秋から冬に季節が移り変わっていくなかで、木々の葉が色づいていく様子は、とても風情があるもの。そんな紅葉は、秋を表す季語として使われています。そこで当記事では、季語としての「紅葉」の使い方について、種類や意味、使う時期、「紅葉」を使った有名な俳句、時候の挨拶についてご紹介しましょう。また、紅葉の色づきを表現する言葉も合わせてチェックしてみました。

■紅葉は秋の季語

紅葉は秋の季語
紅葉は秋の季語

「紅葉」は、野山の木の葉が赤や黄色に色づいていく様子を表す言葉で、秋の季語になっています。俳句などに使われるほか、時候の挨拶にも用いられるため、手紙などに添えると風流で素敵な女性だと思われることでしょう。

■季語「紅葉」の使い方

そもそも「季語」とはどんなもので、どんな時期に使うのでしょうか。「紅葉」を季語として使うまえに、知っておきましょう。

季語とは

季語とは、俳句や連歌などで、特定の季節を表す言葉を指します。例えば、俳句は五・七・五という限られた文字数の中で、情景や心情を詠う必要があります。そこで、春夏秋冬を指す言葉(季語)を使うことで、季節が容易にわかるようになっています。俳句では、句の中に必ず季語をひとつ使う、というルールがあるのです。

どの季節の何月頃を表す?

「紅葉」を季語として使うとき、それは秋を表します。時期としては10月頃のことを指して使います。ただ、地域によっては、寒い場所なら9月下旬頃から紅葉が始まり、温かい場所なら11月頃まで紅葉を楽しめる場所もあります。それぞれの地域によって、「紅葉」の季語は11月頃まで使われることもあるでしょう。

いつ頃使う?

「紅葉」の季語を使う場合、「紅葉が見頃になったとき」に使います。ただ、紅葉が終わり始める時期の晩秋に使う場合もあります。詳しくは、次の段落でご説明していきます。

■紅葉を表現する季語の種類と意味、使う時期

「紅葉」に関連した季語は、たくさんあります。木々の葉が赤色や黄色に染まっていく様子はとても美しいため、それらを表現したさまざまな季語が生まれたのでしょう。ここでは、紅葉に関連する季語の意味と使う時期についてご紹介します。

紅葉(こうよう)

秋になったら木の葉が赤色や黄色に変わる様子を表します。紅葉した状態になっていくことを「もみいづる」「もみづる」と言い、これらも季語として使われます。

使う時期

10月から11月頃に使われるのが一般的。ただし、北海道や東北地方では9月から紅葉になることもあり、早い時期から使われる場合もあります。

初紅葉(はつもみじ)

山野でいち早く紅葉して、秋を訪れる様子を表す言葉として「初紅葉(はつもみじ)」があります。「初」という言葉がつくため、待っていた季節に出会えた喜びの気持ちを表現できます。

使う時期

「初紅葉」を使うのは、仲秋の頃。9月から10月初旬の頃にあたります。

薄紅葉(うすもみじ)

緑色だった木の葉が、少しずつ赤や黄色に変わっていきますが、まだ緑色の葉が残っている状態を「 薄紅葉(うすもみじ)」と言います。深く色づく前の段階を表します。

使う時期

「初紅葉」と同じ時期で、秋が始まったばかりの頃(9月から10月初旬頃)に使います。

黄葉(こうよう)

イチョウやナラ、クヌギなどは、紅葉せずに葉が黄色になりやがて落ちていきます。そのような葉の状態を「黄葉(こうよう)」と表現します。「イチョウ並木が黄葉する」のように使います。

使う時期

イチョウなどの葉が完全に黄色に変わっていくのは、晩秋の頃。秋の終わりに差し掛かった10月中旬から11月上旬頃の期間を指す季語として使われます。

照葉(てりは)・照紅葉(てりもみじ)

赤色や黄色に色づいた葉が、太陽の光に反射して光輝いている様子を「照葉(てりは)」「照紅葉(てりもみじ)」と言います。よく晴れた日の日中に見られる光景でしょう。

使う時期

「照葉」「照紅葉」は、すっかり木々が色づいた時期のため、10月中旬から11月上旬頃に使われる季語です。

紅葉かつ散る・色葉散る(いろはちる)

秋になり木々が色づいていくと、まだ赤色や黄色に染まっていない葉がある一方で、すでに紅葉した葉が散っていくこともあります。そんな2つの状態が同時に存在していることを表すのが、「紅葉かつ散る」「色葉散る(いろはちる)」です。

