イタリアの老舗インテリアブランドとして名高い「B&B イタリア」。空間のセンスを高めるコンテンポラリーなデザインが多数そろうことから、日本でも多くのファンから愛されています。

156cmのインテリアエディターDが、おすすめのアイテムを実際に体験しながらレポートする本連載では初登場となるこのブランドを、前後編の2回に分けてご紹介。

【前編】となる本記事では、2020年に復刻したソファ「Camaleonda(カマレオンダ)」をピックアップ。その魅力をさまざまな角度からレポートします。

50年前のデザインが現代の暮らしにもたらす「自由とリラックス」

コンテンポラリーなアイテムの揃うインテリアハイブランド、B&B イタリアが2020年に復刻した「カマレオンダ」は、1970年~1979年まで同ブランドから販売されていました。

70年代は、多くの若者が自由を求めてこれまでの家族のあり方や暮らしを大きく変えた時代。木の内部構造をもつベーシックな三人がけのソファに替わって、曲線を多用し自由にレイアウトを組み変えられる「カマレオンダ」は発売当時人気を博すも販売終了。その後はヴィンテージ市場でコレクターが高値で取引するアートピースのようなアイテムでした。

家_1,家
「カマレオンダ」が販売されていた70年代のビジュアル

それぞれのアイテムが主張することなくシンプルに、インテリア全体の調和をよしとする最近のコーディネートの流れとは異なる文脈の「カマレオンダ」。明快な寸法体系やディテールの仕様は、主役級の存在感がありながらも住まう側の気分に寄り添う可変性を持っています。

家_2,家
2020年の復刻にあたり新たに開発された生地「Enia」で張られた「カマレオンダ」。サイズや形状は発売された当時と同じ。内部構造を刷新し、さらに快適にサスティナブルな仕様で生まれ変わりました。
家_3,家
同生地の白で張られると、一気に現代的な佇まいに。※5月下旬に青山ショールームに入荷予定

変化する暮らしに合わせて動かせる「レイアウトの自由」

「カメレオン」と海と砂漠の曲線を示す波「オンダ(onda)」の組み合わせから生まれた「カマレオンダ」というネーミングには、人は変化するものだということを前提とするデザイナーの意図があります。

コロナ禍で私たちの暮らしは目に見えて様変わりしましたが、それ以前から気がつかない小さな変化は常にあったはず。模様替えをすると動線が変化して暮らしが変わり、見える景色も変わってリフレッシュした経験を思い出してみてください。

同色を並べて寝転ぶこともできるレイアウトにしてのんびりした週末を過ごしたり、色違いに配置替えして友人と距離を保ちながら歓談したり、アクセサリーの「リ・スカッキ」(明日公開の【後編】で詳しくご紹介)を足して機能を持たせメリハリをつけるなど、過ごし方によって配置を自由に変えて「おうち時間」を積極的に楽しむことができます。

家_4,家
デイベッドをふたつ並べたようなレイアウト
家_5,家
アイテムを変え、レイアウトを変更した例。座っても寝転んでも固すぎず柔らかすぎない快適な座り心地
家_6,家
座面40cmは楽に両足が地面につくちょうどいい高さ。幅広のアームに腰かけるなど、いろいろな姿勢でくつろげるのも魅力です。写真左は、身長168cmの「B&B Italia」広報担当の女性
家_7,家
【ブランド】B&B イタリア【商品名】カマレオンダ【写真の仕様の価格】¥891.000【サイズ】幅960×奥行き960×高さ670 座面高400mm【材質】クッション部:密度の異なる成形ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンカバー、ナイロンスタッズ リング:真鍮 カラビナ:ステンレス コード:ナイロン コードホルダーキャップ:プラスチック素材 脚部:無垢材 脚部先端:プラスチック素材 表面張地:スタッズ付きファブリック
家_8,家
ふたつ前の写真のレイアウトにアイテムをひとつ追加したもの。温かみのある艶感は、マットな質感の革や硬くて冷たい印象のガラスやスチール等と合わせることで素材の個性が引き立ちます。

畳サイズのわかりやすさと、思い立ったら一人でも動かせる自由

復刻にあたり50年前から変化しなかったのは「96×96cm」を基本とした寸法単位。私たち日本人に親しみのある「半畳」とほぼ同じ寸法なのでレイアウトを考えやすいですよね。思い立ったら一人でも動かせるのも大きな魅力です。

家_9,家
滑らせるように角度だけ変えてもグッと雰囲気は変わります。
家_10,家
木脚のひとつには、ブランドロゴとデザイナーの名前を刻印。ヴェニスでボートが航行する目印に使われている「ブリッコレ」という木製の柱を回収し再利用しています。

