人生を重ねた大人だからこそ見えてくる、豊かな暮らしとは?をテーマに、雑誌『Precious』編集部が総力取材する連載「IE Precious」。

今回は、クリエイティブディレクター・「エイタブリッシュ」代表取締役、川村 明子さんのご自宅を紹介します。「何を大切にしたいか、どうありたいのかを考えたとき、今の私は、家族や友人、仕事仲間たちと時間や空間を共有し、ビジョンやアイディアを分かち合いたいんだと気づきました」と語る川村さん。

川村さんのご自宅は3階建て+屋上という構成で1階のリビング&ダイニングから、2階の寝室兼アトリエまで吹き抜けという開放感のある作り。自宅の2階を事務所にリフォームし、仕事、プライベート問わず、多くの友人が集う、サロンのようなお住まいになっています。

川村 明子さん
クリエイティブディレクター・「エイタブリッシュ」代表取締役
(かわむら あきこ)愛知県生まれ。N.Y.の「スクールオブビジュアルアーツ」グラフィックデザイン学部を卒業。ローズファミリーアワード受賞。帰国後、アートディレクターとして活躍。2000年ヴィーガンカフェ「カフェエイト」、2003年アヴェダ「ピュアカフェ」を経て2020年「パーラーエイタブリッシュ」、「エイタブリッシュ松屋銀座」をオープン。著書に絵本『ぼくアポロ』『わたしチャー』。特定非営利団体「ジャパンハート」のデザインほか「衣食住と医食充」をテーマに食から建築までさまざまなジャンルでブランディングを行っている。

「家は自分の"今" を映す鏡。自分がどうありたいか、を知る場所でもあるんです」

ブランドショップが軒を連ねる世界有数のファッションエリア。緑豊かでカフェや美術館も点在する東京屈指の人気街に位置するコーポラティブハウスで暮らすのは、クリエイティブディレクターの川村明子さん。広告やアートワーク、ブランディングを手掛ける一方で、ヴィーガンスタイルのパーラー「エイタブリッシュ」も経営しています。

「仕事柄もあってか、昔から好みはかなりはっきりしているほう。自分が本当は何が好きなのかを絶えず分析して、自分はどうなりたいのか? どうありたいのか? を追求、常にアップデートするよう心がけています。それこそが私のクリエイティブの源のような気がして。そういう意味で、家は"今"の自分を映す鏡のようなものではないでしょうか」

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愛犬・柴犬のアポロ君(9歳)がちょこんと座るソファは「ヴィトラ」のモジュラーソファ。
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親友であり仕事のパートナーでもある宅間頼子さんと。自宅の植物はすべて宅間さんが手掛けている。
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バッグやアクセサリーは「ウィルクハーン」のショーケースに。
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オフィスの一角にある棚には「パボーニ」のエスプレッソマシンや「アレッシィ」のレモン絞り器、「ツェーレン」のキッチンスケール、カラフルなアートブックが。
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「ネイビー、黒、白。ステンレスと木、大理石。テーマとなる色とマテリアルを決めれば、別の色が加わっても空間としての統一感がキープできます」と川村さん。
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リビングのカーテンを留めているのはなんと「イザベルマラン」のベルト!
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バスルームのタイル貼りは、川村さん自らの手で。
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屋上のテラスは、フラミンゴの置物がアクセントに。
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2度目の改装で台の高さなども変えたというキッチン。小さな花瓶は「HAY」。ケトルは「シャンタール」。ここにもキッチンスケールがあるのは、川村さんが「秤」コレクターゆえ。
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オフィスのデスク。ガラス天板のテーブルは「ノーマンフォスター」のノモステーブル。改装前はダイニングテーブルとして使用していたもの。
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トイレの壁紙はイギリスの「Farrow&Ball」のもの。「我が家には納戸や収納がなく、すべて剥き出し(笑)。でも、大切にしたいと思えるものしか置いていないため、無造作でも心地いい。若い頃に買ったものや今の私が買ったもの、古いものと新しいものが混在していますが、すべて"私"が選んだものだから仲よく同居しています」

「好きなものが詰まった空間だから、自分も、一緒に住む人も、家具たちも、みんな幸せ!」

テーブルや椅子はもちろん、アートやオブジェ、壁や床、キッチングッズや文房具に至るまで、どの部分もどの部屋も大好きすぎて、囲まれているとワクワクする、と川村さん。

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階段の踊り場に飾られているのは、川村さんのお父様が、おなかの中に川村さんを宿しているお母様を描いた絵。「父は定年後に描き始めたんですが、日展に入選するなど、素敵な絵をたくさん描いていて。特にこの絵は離れて住んでいてもいつも見守られているような…、ぬくぬくとした気分になる大好きな作品」。「ハーマンミラー」のDCMチェアと一緒に。
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キッチンの床もリビング同様ヘリンボーン。冷蔵庫は「GE」。
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まるでカフェのような屋上テラス。奥のスツールは「エメコ」。手前のテーブルとパラソル、チェアは「エミュ」。

