関西を拠点に、国内外で活躍する女性たちの生き方を綴る連載「~京都、大阪、神戸~ 彼女たちの三都物語」。京都・祇園でギャラリー「昂-KYOTO-」を営む永松仁美さんにお話をうかがっています。第3回では、店の接客で大事されていること、お客様に伝えたいことについて。

モノを知る、人を知る、古典を知ること

古伊万里にアンティークレースのコースターを組み合わせるなど、国や時代を超えたミックスコーディネートは永松さんのお得意

「今の時代、ネットでほとんどのものが買えるでしょ。西洋アンティークだってネットでたくさん出回っているし、プロじゃなくても売買できたり、値段だって比較できたり。私がいる意味ってなんなんだろう?って思うこともありましたが、アンティークがこの店にまでやってきた歴史、ストーリーを生きた言葉で『知識』として伝えることが大切だと思っています。もちろん、ネットでもたくさんの情報を手に入れることができますが、実際、自分が足を運んで見てきたものや先輩方に教えてもらった知識はネットでは絶対知り得ないこと。そして、いかにいろんなジャンルのスペシャリストを知っているか。モノを知る、人を知ることが今の時代、重要だと思います。

また、歴史や古典について知識を深めておくこともアンティークを扱う上では大切だと思っています。例えば、1900年代、それまで島国だった日本からさまざまな文化が海外に渡り、ヨーロッパでもジャポニスムが大ブームになって、その影響を受けたヨーロッパの文化がまたシルクロードを経由し、日本に戻ってきたり。ヨーロッパへは年に2回、買い付けに行っていますが、ヨーロッパのアンティークに日本を見たり、歴史を知っていると点と点が繋がり、物の見方も変わってきます」

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人と人とのつながりを大切にした、京都ならではの商い

ぽち袋や絵はがき、ペンは必ず持ち歩いているという永松さん。ぽち袋はタクシーの運転手さんにお心づけを渡す際に使ったり、絵はがきは出先で購入した贈り物に一筆添えたい時に利用するそう

「雑誌に取り上げられている記事を見て来てくださる方もいらっしゃったり、京都以外のお客さまも多いです。京都に来るたびに立ち寄ってくださったりすると、うれしいです。打ち合わせや買い付けなどで以前より店にいる時間は少なくなりましたが、自分がいないときでも、お客様がいつ来てくださって、何を購入されたかは把握するようにしています。覚えていることが、お客さまに対するいちばんの敬意だなと思うんです。旅行で京都にいらっしゃったお客さまのコンシェルジュであることも、大切に思います。例えば、お客様の要望に合わせて知り合いの店を紹介したり。京都は小さい街なので、商売人や職人など、街のみんなで支えあって暮らしているんだと思うんです。それが保守的と思われることもありますが、実際、そのお客さまが知り合いの店に行かれたときに、ご紹介させていただいたことで話が弾んだり、旅行で来た方と京都の街や人をつなげられたらいいな…と思っています」。

モノを売るだけではない、お客様に伝えたいこと

 

「染織家の吉岡幸雄先生(※)から『古典や歴史的背景を知ることで、点と点がつながってもっとおもしろいことができるはず。そしてそれをあなたが次世代に伝えていかないと。だから勉強しなさいよ』ってよく言われるんです。私自身も古典を知らないと現代を語れないと思っていますし、アンティークや現代作家が好きな方も歴史を知っているほうが、絶対に物に対する想いがより深まると思いますよ」

第4回では、店を始めて9年、今の自分とこれからの自分について話をうかがいます。

PROFILE
永松仁美(ながまつ ひとみ)さん
1972年、京都・古門前の骨董店の長女として生まれる。ヨーロッパのアンティークと現代作家の器を取り扱う「昂-KYOTO-」を営むほか、店舗のコーディネートや百貨店でのイベント開催、エッセイ本も出版している。
(※1)染織家の吉岡幸雄先生:染織史家・染色家。染司よしおか五代目当主。美術図書出版「紫紅社」代表。古代の染色技術、薬師寺、東大寺などの文化財の復元、執筆業、講演などの活動を行う
この記事の執筆者
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PHOTO :
香西ジュン
WRITING :
天野準子