素材の味を丸ごと味わう大胆さとフランス料理や和食のような繊細さと。独自に進化するニッポンの中華は世界の美食家からも注目の的。

雑誌『Precious』3月号では特集「2021、行くべきは『アップスケール中華』」を展開。ダイナミックかつラグジュアリーに昇華する話題の中華の名店を取材しました。

本記事では、フード&ライフスタイルジャーナリストの秋山 都さんが「茶禅華」をご紹介します。

掲載の情報は1月7日時点のものです。営業日や営業時間に変更の可能性があるため、お出かけの際は最新情報をご確認ください。

秋山 都さん
フード&ライフスタイルジャーナリスト
(あきやま みやこ)ファッション誌や富裕層向け雑誌、グルメ雑誌の編集長を歴任後、食・酒・旅・ペットなどを中心に執筆中。自身が住まう谷中・根津・千駄木の情報発信メディア「rojiroji」をパートナーとともに主宰。

東京チャイニーズは、今やグランメゾンに

「私が『ヌーヴェル・シノワ』という新潮流に触れたのは1992年、22歳のとき。それまで中華のご馳走といえばホテルオークラ『桃花林』や赤坂『維新號』で大皿から取り分けるスタイル。ところが初めて訪れた青山『オー・セ・ボヌール』(現在は閉店)では、シャンパーニュで乾杯、料理はひとりずつサーブされ、まるでフレンチレストランのよう。洗練された雰囲気と料理に驚いたのでした。

その後、日本の中華は世界のどことも違う進化を遂げました。味精(化学調味料)を使わず素材の味を大切にする料理や、西洋の食材でイノベーティブに仕上げるスターシェフも現れ、第二世代・第三世代と呼ばれる若手も登場するさまは、まさに百花繚乱。ここ数年は『FURUTA』『やまの辺』『エンジン』『サエキ飯店』などカウンターメインの空間で食す『割烹チャイニーズ』が人気に。

そこに『ミシュランガイド東京2021』で『茶禅華』が日本の中華料理として初めて三つ星をとるという快挙が! さらに新一つ星として『慈華』『Series』『ShinoiS』がラインナップされたのはまさに躍進の証。東京チャイニーズは今、グランメゾンになったのだ—そんな隔世の感を覚えています」(秋山さん)

「茶禅華(さぜんか)」

「茶禅華」のティーカウンター。中国、台湾、日本のお茶がそろう。
「茶禅華」のティーカウンター。中国、台湾、日本のお茶がそろう。
「茶禅華」のコースより「雲白肉片」。代表的四川料理。一般的にはキュウリを使うが、こちらはナスで。極薄スライスの豚の三枚肉とナスを大皿で蒸し上げ、甘辛い甜醤油ソースをかけて、てっちりのように数枚まとめて大胆にいただく。繊細な見た目とは裏腹にご飯が欲しくなる力強い逸品。
「茶禅華」のコースより「雲白肉片」。代表的四川料理。一般的にはキュウリを使うが、こちらはナスで。極薄スライスの豚の三枚肉とナスを大皿で蒸し上げ、甘辛い甜醤油ソースをかけて、てっちりのように数枚まとめて大胆にいただく。繊細な見た目とは裏腹にご飯が欲しくなる力強い逸品。

日本の食材や精神と中国料理の技術「和魂漢才」なひと皿に酔いしれる

東京・南麻布、有栖川宮記念公園にほど近い閑静な住宅街。かつて大使館公邸として使われていた瀟洒な一軒家に足を踏み入れると、中国茶器のディスプレイとやわらかな光がゲストを迎えます。

2017年のオープン以来、訪れた人を魅了し続け、3年連続でミシュラン二つ星を獲得、2021年は中華というジャンルで日本初の三つ星を獲得した、今、最も行きたい中華の名店「茶禅華」。

「お料理の質、シェフの哲学、プレゼンテーション、価格。すべてにおいて東京チャイニーズの最高峰といえます。コースメニューを食べ終えるまでの約2時間半、束の間、桃源郷で遊んだような心地になり、毎回ボーッとしながら帰途につきます」と秋山さん。

シェフの川田智也氏は、「麻布長江」「日本料理 龍吟」と、四川料理と和食の名店で研鑽を積み、日本料理の清らかさと、中国料理の力強さが調和する「和魂漢才」の精神をひと皿にのせる、気鋭の料理人。

前菜からデザートまで季節によって異なる14、15皿のコースは、静かに、優しく、ときにドラマティックに、ひとつの音楽を奏でるかのように提供されます。

「青山緑水」。清らかなスープに極細の素麺、玉露のオイルが数滴。まるで一服のお茶をいただくような清涼感で胃がすっと開く。コースの最初に供されるにふさわしい一品。
「青山緑水」。清らかなスープに極細の素麺、玉露のオイルが数滴。まるで一服のお茶をいただくような清涼感で胃がすっと開く。コースの最初に供されるにふさわしい一品。
「蟹黄春捲」。この日は上海蟹とフカヒレの餡。特筆すべきは、あえてふんわりエアリーに巻いた皮! サクッとやわらかな食感とともに、大葉がほんのり香る仕掛け。
「蟹黄春捲」。この日は上海蟹とフカヒレの餡。特筆すべきは、あえてふんわりエアリーに巻いた皮! サクッとやわらかな食感とともに、大葉がほんのり香る仕掛け。
「翠玉白菜」。広東白菜を芯だけ180度でサッと揚げ、葉は茹でて、腐乳と絡めて炒める、シンプルかつ繊細な料理。白菜の甘みとシャキシャキ食感、香ばしさがたまらない。 ひと皿ごとにソムリエがペアリング。右から清香鉄観音茶、オリジナルのスパイスティー、東方美人のスパークリング仕立て、太平猴魁、阿波番茶。毎朝手づくりしている。
「翠玉白菜」。広東白菜を芯だけ180度でサッと揚げ、葉は茹でて、腐乳と絡めて炒める、シンプルかつ繊細な料理。白菜の甘みとシャキシャキ食感、香ばしさがたまらない。

「ぜひ一緒に楽しんでほしいのが、川田シェフのこだわりが実感できるティーペアリング。前菜から主菜に向けて徐々に強い味になっていくコースの流れに合わせて、中国茶も軽やかな白茶から、発酵度の高い紅茶や黒茶など、多彩なバリエーションに驚きます。

全部お茶で飽きないの? と思われるかもしれませんが、炭酸を注入してシャンパン風にしたり、スパイスとブレンドしてサイフォンで淹れたりと、味わいだけでなく視覚的にも緩急をつけるテクニックはさすが。

とはいえ、やっぱりお酒も楽しみたい…という方にはアルコールとお茶を半々にしたペアリングをぜひ。ともかく、まさに昇華された東京チャイニーズを実感できる、記憶に残る名店といえます」(秋山さん)

ひと皿ごとにソムリエがペアリング。右から清香鉄観音茶、オリジナルのスパイスティー、東方美人のスパークリング仕立て、太平猴魁、阿波番茶。毎朝手づくりしている。
ひと皿ごとにソムリエがペアリング。右から清香鉄観音茶、オリジナルのスパイスティー、東方美人のスパークリング仕立て、太平猴魁、阿波番茶。毎朝手づくりしている。

問い合わせ先

 

PHOTO :
篠原宏明、長谷川 潤、 川上輝明(bean)
EDIT&WRITING :
田中美保、 佐藤友貴絵(Precious)