「IKIJI(イキジ)」は、江戸の昔から「ものづくりのまち」として発展してきた東京・墨田区で立ち上げられたブランド。「江戸の“粋”と“心意気”を受け継ぐ職人たちが、現代のライフスタイルに合ったデザインと遊び心で高品質の商品を作り出す」というコンセプトが、IKIJIというブランド名に織り込まれている。

ブランド立ち上げは2011年11月。翌2012年5月の東京スカイツリー開業を前に、墨田の街が国内外から注目を集めていた時期だった。世界に認められる墨田初のファクトリー・ブランドをつくろうと、大手アパレルブランド向けのOEM製造で鍛えた高度な技術をもつカットソー・ファクトリーメーカー「精巧」の声がけで、同じ思いをもつ製造メーカー4社が集結。「ファクトリー・ブランド」と呼ぶにふさわしい、ニット・カットソー、布帛、革小物といった製品のバリエーションを揃えてデビューを果たすことになったのだ。

海外にも熱烈な「IKIJI」ファンがいる。その理由は?

ジャケット¥54,000・シャツ¥9,800・カードケース¥5,000(精巧〈IKIJI〉)

スタート当初はポップアップを中心とした展開だったが、2014年に両国に旗艦店となる『IKIJI本店』をオープン。翌2015年1月には世界最大規模のメンズ・ファッション・ブランド展示会ピッティ・ウォモに初出店。その後は、パリにショールームを持つなど、世界に認められるファクトリー・ブランドとしての道を着実に歩んでいった。

そうした経緯もあって、フランスやイタリアにも熱烈な「IKIJI」ファンが生まれた。その多くは、確かな審美眼をもち、ラグジュアリー・ブランドのファッションを熟知した人たち。そんな彼らが「IKIJI」の虜になった理由は、製品作りに対する深いこだわりにある。 

たとえば素材。職人の厳しい目で選ばれるため、商品によっては糸の開発から独自に行うこともある。あるいは、身に着けたときの着心地やシルエットの美しさ。いずれも、各工程での職人の卓越した技術により生み出された結果だ。

そんな世界的に認められているIKIJIのラインナップの中から、おすすめの2つのモデルをコーディネートとともに紹介しよう。

今すぐにでも着たい、今シーズン注目の2モデルはこれ!

まずは、今シーズン(2020-2021秋冬)のニューモデルとして登場した「裏起毛プルオーバーパーカ」。定番的なプルオーバーかと思いきや、サンプル作成を10回以上重ねて完成したというこだわりのモデル。ホームページ上で付けられたキャッチフレーズは、「フードが崩れない「IKIJI」のパーカ」。

IKIJIこだわりのパーカーには、シャツの台衿のような役割を果たす芯地が入れられている。
IKIJIこだわりのパーカーには、シャツの台衿のような役割を果たす芯地が入れられている。

そう、とくにこだわったのがフードで、一般的なパーカはフードの重さで後ろに引っ張られて苦しい。「そのストレスがない商品が欲しい」という社内スタッフの声から開発が始まった。後ろに引っ張られないためには? と考え、たどり着いたのが、“肩に乗るフード”。フードの一部にシャツの台衿のような役割を果たす芯地を入れることで、引っ張りによるストレスが解消。ジャケットやコートの下に着ても、衿もとの“もたつき”がなくなり、美しい着こなしが可能に。しかも、衿元が立ち上がるので、防寒効果も高まっている。

 使用している裏起毛の素材は、綿とリヨセルをブレンドしたもの。肌触りはカシミアのような柔らかく滑らか。ちなみに、リヨセルはユーカリを原料とした再生繊維で、環境にも優しいエコ素材なのだ。

裏起毛プルオーバーパーカ¥26,000・パンツ¥45,000(精巧〈IKIJI〉)、スニーカー¥20,000(BALL BAND)
裏起毛プルオーバーパーカ¥26,000・パンツ¥45,000(精巧〈IKIJI〉)、スニーカー¥20,000(BALL BAND)

もう一着は、着用時の軽さを追求した「TPS縫製 ダブルジャケット」。使用しているジャージー素材は、世界に数台しか存在しない機械で編み上げられている。さらに、縫製に、凹凸感のないフラットな縫い目を可能にする「TPS」という特殊ミシンを使用しているため、カーディガン感覚で着られる軽やかさを実現。それでいて、ラフになり過ぎない端正なシルエットなのが魅力。研究に研究を重ねた、「IKIJI」らしさ満載のカットソー・ジャケットなのだ。

TPS縫製 ダブルジャケット¥54,000・ニット¥28,000・パンツ¥35,000・スカーフ¥3,800(精巧〈IKIJI〉)、靴¥39,000(BALL BAND)
TPS縫製 ダブルジャケット¥54,000・ニット¥28,000・パンツ¥35,000・スカーフ¥3,800(精巧〈IKIJI〉)、靴¥39,000(BALL BAND)

最後に、墨田から世界に向けて発信するファクトリーブランドとして生まれ、今年10周年を迎える「IKIJI」のロゴについて説明しておこう。

織りネームや布帛のシャツの胸元などにあしらわれているロゴは、一見、梅の花ように見える愛らしい文様。これは、江戸の浮世絵師・山東京伝が考案した「面の皮梅」をモチーフにしたもの。「粋」に通じる江戸っ子の遊び心と、江戸から続く墨田のものづくりの職人の心意気が見え隠れする。

「IKIJI」の服を、目にし、触れて、纏えば、こんな格好いいファクトリー・ブランドが日本にあったのだ、と実感するにちがいない。

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この記事の執筆者
音楽情報誌や新聞の記事・編集を手がけるプロダクションを経てフリーに。アウトドア雑誌、週刊誌、婦人雑誌、ライフスタイル誌などの記者・インタビュアー・ライター、単行本の編集サポートなどにたずさわる。近年ではレストラン取材やエンターテイメントの情報発信の記事なども担当し、ジャンルを問わないマルチなライターを実践する。
PHOTO :
島本一男(BAARL)
STYLIST :
河又雅俊