お笑いコンビ「ジャルジャル」の福徳秀介さんが、初の小説『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』を上梓しました。「初めて自分のすべてをさらけ出した」という渾身の一冊です。

福徳さんは今年9月にご結婚を発表され、さらに「キングオブコント2020」では13回目の挑戦にしてついに優勝。いま波に乗る彼に、小説のことから私生活のことまであれこれ伺いました。前後編2回に分けてご紹介。

前編は、初の小説となる『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』の執筆秘話を話していただきましたが、後編では、執筆とお仕事のバランスや、ご自身が考える「書くこと」についてお伺いしました。

【後編】キャリアと小説|お笑いは趣味、小説はエンターテイメント

インタビュー_1,本_1
福徳秀介さん

——小説『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』が完成するまで4年。お仕事とのバランスはどのように取っていたのですか。

福徳:僕は小説を書き始める前から空き時間はいつも本を読んでいたんです。その本を読んでいた空き時間が、本を書く時間に変わっただけでした。仕事の合間に小説を読むことは息抜きだったんですが、書くことも同じです。個人的に書いていた最初の2年間は気分転換になる良い時間でした(笑)。

——小説を書くことで、例えばお笑いに磨きがかかったなど、キャリアへの影響はありましたか。

福徳:ある意味、脳味噌のつながりは一切なかったです。別物でした。(コントの)ネタは二人で作ります。でも、小説は一人で書く作業なので。できあがった小説を相方に渡す予定もありません。さすがに恥ずかしいので(笑)。

インタビュー_2,本_2
福徳秀介さん

——仕事を抱えながら、小説はどのようなタイミングで書いていたんですか。

福徳:朝と空き時間と夜。仕事以外はずーっと書く時間でした(笑)。朝起きてすぐ書く時もあるし、ご飯時に書く時もあるし、仕事終わりに喫茶店に行って書くこともある。運悪くというと変ですが、深夜2時まで開いている喫茶店を見つけてからはそこで書くことが多かったですね。僕みたいな人がいっぱいおるんです。

でも、そこはコーヒー1杯が高いんですよ。800円くらいする。でも、1時間に1杯は頼まなとあかんな、という自分なりのルールを守ってまして。休みの時などは10時間くらいおるときもあったので、めちゃくちゃ高いなぁと思いながら払ってました。良いお客さんでしたね(笑)。

ただ、書くことは「仕事の息抜き」という感覚は変わらず、なんやかんや楽しくやってました。

——福徳さんはお笑いと小説どちらがお好きだと思いましたか。

福徳:どちらが、と言われると困るんですが、1つ言えるのは、どちらも楽しいですね。でもどちらか選べと言われると、お笑いです。僕にとってお笑いは趣味です(ときっぱり)。お笑いは一生やっていきたい。僕は趣味を仕事にできて、しみじみラッキーだと思います。

インタビュー_3,本_3
福徳秀介さん

——福徳さんの人生において、小説を書くことはどんな意味を持つのでしょうか。

なんなんですかね。今回書いて思い出したことがあるんです。中学の時に連絡帳みたいなものがありました。最後に先生に一言書かなあかんところがあったんです、毎日。

僕は担任の先生にいっつもふざけまくったことを書いていたんですが、ある時、「実は福徳くんのだけが楽しみです」と書かれていたんですよ。それを読んで「よっしゃ」と(笑)。そこでちょっとだけ書く楽しさというのを覚えたんだと思います。そう思うと、僕にとって小説はエンターテイメントですかね。

——小説をこれからも書き続けたいですか。

福徳:機会があれば続けたいです。頭の中にネタはあるんですけど、またこれくらいの文字にできるかといえば、ゾッとしますね(笑)。ショートストーリーは無で書けても、このくらいの長編小説だとある程度自分の人生を賭けないと、僕は書かれへんと気づいてしまった。私小説とまではいかなくても、ある程度自分が経験した、生きていく上でのテーマ。そう考えると、僕が書けるテーマは今はあと数個しかないですね。

——ところで、最後に定番の質問なんですが、福徳さんが最近購入した「プレシャス」なものを教えてください。

福徳:「跳び箱」です。正確に言うと、跳び箱の形をした「引き出し」です。3段くらいの引き出しで、子どもが跳ぼうと思えば本当に跳べます。

もともと跳び箱の小物入れを持っていたんですよ。厳密にいうと裁縫セットで、跳び箱の白いところが針をさせるようになっている。その流れで引き出しになっている跳び箱を買いました。19,000円です。めちゃめちゃ迷いました。でも小物入れが5,000円なんですよ。桐製なのでめちゃくちゃ高い。それで計算したんです。この引き出しの大きさなら50,000円相当だなと。それで、買うことにしました(笑)。

中はまだスカスカで、ほぼインテリアです。家に跳び箱があったらオモロイだろなと思って。妻には何も言わずに買いました。めちゃくちゃかわいいです。椅子にもなるんですよ。

福徳秀介さん
お笑い芸人
(ふくとく しゅうすけ)1983年、兵庫県芦屋市出身。関西大学文学部卒。同じ高校のラグビー部だった後藤淳平と2003年にお笑いコンビ「ジャルジャル」を結成。「キングオブコント2020」優勝、13代目キングに。17年、文を担当した絵本「まくらのまーくん」が第14回タリーズピクチャーズアワード大賞を受賞。19年に絵本『なかよしっぱな』(小学館)を刊行。本作『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』で小説デビューを果たす。
『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』
(小学館/¥1,500+税)
銭湯掃除のバイトをしながら冴えない大学生活を送ってる大学2年生の僕、小西が恋愛を通して大きく成長していく姿を描いた恋愛&青春小説。さらに、生きること、死ぬことを考え直すきっかけになる一冊です。
本書の刊行を記念して、「小学館カルチャーライブ!」では、12月6日13時から福徳さんご本人によるライブ「デビュー小説の裏側、全部しゃべっちゃう奴」を行います。ライブ配信の受講者を絶賛受付中です。以下のアドレスからお申し込みください。https://sho-cul.com/courses/detail/235

購入はこちらから

この記事の執筆者
生命保険会社のOLから編集者を経て、1995年からフリーランスライターに。映画をはじめ、芸能記事や人物インタビューを中心に執筆活動を行う。ミーハー視点で俳優記事を執筆することも多い。最近いちばんの興味は健康&美容。自身を実験台に体にイイコト試験中。主な媒体に『AERA』『週刊朝日』『朝日新聞』など。著書に『バラバの妻として』『佐川萌え』ほか。 好きなもの:温泉、銭湯、ルッコラ、トマト、イチゴ、桃、シャンパン、日本酒、豆腐、京都、聖書、アロマオイル、マッサージ、睡眠、クラシックバレエ、夏目漱石『門』、花見、チーズケーキ、『ゴッドファーザー』、『ギルバート・グレイプ』、海、田園風景、手紙、万年筆、カード、ぽち袋、鍛えられた筋肉