使う時期

これらの季語を使う時期は、晩秋の10月中旬から11月上旬頃でしょう。

黄落(こうらく)

黄色に色づいた葉や果実は、やがて地面に散っていきます。そのように色づいた木の葉が落ちることを「黄落(こうらく)」と言います。

使う時期

「黄落」の季語は、晩秋の10月中旬から11月上旬頃に使われます。

■紅葉を表現する季語を使った俳句

では、これまでに作られた俳句の中で、紅葉を季語として使ったものをご紹介しましょう。

「日の暮の 背中淋しき 紅葉哉」

俳人として有名な小林一茶がよんだ俳句。最後は「紅葉かな」と読みます。日が暮れたときに、紅く染まった紅葉が夜の闇に消えていく様子を表しており、どんなに美しいものでも終わりがくることを詠っています。

「古寺に 灯のともりたる 紅葉哉」

俳人・歌人の第一人者のひとり、正岡子規がよんだ俳句です。当時は夜になればあたりは真っ暗になり、紅葉は見れなかったでしょう。しかし明かりが灯されると紅葉が闇に浮かび上がり、その美しさに感動した様子を描写しています。

「真青なる 紅葉の端の 薄紅葉」

明治から昭和まで3つの時代にわたって、小説家や俳人として活躍した高浜虚子の歌にも、紅葉の季語が登場します。この俳句は「薄紅葉」を季語として使っており、葉の端から色づいていく様子を歌ったもの。紅葉する前の真っ青な葉と、色づき始めた葉を対比させた、趣ある一句です。

■季語「紅葉」を使った時候の挨拶と例文

季語「紅葉」を使った時候の挨拶
季語「紅葉」を使った時候の挨拶

「紅葉」は季語としてだけでなく、季節感あふれる時候の挨拶として使うこともできます。手紙の挨拶文としてこのような風情ある文章をプラスすると、マナーがあり、四季の移り変わりにも気を配る女性と受け取られることでしょう。

「紅葉の候」

「紅葉の候」とは、秋になり木々が色づく時期に使う挨拶です。ちょうど紅葉が始まった時期に使うのがふさわしいため、その年の紅葉の状況にあわせて使う時期を判断しましょう。

例文

ビジネス向けなら「紅葉の候 皆様にはますますご繁栄のこととお喜び申し上げます」、親しい相手への手紙なら「紅葉の候となり、少し肌寒くなってきましたが、みなさまはいかがお過ごしでしょうか」などと使います。

「紅葉のみぎり」「紅葉の折」

「~のみぎり」や「紅葉の折」は、「~の候」と同じく、「紅葉の季節となりました」という意味で使えます。紅葉が始まった10月頃に使うと良いでしょう。

例文

ビジネス向けは「紅葉の折、貴社の更なるご発展を心よりお祈り申し上げます」、親しい相手への挨拶なら「紅葉の折、空が高く雲がすっきりと見えるすがすがしい季節となりました」などと使います。

「紅葉の便り」

紅葉が始まり、木々が色づき始めることを「紅葉の便り」と表現します。紅葉が始まった10月頃に使うのが一般的でしょう。

例文

「紅葉の便りがあちこちから聞こえる季節となりました」「紅葉の便りに旅心を誘われます」などと、使います。

■紅葉の色づきを表現する言葉

最後に、色づき始めた紅葉の美しさを表現する言葉についてチェックしておきましょう。

「紅葉の帳(とばり)」

紅葉が一面に広がり、錦のようにあでやかな様子を表現する言葉。「帳(とばり)」とは、室内を隔てるために垂らす布のこと。紅葉の模様の帳があれば、さぞ美しいことでしょう。

「野山の錦」

山々の草木が美しく紅葉した様子を、錦に見立てて「野山の錦」と表現します。あでやかに色とりどりに見える華麗な様子を描写した言葉です。

「名木紅葉(なきのもみじ)」

「名木紅葉(なきのもみじ)」とは、紅葉の美しい木を指す言葉。紅葉する木々を総括して呼ぶときに使われます。

紅葉の季語を使って、印象をワンランクアップ

紅葉は、日本の四季の美しさを感じられるものです。時候の挨拶などに沿えると、それだけで情緒あふれる手紙になります。紅葉にまつわる季語は数多くありますので、それらを意識して使ってみてはいかがでしょうか。

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