「大切にしたいと思えるものしか置きません。"とりあえず"という選択がないんです。この家はものが溢れていますが(笑)、どれも本当に好きなもの、愛着のあるものばかり。好きなものが詰まった空間だから、自分も、一緒に住む人も、家具たちもみんな幸せだと思うんです」

2003年に完成した住まいは、当時、いわばコーポラティブハウスの"走り"。前例がないぶん、自由度がかなり高く、全部好きなようにつくることができたとか。

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1階のリビング&ダイニング。2匹の黒い犬の絵はお父様の作品。実家で飼っていたフラットコーテッドレトリバーの親子を描いたもので「優しくて強くて温かい。この絵にかなう作品は見つかりません」。華奢な一本脚が美しい「ノル」のサーリネンテーブルに、ハンス J. ウェグナーの名作椅子「カール・ハンセン」のチェアを合わせて。照明は「ルイスポールセン」のスノーボール、スポットライトは「モデュラー」。

「結婚を機に購入したんですが、住人は銀行マンや広告関係、アンティークの修復のプロなどバラバラ。個性豊かな面々と家をつくっていくのは面白い経験でした。今も6世帯中、4世帯は同じメンバーです」

川村さん邸は3階建て+屋上という構成で、1階から2階は吹き抜け、天井高はなんと4m50㎝!

「明るい光が差し込む大きな窓と開放感にはこだわりました。当時は30代。結婚したてというのもあって、仕事は家に持ち込まない主義でした。ミニマルなスタイルで、自宅に仕事部屋はなく、バスルームはガラス張り。1階の床は石仕様で、土足OKとしていて今思えば寒くて、暮らしにくい家でしたね」

40代で離婚後、イラストの仕事を開始。アトリエが必要になり、2階を寝室兼アトリエに大改装。同時にバスルームには扉を取り付け、1階の床はすべてヘリンボーンのフローリングに張り替えたそう。

「愛犬・アポロを迎え入れたのもこのころです。木の床があったかく、バスルームがガラス張りでなくなったこともあってか、多くの友人が泊まりにくるようになりました」

「大切な人たちと時間や空間を共有しビジョンやアイディアを分かち合いたい」

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レンガの壁に、N.Y.の学生時代、MoMAで出会い衝撃を受けたロイ・リキテンスタインの作品。最新の「ダイソン」のデスクライトに「ハーマンミラー」のアーロンチェアは、作業効率を上げるための必須アイテム。

50歳を機に働き方を見直し、2年前、2度目となる大改装を敢行。

「ふだんから頻繁に家具の配置を替えるタイプですが、巨大なベッドを自分で移動させるなど、引っ越し業者の方も驚くくらい(笑)、改装は大の得意。今回は、往復1時間通勤にかかっていたオフィスを閉め、自宅の2階の壁も取り払って事務所に。書類もスタッフも自宅に集まったことで、効率が上がり、睡眠時間もぐっと増えました」

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オフィスにも「秤」を発見!

オフィスのテーマは、1970年代のニューヨーク。普遍的なデザインが好きだという川村さんが20代の頃から買い集めたものたちが集結。レトロな「オリベッティ」のタイプライター(1)に、鮮やかなオレンジの「トッズ」のヘルメット(4)、ブルー×ステンレスのモダンな「USM」のキャビネット(2)、デスク上のスタイリッシュな文房具たち(3)。この部屋も、ネイビー、黒、白、木、ステンレスという川村邸のキーカラー&キーマテリアルの法則が。

「それともうひとつ。インテリアのポイントとしては、ダイナミック×ミニマル、クラシック×モダン、アナログ×テクニカル、システマチック×ナチュラルといったふうに、相反するものを組み合わせてみてください。空間に動きが出る一方で、意外と整うんです」

自宅で過ごす時間が増えたぶん、1階のキッチンもリフォーム。親友も引っ越してきたうえ、仕事、プライベート問わず、これまで以上に多くの友人が集い、サロンのような家に。

「何を大切にしたいか、どうありたいのかを考えたとき、今の私は、家族や友人、仕事仲間たちと時間や空間を共有し、ビジョンやアイディアを分かち合いたいんだと気づきました。これまで培ってきたデザインなどの経験を生かして、社会に貢献したい。これは、年齢や経験を重ね、より信頼できる仲間がいるからこそできること。大好きなものに囲まれて、オープンで、プライベートも仕事もシェアしながら、遊びの延長のように仕事ができるこの家は、まさに"今"の私を映す鏡。幸せです」

川村さんのHouse DATA

●間取り…2LDK
●家族構成…本人、親友、犬
●住んで何年?…18年

この記事の執筆者
TEXT :
Precious.jp編集部 
BY :
『Precious5月号』小学館、2021年
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PHOTO :
川上輝明(bean)
EDIT&WRITING :
田中美保、古里典子(Precious)