働き方、生き方…さまざまな価値観が揺らぐ今、ときに自分を、未来を見失いそうにもなりますが、大丈夫! 私たちには"本"があります。目利き揃いの読書家たちが"今"を見つめた珠玉のブックセレクトをお届けします。

雑誌『Precious』5月号では特集「知的欲求を満たすニュー・ノーマル時代の読書案内」を展開中。その特集のなかから、本記事ではライター・山脇 麻生さんが推薦した竹宮惠子さんの作品をご紹介します。

山脇 麻生さん
ライター、編集者、漫画プレゼンター
漫画編集者を経て、フリーに。『朝日新聞』『週刊SPA!』『週刊文春WOMAN』など各紙誌にコミック評および漫画関連記事を寄稿。

24年ぶりの続編が出版!漫画界を革新し続ける巨匠は今も熱い!

移り行く時代のなかでタブー視されてきたものを見つめ、「少女マンガで革命を起こす」と問題提起し、それを流麗かつ華のある絵で極上のエンターテインメント作品に仕立ててきた竹宮惠子。

手掛けた領域はSF、少年愛、クラシック音楽、歴史と多岐にわたり、『地球へ…』、『変奏曲』シリーズ、『天馬の血族』など、そのすべてにおいてヒット作を出している。

特に、愛について深く掘り下げたテーマでセンセーションを起こした『風と木の詩』は、「少女漫画の進化を20年早めた」と言われるほど。

彼女が通過した後に大きな道が生まれ、そこから新たな芽が顔を出していることは、’14年から京都精華大学学長を務め、’18年の任期満了後は日本マンガ学会会長、国際マンガ研究センター長に就任するなど、漫画制作以外の経歴からもうかがい知れる。

今回、24年ぶりに続編が刊行された新版『エルメスの道』では、齢70代にして初めてアシスタントを使わずにデジタル作画に挑戦したという。デビューから53年、有言実行の闘う漫画家は今なお進化を遂げており、その途方もない事実に圧倒されるばかりだ。

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上から/新版『エルメスの道』¥1,760 著=竹宮惠子(中央公論新社)、『少年の名はジルベール』¥770 著=竹宮惠子(小学館文庫)、『風と木の詩』1巻 ¥713(全10巻)著=竹宮惠子(白泉社文庫) 

■:「エルメス」の歩みと精神を網羅、現在に至るオデッセイ|新版『エルメスの道』

「日本の漫画を文化としてとらえた5代目ジャン=ルイ・デュマの依頼で、約160年の社史を描いた旧版に続き、新版は1995年から始まる。

5代目と建築家レンゾ・ピアノの美意識が詰まった銀座メゾンの誕生秘話、"エルメス"がルーツに立ち返るべく始めた馬術競技大会『ソー・エルメス』、創造力で素材に新たな命を吹き込むメチエ『プティ・アッシュ』など、その歩みと精神を網羅」

■:真摯な言葉で綴られたクリエイター必読のエッセイ!|『少年の名はジルベール』

「編集者や世間と戦いながら、創作に関する内省と葛藤を綴った自伝的エッセイ。徳島市に生まれ、高校生で漫画家デビュー、仲間と『少女マンガで革命を起こす』と語り合った日々。

『風と木の詩』創作秘話や、萩尾望都らと暮らした大泉サロンと同世代の才能への複雑な思い、京都精華大学学長として教え子に伝えたいことなどが真摯に綴られている」

■:青春の光と影、理想と現実をドラマティックに描いた極上ロマン|『風と木の詩』

「19世紀末、南仏のラコンブラード学院に転入したセルジュは、悪魔的美少年ジルベールと出会う。愛に飢え、複数の生徒と妖しい関係をもつジルベールに正しい道を教えようとするセルジュ。対照的なふたりは反発し、やがて惹かれ合うが…。

少年愛がタブー視されていた時代に、衝撃のベッドシーンから始まり、センセーションを巻き起こした作品」

※掲載した商品はすべて税込です。

PHOTO :
唐澤光也(RED POINT)
EDIT&WRITING :
剣持亜弥(HATSU)、喜多容子(Precious)
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