オススメは「滑らせての移動」。「カマレオンダ」は床に球状の4つの木脚で接しているので、軽く滑らせることができます。床材につく跡や音が気になるようであれば、女性二人でも持ち上げられる重さ(約34kg)でした。模様替えのほどよい運動は、心を開放するエクササイズにもなります。

家_11,家
体重をかけてグッと潰しながら距離を縮めカラビナ(金具)をかけたり外したりすると、自由にアームや背もたれの位置を変えられます。

B&B イタリアだからできるコンテンポラリーな復刻のあり方

家_12,家
1972年に完成した本社ビルの設計は、後にパリのポンピドゥーセンターの設計を手がけたレンゾ・ピアノとリチャード・ロジャースによる設計。

B&B イタリアは、1966年に先見性のある起業家ピエロ・アンブロジオ・ブスネリにより創業されました。常に時代の変化を捉え、潜在下にある新しい快適な暮らしの方向性を示すアイテムを最高の品質で提供する老舗メーカーです。

さまざまなデザイナーのポテンシャルを引き出した個性豊かなコンテンポラリーなアイテムがそろっているのが最大の特徴。社名と同じブランド「B&B イタリア」のコレクションは、創造力とイノベーション、そしてその分野のノウハウの統合の結果もたらされるものです。

家_13,家
CR&Sと呼ばれる研究開発センターでは、企業アイデンティティから素材と技術革新に至るまで、たゆまぬ研究と実験を行なっています。

過去のデザインアーカイブから、現代に合ったアイテムをピックアップできる目利き力

「カマレオンダ」は1970年の開発当初からの考え方と寸法が現代の暮らしにそのまま当てはまるため、カラビナを使いやすいものに変更した程度で、外見は特に変えられていません。

デザインを手がけたマリオ・ベリーニは次のように語っています。

「『カマレオンダ』の基本的な特徴はその無限大なモジュール性にあります。つまり各エレメントが巨大なピクセルのように機能し、屋内の環境を決定づける幾何学的な性質を持っていることです」

家_14,家
「カマレオンダ」をデザインしたマリオ・ベリーニのスケッチ

見えないところにも技術革新を惜しまず「快適」を追求する姿勢

家_15,家
マリオ・ベリーニのデザイン・プロジェクトの多くの特徴である、弾力性と感触性に訴えるパッディングに改良。

外面を変えない選択をした一方で座り心地については、ノスタルジーという言葉を一切寄せ付けないほどサスティナブルな素材と構造に刷新し、オリジナルよりもさらに快適性を追求しました。

スプリング効果を生み出すよう隙間を設けた密度と硬さの異なるポリウレタンの層を、100%リサイクルPET素材でできたダクロン製の取り外し可能なカバーで保護。これらはサンドイッチのような構造で、リサイクルされた素材とリサイクルが可能な素材が簡単に分解できます。

表層部に現れる変化ではなく、時代が要求する潜在的なニーズに先回りして応えるという、素晴らしい復刻の事例ではないでしょうか。


いかがでしたか? 大きな変化の中にある私達にぴったりなアイテムですよね。B&Bイタリアのホームページでは、3Dで店内のディスプレイやアイテム情報を事前に確認することができます。ぜひ、ショールームでも実物をご覧になってみてください。

※現在展示中のものは2月中旬ごろに搬出予定。次回入荷は、白とネイビーが5月末に予定されています。

※掲載した商品は税込です。

問い合わせ先

  • B&B Italia Tokyo 
  • 営業時間/11:00~18:00
  • ※当面の間、来店は予約制。オンライン予約もしくは電話にて受け付けています。
  • 定休日/水曜日
  • TEL:03-3401-3837
  • 住所/東京都港区北青山2-5-8 青山OM-SQUARE 1,3F

 

この記事の執筆者
イデーに5年間(1997年~2002年)所属し、定番家具の開発や「東京デザイナーズブロック2001」の実行委員長、ロンドン・ミラノ・NYで発表されたブランド「SPUTNIK」の立ち上げに関わる。 2012年より「Design life with kids interior workshop」主宰。モンテッソーリ教育の視点を取り入れた、自身デザインの、“時計の読めない子が読みたくなる”アナログ時計『fun pun clock(ふんぷんクロック)』が、グッドデザイン賞2017を受賞。現在は、フリーランスのデザイナー・インテリアエディターとして「豊かな暮らし」について、プロダクトやコーディネート、ライティングを通して情報発信をしている。
公式サイト:YOKODOBASHI.COM