・ザ・フューチャー)──クリエイティブで切り拓く未来への架け橋」と題し、芸術、デザイン、建築、テクノロジーといった、さまざまなジャンルの第一線で、世界中で活躍する登壇者が集結。

モデレーターには、伝統工芸分野のプロデュースや「ててて見本市」の主催でも知られるプランニングディレクターの永田宙郷氏が起用されています。

【詳しくはこちらから】

■3:オンラインで購入して、生活に取り入れて楽しむ

公式サイトから展示作品の購入ができるようになり、見るだけでなく毎日の生活に取り入れて楽しむこともできるようになります。

東京というギャラリーで、お気に入りのアーティストやデザイナーと出会い、手に入れる喜びをぜひ楽しんでください! 買うつもりで目にすると、また違ったものが見えてくるから不思議です。


いかがでしたか?

デザイナートは、ラグジュアリーブランドに建築家、人気デザイナーや若手クリエイターに大学も参加するクリエイティビティを切り口にしたイベントです。このような状況下で開催を英断されたことは、これからの未来に対して、本当に大切なものとは何なのか私たちに改めて考えるきっかけを与えてくれるかもしれません。

難しいことはさておき、美しいもの、まだ見たことのないもの、知らない味や考えに出合える可能性があるってワクワクしますよね!

秋の東京の街を歩きながら、世界中から集まった最先端のデザインやアートを全身で味わってみてください。

「DESIGNART TOKYO 2020」

  • 会期/2020年10月23日(金)~11月3日(火・祝)
    ※会期、休館日、開始時間は会場によって異なる。一部入場料が必要な場合あり。
  • 会場エリア/表参道・外苑前、明治神宮前・原宿、渋谷、代官山、六本木、新宿、銀座

問い合わせ先

  • インフォメーションセンター 
  • 会場/ワールド北青山ビル
  • 設置期間/2020年10月23日(金)~11月3日(火・祝)
  • 開館時間/10:00~18:00
  • 住所/東京都港区北青山3-5-10

 

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この記事の執筆者
イデーに5年間(1997年~2002年)所属し、定番家具の開発や「東京デザイナーズブロック2001」の実行委員長、ロンドン・ミラノ・NYで発表されたブランド「SPUTNIK」の立ち上げに関わる。 2012年より「Design life with kids interior workshop」主宰。モンテッソーリ教育の視点を取り入れた、自身デザインの、“時計の読めない子が読みたくなる”アナログ時計『fun pun clock(ふんぷんクロック)』が、グッドデザイン賞2017を受賞。現在は、フリーランスのデザイナー・インテリアエディターとして「豊かな暮らし」について、プロダクトやコーディネート、ライティングを通して情報発信をしている。
公式サイト:YOKODOBASHI.COM
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