だれにも記憶に残る年となった2020年。パンデミックは世界に、日本に、地球に、そして私たち女性にどんな影響を及ぼしたのでしょうか。最新雑誌『Precious』1月号では、トピックを10に絞り、安藤優子さんがその論点を解説しています。

本記事では、その特集の中で取り上げられている10の論点のうち、国際情勢に関する4つの論点をご紹介します。

安藤優子さん
キャスター
(あんどう ゆうこ)キャスターとして長く現場報道に携わる。『直撃LIVE グッディ!』ほか、各番組でメインキャスターを務めた。上智大学大学院グローバル・スタディ研究科グローバル社会学専攻で学び、博士号を取得している。

論点1:バイデン新大統領誕生でアメリカはどこへ向かうのか

Kevin C. Cox / staff
Kevin C. Cox / staff

「こんなにもめたアメリカ大統領選挙は記憶にありません。現職の大統領が開票作業の中断を求めるなんて、本当に驚きました。2000年の大統領選でも、フロリダ州の集計をめぐって民主党のゴア候補が最高裁に提訴し、再集計の結果、ブッシュ候補の勝利が確定するというゴタゴタがありましたが、今回のように『選挙そのものが無効』のような訴えではありませんでした。

世界に醜態をさらしているような選挙戦に、いささかアメリカ国民が気の毒にも思えたほどです。

©Chip Somodevilla / staff
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バイデン大統領下で、アメリカは激しく分断された祖国をどう建て直すのか、経済の回復はもちろん重要ですが、それ以上にアメリカという多人種で多様な国としての矜持を今いちど国内外に示すことができるかどうか。アメリカの力が問われています」

論点2:ブレグジットは吉か凶かイギリスが抱える運命とは

「拮抗した国民投票の末、イギリスがEUを正式離脱したのは1月31日。今は将来に向け、通商関係を調整する移行期間であり、自由貿易協定(FTA)などの交渉を続けているところです。

ただ、コロナ禍でイギリス経済が疲弊してしまった今、もしFTAが結べなくなるとどうなるか。農産物や食品を含め、EUを自由に移動していた物が回らなくなったときの打撃は、相当なものになるはずです。

©Jack Taylor / 特派員
©Jack Taylor / 特派員

奇しくもこのパンデミックで、イギリスの立場は厳しくなり、負の方向へとアクセルを踏んでしまったのではないでしょうか。ただ、EUにとってもイギリスは大きな市場。お互いにとってどこが落としどころになるのか。その賢明な判断が必要となるでしょう」

論点3:ブレグジットは吉か凶かイギリスが抱える運命とは

「パンデミック初期からその影響を大きく受け、ロックダウンを行うなど感染防止と経済活動のバランスに苦しんできたのが欧州です。医療がひっ迫するなか、イタリアやフランスほかの重症患者を受け入れ、ベッドを提供したのはドイツでした。これは国境のないEU間だからこそできたこと。約款も医療体制も均質にしていることが、見事に功を奏したのです。

©Getty Images News
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EU運営には予算拠出も必要で、これまでは各国じくじたる思いも抱えたことでしょう。でもこの緊急事態に『EUという存在価値』が明らかになりました。今、小国ほど加盟国であることに安心感を覚えているはずです。皮肉のようですが、このコロナ禍によりEUのあるべき姿が見えてきたのです」

論点4:忍び寄る中国の影…小国・台湾はどう振る舞う?

「6月『香港国家安全維持法』が成立し、一国二制度は事実上の崩壊を迎えました。『50年間、資本主義と言論の自由を尊重する』としていたのが、今や中国による締め付けが当たり前のように行われている。この事実に、だれよりも危機感を強めているのが台湾です。だから武漢で新型コロナウイルス感染者が出てすぐ、1月の時点でその地域との人の往来を禁じました。

©Getty Images News
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ここまで素早い判断を下したのは台湾だけ。さらにその後、総統・蔡英文とデジタル担当大臣・唐鳳の見事な連携により、コロナ対策に成功しているのはご存じのとおり。台湾の独立性が際立つのは、中国による香港弾圧の危機感の裏返し。今後、このアジアの小国から目が離せません」

PHOTO :
篠原宏明
EDIT&WRITING :
本庄真穂、喜多容子(Precious)